TOEFL Mail Magazine Vol.62
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校長先生に聞く

TOEFLメールマガジンでは、教育界のトップの方々に大局的な視点から学校の運営、指導方針、授業の改善などについてインタビューさせていただいた内容をご紹介しています。今回は、中高一貫教育をとおして「世界をこころに」という壮大な理念のもと、能動的かつ知的な日本女性の育成に邁進されている品川女子学院の漆紫穂子校長先生にお話を伺いました。

漆 紫穂子(うるし しほこ)先生

品川女子学院の漆紫穂子校長先生東京都品川区生まれ。中央大学文学部卒業後、早稲田大学国語国文学専攻科修了。他校の国語教師を経て1989年から品川女子学院にて学校改革に着手、2006年4月校長に就任。
ミッション「私たちは世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」を掲げ、社会で活躍する女性の育成を目指し、従来の学校の役割を超えた生徒と社会を結ぶ学校作りを実践している。
文部科学省 新教育システム開発プログラム ステアリング・コミッティー委員。
●対談、インタビュー等に『中学改造“学校には何ができて何ができないのか”』小学館・『この人がかっこいい!この仕事がおもしろい!』(キャリナビ編)日経BP等がある。産経新聞教育コラム「解答乱麻」執筆中。
●品川女子学院HP『校長日記』で日々の学校の様子を綴っている。
http://www.shinagawajoshigakuin.jp/fromPrincipal/index.html




● 女性は28歳以降を考えて準備をしたい
---近年、私学には共学化の傾向が見られますが、品川女子学院は女子校として貫いて来られた。今後をどうお考えですか。
 本校は共学化を考えたことが一度もありません。82年前に漆雅子が創立した当時は、女性には参政権がない時代でしたが、いつか女性も家庭だけではなく、社会や経済の成長の流れと共に歩く時代が来るだろう、その時のために、社会に必要とされる力を女性につけよう、とスタートした学校です。当時は女性が手に職をつけることが重視されていましたが、時代によって社会が女性に求める力は変わってきますので、教育内容も変化を恐れず改革を遂げてきました。しかし社会で活躍する女性を育てるというミッションは変わっていません。
 女子校の良さの1つは、中学高校という男女の成長の曲線が心身ともに全く異なる時期に、女子だけを預かることによって細かなケアができること。もう1つは、男女共学校であれば自然に分担されてしまうことも、女子だけでやらざるを得ないことです。やればできるし、発見もある。リーダーシップも育ちます。
 そして更に重要な女子校の役割は、将来から逆算した進路指導をすること。将来設計を考えるときに男女ではライフサイクルが違います。女性には出産の可能性があり、その年齢にリミットがあります。今は女性の活躍の場が広がっていますが、先進国の中で日本は出産育児でキャリアが中断したあと元の仕事に戻りにくい社会状況であるのも事実です。女子校の責任として、出産や育児を人生の視野に入れた上で、将来から逆算して人生を考え、進路を決めるライフデザイン教育が必要だと考えています。

---そのライフデザイン教育を「28プロジェクト」と名づけていらっしゃるのですね。
 はい。28歳を本校の教育のゴールにしています。高校を卒業する18歳の区切りではどうしても大学入試が視野に入って、考え方が狭くなってしまいます。28歳というのは、女子がワークライフバランスを考える上で岐路になる年齢です。ちょうどキャリアもある程度見通しが立つし、一方で出産平均年齢前後でもあり、結婚や出産について
品川女子学院 昼休みの中庭
【写真:品川女子学院 昼休みの中庭】
考える時期なのです。もちろん28歳は象徴的な数字で、個人差があって構わないのですが、ここがキャリアとプライベートと2つの面で、ターニングポイントであろう、と。
 たとえば育児と仕事を両立するなら、専門職の方が復職しやすい、英語などの資格もあるほうがいい、などさまざまな考え方があるでしょう。その専門性を身につける学部学科選択は高校生の時期にしなければなりません。自分自身の28歳以降のことを、中高生のときに考え、それに向け準備し、土台をつくろうという教育です。

---中高生には28歳は遠いことのようでも、実際にはすぐですよね。意識して先を見据えれば、日常のものの見方が変わってくるのでしょう。
 おっしゃるとおりです。今将来を決めなさいというわけではないのです。意識することで、校内の勉強が自分の将来と、社会とどう繋がっているのか、という見方ができるようになる。学校はどうしても社会と隔絶されがちなので、「何のために勉強しているのか」の動機付けが必要なのです。
 4年制大学の新卒就職者の三分の一が転職するそうですが、中高生のうちから、世の中にどういう職種があるのか、自分は何が一生懸命できるのかを知らないといけません。今と未来がつながっていること、目の前の勉強と社会がつながっていることに気づくチャンスを与えるのが、本来の教育だと思っています。

企業の大人に学ぶ勉強
---「28プロジェクト」のまわりの反応はいかがですか。
 言い続けることで、意識はだんだん変わってきました。大人の側も、10年前は「そうは言っても、まぁお嫁にいけばいいじゃない」という感覚の人もいたと思いますが、今は違います。特に英語教育に対する意識がずいぶん変わりました。「日本でずっと生きていくのだから、英語はいらないじゃない」などと言う人は、かつていましたが、今はいません。日本は少子化・人口減少で、女性が働いて社会を支えざるを得ない国になってきましたので、当校の教員は真剣に、この目標に向かってカリキュラムを立てています。
 生徒の意識も変わりました。「28プロジェクト」の一環で、社会人と生徒の交流や企業のコラボレーション授業を実施しているのですが、生徒たちが年長の働く女性に、仕事の意義などを積極的に訊ねている光景を目にします。自分の将来を真剣に考え始めているようで、「その仕事は文系ですか?理系ですか?」といった問いもあります。「数学的な論理的思考力が最終的に大事だよ」と現場の人が言ってくれると、私たちが言うよりよっぽど効き目がありますね(笑)。高校一年生が「とりあえず文系理系っていう選択はしたくない」なんて友だち同士で話していたりもします。

---意識がとても高いですね。コラボレーション授業ではどんなことをされているのですか。
 放課後に選択可能な特別講座を設定し、竹中平蔵さんなど専門家を招いて授業をしていただいています。企業とのコラボレーション授業もその1つで、福助さんと靴下を作ったり、サンリオさんと品女(品川女子)キティちゃんを作ってその売上金でカンボジアに学校を寄付するプロジェクトを起こしたり。ポッカコーポレーションとコラボレーションで開発した『桃恋茶』は今秋発売されました。
 有志だとどうしてもいつも同じ生徒ばかりが参加してしまうので、学年全員で取り組む活動もはじめました。昨年度は中3の総合学習の時間を使って、全員を対象に1年間実施しました。仕事の世界を知ろうというテーマで、ある文房具の宅配の会社と常盤薬品さんに協力をお願いしました。
 文房具の宅配の会社とのプロジェクトでは、会社への提言を行いました。社長さんが見に来てくださり、絶賛され会社の研修の中で、プレゼンもさせていただきました。その後も交流が続いています。
 常盤薬品さんとのコラボでは、商品が生まれました。最初は身内に少し販売ができれば、という話だったのですが、あまりにもいいものができてしまったので、社長さんの英断で実際に商品化され、販売されることになりました。「眠眠打破ハードグミ品川女子学院バージョン」です。
品川女子学院の漆紫穂子校長先生インタビュー 発想が豊かな子、デザインする子など、一人ひとりが色々な面で力を発揮し、チームで力を出すことを学び、予想を超える成果が出ました。クラスごとにコンペをして、最終作品が本当に世に出ることになったのですから、最後は真剣勝負の世界でしたよ。
 大人のマナーやコミュニケーション能力など、目に見えない大切なものも身をもって学んだようです。最初はいろいろな失敗がありました。いざ訪問しようというときに場所を調べていなかったとか、会社で貴重な時間をいただいているのに、その場でもたもたしているとか。でも一回失敗すると、次はきちんと司会を立てて質問事項も要領よく、順序を入れ替えたりなどして、覚えていくのです。校外のみなさまの協力に支えられて、生徒たちが成長していきました。
 現代は、地域社会の交流が減り、核家族化でおじいちゃん・おばあちゃんと接する機会も減っています。親や教員以外の大人に接することの少ない生徒にとって、外の大人の意見が新鮮なのではないでしょうか。企業とのコラボレーション授業で、仕事の意義が考えられるようになり、今の勉強への動機付けになっていったのは、本当に大きな成果です。

英語だからできるコミュニケーション
---英語教育、国際理解は品川女子学院の特色の1つですが、どのような点に力を入れているのでしょうか。
  英語教育では、勉強したものを実際に使う行事を実施しています。中等部のときにはネイティブの方を連れて浅草に行き、生徒が観光案内します。中3の修学旅行はニュージーランドで、全員が現地の学校に通ってホームスティをします。オプションで2週間延長もできるので、8〜9割の生徒はオプションをとります。修学旅行は8日間ですが、オプションを含めると3週間になります。
 このプチ留学経験で、 教室で勉強した単語や言い回しを使ってみると、頭で学んだ学習が体に定着します。これが英語学習に対するモチベーションを高めています。高等部では、オーストラリアやイギリスなどの姉妹校の留学プログラムに参加できるようにしています。
 しかし、海外に行くのはお金もかかるし人数も限られるので、留学生の受け入れにも力を入れています。最初は英語圏の生徒を受け入れていましたが、途中から本当の意味での国際交流はいろんな国籍の人がいたほうがいいと気がつきました。たとえばスウェーデン人やドイツ人は英語が上手です。それを見て生徒が「英語が母国語ではないのに、すごいな」と思い、自分も頑張ろうと思える。台湾、ラオス、タイなどから来ている生徒とのコミュニケーションは、お互いたどたどしい英語で行われます。その中で英語圏の生徒から英語を「習う」のではなく、実際に国際コミュニケーションの「手段」として英語を使うと、この発音でも
中学1年生の地理の授業に留学生が参加している様子
【写真:中学1年生の地理の授業に留学生が
参加している様子】
通じるんだと勇気づけられる子もたくさんいます。いろんな国の人との出会いのたびにもっと話したいという気持ちになってきます。今在校しているのは、ラオス、ドイツ、ニュージーランド、台湾、チェコなど10人ぐらいですね。留学生は高等部1年生の各クラスに2人ずついますが、中等部の地理や国語の授業にも来てもらうし、校外行事は中高一緒に行ったりします。年少の生徒たちはお姉さんの留学生を取り巻いて楽しそうにしています。


---お互い英語が母語ではないため、英語を勉強した経験があって、苦労が分かり合えるのもいいですね。勉強方法も違っていたかもしれないし、母語で英語を話す人とは全く違ったコミュニケーションがとれるかもしれません。
一緒に鎌倉を散策している様子
【写真:一緒に鎌倉を散策している様子】
 そうですね。留学生たちが日本語を学習していく過程を、生徒たちは目の前で見ていくことになりますから。そのなかで、きれいな発音ではなくても、変な文法でも、伝えたい気持ちがあること、伝える内容があることが大事だとわかるのも、得難い経験です。留学生は一生懸命勉強して半年ぐらいで日本語が上達する。それを見ている日本の生徒たちの英語学習のモチベーションも上がってきます。
 生徒たちを見ていて驚くのは、留学生も日本人も、双方英語と日本語のちゃんぽんで話していることです。外国語は話すのは難しいけど聞くのは楽なので、日本の生徒は日本の言葉で話して、留学生は英語で話す、といった具合に、両言語が混ざったままで会話が成立しているのです。面白いですね。大人よりも子どもの方が上手です(笑)。たぶん、あまり意識していないんでしょう。

「使える英語」がもたらすチャンス

---TOEFLテストは日本で2006年7月から、読む・聞く・話す・書くの各セクションが全て30点ずつで120点満点となり、より実践的な英語能力を測るテストになりました。貴校のように「使える英語」に焦点をあてた教育をされていれば、自然と対応できると思われます。

 そうですね。話したい願望からスピーキングが始まる。その後メールのやり取りでライティングが必要となる。コミュニケーションの4技能は、日常生活で自然と必要となる能力です。TOEFLテストは学習の進捗状況が国際的な基準で客観的に判断されるので良い指標になります。
プレゼンテーションの様子
【写真:プレゼンテーションの様子】
  使える英語を身につけていれば、TOEFLテストだけでなくチャンスは増えていきます。卒業生からは、大学でも、英語の授業の単位が取得できたり留学試験が免除になったという例も聞きます。先を見据えた英語教育という動機付けをしてきた結果が、彼女たちのチャンスを広げているのです。当校の生徒たちは中一から留学生と混じっていますので、とても積極的で物怖じはしません。中国研修に行ったとき、ガイドブックで覚えた中国語で精華大学の教授に話しかけた度胸にはびっくり。その生徒は将来海外で働きたいそうで、現在、数ヵ国語を勉強していますが、ある時「先生、私、将来アメリカの大学を出てMVPを取りたいんです」って。「それMBAじゃないの」、と笑ってしまいました。
 また、本校の卒業生たちは大学案内のパンフレットへの登場率が高いんです(笑)。積極的に研究室や学祭に貢献したりしている結果のようです。やはり積極性や貢献意識は大事だと実感しています。

---最後に、在校生の方、卒業生の方に、メッセージをお願いします。

 私はこれからも本校の創立以来のミッションのとおり、世界を視野に入れて女子教育をしていきます。在校生や卒業生には、日本に生まれ育った人としてのアイデンティティをしっかりもって、自分の国にプライドをもつ人であってほしい。そして、女性である良さを生かして、自分の人生を自分で切り開いていってほしい。常に前を向いてチャレンジする、そういう人に育って欲しいと願っています。


---ありがとうございました。

(インタビュー: 2007年9月20日 TOEFL事業部 部長 根本 斉)

 

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