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本シリーズでは、特色ある大学のトップの方々に、大局的な視点から大学の現状や英語教育、今後の指針などについてインタビューさせていただいた内容をご紹介しています。

今回は、文部科学省のグローバル30に採用され、地域における人材育成から国際的に活躍できる人材育成を図る一環として、昨年よりTOEFLテストITPとCriterionの両方を導入した名古屋大学の登場です。

新英語教育やその効果について、名古屋大学 理事・副総長の山本一良先生にお話を伺いました。

山本一良先生

山本一良先生 プロフィール

1973年4月
名古屋大学助手(工学部)
1988年5月
名古屋大学助教授(工学部)
1995年4月
名古屋大学教授(工学部)
1997年4月
名古屋大学教授(大学院工学研究科)
2001年4月
名古屋大学核燃料管理施設長
2002年4月
名古屋大学総長補佐(教養教育担当)
2004年4月
名古屋大学エコトピア科学研究機構情報メディアセンター長
2005年4月
名古屋大学情報メディアセンター長
2006年4月
名古屋大学総長補佐(教育担当)
2009年4月
名古屋大学副総長(教育・情報担当)
2010年4月
名古屋大学理事・副総長(教育・情報担当)

名古屋大学における英語力の現状

名古屋大学では、英語教育の改革にともなって、去年からTOEFLテストITPとCriterion両方を、英語能力測定の手段として使い始めていただいています。まずは名古屋大学の現状について、お話を伺えますでしょうか。

名古屋大学の学生は、もともとこの中部地区、東海地区出身者が多く、地区内で就職もできてしまうため、あまり外に出て行こうとせず、国際的にも活躍しようという気持ちがわりと少ない、ちょっと内向きな学生が多いようです。最近ますますそんな傾向を感じ、危機感を持っています。また、理系の学生の場合、数学、物理、化学は良くできるけれど英語が弱いという傾向を、卒論や修論、その他ドクター論文を書いたり、国際会議に発表したりするときに感じていました。たとえば象徴的な例が、2008年にノーベル賞を受賞した益川敏英教授。益川先生が英語嫌いだということは世界的にも有名な話で、受賞の連絡も英語ではなく日本語できましたし、受賞講演も日本語でお話になったというくらい。益川先生はともかくとしても、名古屋大学に入ってくる学生はどちらかというと、語学が好きでないという傾向がもともとあります。だけど、これからはそれを改善しなければいけない、と皆感じていました。5、6年前にも、語学に関して改革をし、総単位数は変えずに単位の出し方を変えました。英語のコミュニケーションの授業でそれまでの1クラス40名から20名にして少人数化を図り、コミュニケーション能力をあげる工夫をしました。しかし、その方法では英語や語学を勉強する時間そのものが減ってしまい、英語力がつかない。ひょっとしたら入学当初が一番できるのではないか、それはまずいということで、また数年かけて、アカデミック・イングリッシュという対面授業とe-learningを組み合わせたやり方を作り、昨年から始めました。また、議論のなかで、英語が出来る学生と、まったく出来ない学生を一緒に教えるのは無理だという話があり、教える側と教えられる側の教育と学習の効果のために、TOEFLテストITPを使って習熟度別クラス編成をすることになったのです。また、一定より下のレベルの学生は、ひとコマ余分に授業を受けるという制度にしました。卒業単位には数えないけれども、合格しないと次のステップに進めないという枠組み。これは、大学から学生に対するとても強いメッセージで画期的だと思います。また、プロパーの先生方には全員、いわゆる下レベルの学生の教育に集中していただくようにしました。

新英語教育の結果と効果

導入後1年ですが、これまでと違った傾向や効果は現れていますでしょうか。

昨年分で見ると、サバイバルと呼んでいる一定レベル以下の学生が、予想より少なかったという結果が出ています。私が実際に学部で顔を合わせるようになる3、4年生の実力から見ると、サバイバルはもっと多いと予想していたのです。反対にショックを受けたのは、上位レベルの学生が少なかったこと。はっきりと点数でその結果が出てしまいました。その後、前期が終わったところで再度試験をすると、TOEFLテストITPで100点以上上がった学生もいました。スコアは、下のレベルの学生ほど上がり、上のほうも上がっています。真ん中の学生が安心してしまったのか思ったほど上がっていません。

ITPと合わせて導入いただいたCriterionの効果はいかがでしょうか。

面白いことに、Criterionの点数は、真ん中のレベルの学生が上がっています。英作文はe-learningに入っていませんので、完全にアカデミック・イングリッシュの、パラグラフリーディング、ライティングの授業によって文章が論理的に構成できるようになったことの表れだと理解しています。これはとても嬉しかったですね。

単にTOEFLテストITPのスコアだけでなく、Criterionも組み合わせることで、同時に英作文力の力も測定していただくことができます。複合的に見ることで、従来のテスト一本だけの時よりも、総合的に英語力がついているのかどうか、明確になったのではないでしょうか。

そうですね。ひとつのテストで判断するよりずっと良かったし、対面授業の効果がはっきりと出たと思っています。もちろん、この英語のカリキュラムはまだ1年ちょっとしか経っておらず、2年生までやらないとトータルの効果は分かりませんが、少なくとも1年目の部分は良かったと思っています。それから、各学部別で見ますと、コンスタントに勉強している学生が多い学部はクリアに上がり、そうでない学部は下がっています。それがはっきり出ました。今まで当たり前だと直感的に感じていたことが、数字的に裏づけられました。ですから出てきた結果は何も目新しいことではなく、当たり前ですけれど、コンスタントに勉強した学生の実力がついている、もしくは少なくとも落ちずに済んでおり、英作文力については上がっているということです。今まで基礎的な学力の中で、英語だけを取り出して強化するということは、正直に言ってあまり力を入れていませんでしたが、今回は、英語は絶対に必要だという大学の姿勢を明確に示したことに意味があったと思っています。

今年はこの改革が2年目に入り、1年生が2年生になって、更にどう伸ばしていくかという節目になるわけですね。

そうですね、1年目は初めてでもあるし、今まで勉強していないことを勉強するようになったため、上がり幅も大きく見えたわけですけれど、2年目以降はそれほどクリアに見えないのではないかと思っています。まだ途中ですし、上がる、ということを定着させることが目標です。その上で、上のレベルをどう伸ばしていくかを今考えています。具体的にはライティングについての新部門を教養教育院に作り、特に大学院生に重点をおいて作文力をつけさせる。そして学会、国際会議などのプレゼンテーション能力を高めるようにしていきます。それは理系も文系もです。
もともと私は21世紀COEプログラムのリーダーをしていたのですが、その時にやはり学生の英語力が足りないということで、とある外部企業にお願いして、大学院生の英語教育をしてもらったことがあります。しかし結局は半年やっても客観的に評価できる成果は上がらなかったんです。TOEFLテストITPではない他のテストでしたが結果は誤差の範囲内でした。かなりガックリしていたんですよ。度胸だけはつきましたけどね。しかし今回は、学部生で、半年でサバイバル・レベルがTOEFLテストITPで平均30数点上がりました。ですから、やれば出来るとわかり、以前の印象とは全く変わって嬉しかったですよ。大学院生は国際会議でしゃべれなくてはいけないし、ペーパーも英語で書かなければいけないし、切実度が相当高いはずなのに、そんな結果でしたから。つまり、自分でお金も出さずに、上から降ってくるおいしい話を受けようというのは駄目なんですね。自分で必要だと感じてお金を払って覚悟してやるのとは違いますね。以前はそういう切実度が少なかったかなと反省して、今回は次の段階に進むための条件になるようにしました。

そうですね。今回は単位をきちんと取らなければ次の段階にいけないんだとはっきりおっしゃっていますね。しかしTOEFLテストITPで何点を取る、というような設定はしていらっしゃいませんね。もちろん、TOEFLテストはアカデミックなテストで、スコアを取るということだけが目的のものではないですし、学校ごとに色々な使い方ができるテストですが。

TOEFLテストITPは自分の実力がどの辺りにあるかということを知るプレースメントです。これが例えば、何点取れば合格ということになると、対症療法のような勉強の仕方になってしまう気がします。また、名古屋大学は、一昨年からTOEFL iBTのテストセンターになりましたので、TOEFLテストITPも、TOEFL iBTも受けられるようにした、ということも重要だと思っています。

ライティング力をつける

ライティングについては、ライティング・センターを作って指導すると伺っています。ライティングの指導は、特に一番時間のかかることだと思いますがそのあたりのお考えをお聞かせください。

そうですね。特に理系ですと論文も英語で書きますし、ライティングが出来ないことには仕事になりません。もちろん、コミュニケーションも大事ですけれど、コミュニケーションというのは、変な言い方ですが、こちらに話すべき内容があって、相手が聞きたいと思っていれば、ある程度成立します。ですからまずは話す中身を身に付けることが、コミュニケーションの元だと思います。反対にライティングは、その中身を表す全てですから、ここはちゃんとしない限りアウトです。今はコミュニケーション重視で、ライティングとリーディングのレベルが下がっている印象を受けますが、もう1回ライティングとリーディングを復活させて、さらにプラスでコミュニケーションも出来るようにしないと、学会発表も出来ないし、注目を集めることも出来ません。そういった意味で、インターナショナルに活躍出来る人を育てたいと思っています。

リーディングでしたら自学自習でもある程度出来ますし、自分で補うこともできますけれど、ライティングだけはどうしても、誰かの添削が必要ですね。

そう、難しいですね。今年、TOEFLテストITPがかなりの高得点でもCriterionでは逆に低い点数になることがありました。普通の会話などは非常に流暢でも、理論だった文章を書くのとは違うんですね。恐らくそういった書く訓練をしたことがなかったのだと思います。この件で、Criterionを使うことによって、こういったことがちゃんと判断出来るのだと安心しました。結果としてTOEFLテストITPとともに、Criterionも導入したというのは非常に良かったと思っています。

実際に海外に行ってみること

先生も体験しておられますが、実際に海外に行ってみて、自分の英語力に気付くことは、かなり大きな意味がありますね。

それは大きいと思います。私はほとんど外国に行っていない人間ですが、核融合の分野の研究で選ばれて、アメリカの有名な核開発施設に3週間足らずいたのが一番長い外国経験です。核の研究所なので、実際に研究開発を行っている場所は警備が非常に厳重で、大事なところは、限定された範囲のみ1時間しか見学させてもらえませんでした。その時の私の英語力は、派遣者選抜の面接でお前の英語力はどうだと聞かれたときに、相手がインテリなら大丈夫だという答えをして面接官に大笑いされました。先ほどと同じ理由で、こちらにしゃべる中身があって、あちらが聞きたいと思えば通じますが、そうでなければ通じませんと言ったところ、自分の英語会話力の無さをようわかっとるなと言われました。それでも向こうに行っている間には、相当話したり聞いたりしていたのですが、帰国してから1年後にその研究所から研究者が来た時に、お前そんなに英語が下手だったのかと言われました。アメリカに居たときはもっと普通に話していただろうと。ここは日本だから、英語の頭じゃないぞと言い返しましたけれど。今は英語教育も変わり、結構海外に行っているのでうらやましいですね。

環境的には確かに機会は増えていますよね。ただ逆に、それが当たり前と思っていると、やはり結局は身につかないですね。体験するからこそ身に染みてくるということですよね。自分がこういう風に言うと、通じるんだと。書くのは別としても、話すのは度胸ですよね。

度胸度何点とかは出ないですけれどね(笑)。今回はTOEFLテストITPとCriterionによって統計的に出ましたので。嬉しかったです。

今後の方向性

これまでのお話で触れていただいていますが、もう少し長いスパンで見たときには、名古屋大学はどういう方向に向かっていかれるのでしょうか。

少なくとも数年は同じ形で実施して、底上げのところが何とか見えてきたので、今度は上をどう伸ばすか、そして全体をどう上げるか、ということを一つずつやって行きたいと思います。2サイクルか3サイクルすると問題点が見えてくると思うので、そこにテコ入れをする。将来どうするかというのを申し上げるのは、まだ難しい段階ですが、少なくとも今、大学として目論んでいることはなんとか進んでいると思います。まずは一度やってみて、それを積み上げて、その上でどうするかということですね。

効果が見えてきていらっしゃるということは私どもも嬉しく思います。CIEEではTOEFLテストだけでなく、海外交流プログラムでもお手伝いさせていただいていますので、何かお役に立つところがあれば、ぜひお声がけください。本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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インタビュー:2010年4月14日 TOEFL事業部 部長 根本斉

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