TOEFL Mail Magazine Vol.60
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特設インタビュー大杉正明先生に聞く!-英語の学びのエッセンスと言葉の多様性-

NHKラジオやテレビでおなじみの大杉正明先生。英語を学習しているみなさんには憧れているという人も多いのではないでしょうか。今回はその大杉先生に、英語学習の秘訣や言語の多様性について語っていただきました。エネルギッシュでとても魅力的な先生の楽しいお話に、時間を忘れて聞き入ってしまいました。さて、みなさんもこの貴重な機会をお見逃しなく!


大杉 正明(おおすぎ まさあき)先生
大杉正明先生清泉女子大学教授。
(1987〜1998)NHKラジオ「英会話」講師、
(2002〜2005)
NHKテレビ英会話「今から出直し英語塾」講師、現在NHKラジオ「ものしり英語塾」講師
1998年イギリス・エクセター大学客員教授。
専門は英語学、応用言語学


著書:
「ニュープロシード和英辞典」[共著](ベネッセ)
「NHKラジオ英会話リスニング・テキスト What's new?」(DHC)
「NHKラジオ英会話キーフレーズ集」(NHK出版)
「NHKラジオ英会話一発表現300」(NHK出版)
「イギリス英語はおもしろい」(DHC) 「Hopes, Love, and Dreams in New York」(NHK出版)
監修:
「英語であれこれ言ってみる」(増進会) 「ドラマでリスニング」(DHC)
「イギリス英語リスニング」(アルク)



スピーキングは主導権が自分にある
---新形式のインターネット版TOEFL®テスト(TOEFL® iBT)が2006年7月から日本で導入され、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を一度に測定するテストになりました。大杉先生の印象としては、受験者にとってどのあたりが難しいとお考えになりますか。
 テストの内容を良く見た上で判断しなければなりませんが、この4つの中で考えるとリスニングですね。どの技能も場面や文脈によって難しさは違いますが、大雑把に比較するとリスニングが一番難しい。
 よくスピーキングが一番難しいと思われがちですが、スピーキングはあくまで主導権が自分にあります。ということは、自分の持っている語彙力・文法力・発音で伝えればよいのであって。もちろん即興のスピーチが要求される場合や、短い準備の時間でまとまった内容の講演を依頼された時などは別で、これには相当な英語力が必要となります。しかし大概の日常会話は、自分の語彙力とスピードで話せばいいのです。日本語でだって話下手と話上手な人がいるのですから、母国語でない言語を使っているのではなおさら、少々話下手でも構わないでしょう。
 それに対してリスニングは、一切自分に主導権がないので、相手がどんな語彙や文型を使ってくるのか予想ができません。相手に「ワンセンテンスの長さを10語までで、簡単な語彙を使って話してください」とお願いするわけにはいきません。知的な会話になればなるほど語彙が要求され、口語と文語の差がなくなってきます。易しい日常会話なら簡単でも、話が入り組んでくると、しゃべっている英語の中にだって分詞構文も入ってきてしまいます。さらに発音も、自分の予想通りとは限りません。国や地域により発音は異なります。「読む」「話す」「書く」ことと違い、リスニングは自分でコントロールできない、だから難しいのです。そして「読む」「話す」「書く」のは一人でできますが、「聞く」ことは一人では練習ができないのです。話せるけど、聞いてもわからないのでは、コミュニケーショ ンのスタートが切れません。

英語の多様化−インターナショナルイングリッシュとは

---今の世界の現状は従来とは違い、ネイティブスピーカーとの会話以外に、英語が母国語ではない人たちとのコミュニケーションの機会も大いに増えていると思います。そのような現状もリスニングを難しくしているように思えるのですが。

 実は私も、この2週間ぐらいリスニングでとても苦労しました。私はイギリスの銀行に口座を持っていたのですが、お金を預けたまま何年もほったらかしにしておいたんです。でも何年もたってしまったので日本円に換えて日本に送金したいと思い銀行に手紙を書きました。するとその5日後くらいに突然大学の研究室に電話がかかってきて、「あなたの口座は休眠状態(inactive)です。」と言われたのです。それから2週間、口座を”active”にするために10回も電話でやり取りしなければなりませんでした。私から見ると故意にさまざまなハードルを課してなるべくお金を移さないようにさせているのかと思うくらい、面倒でした。実はその電話は、イギリスではなくインドのコールセンターからかかってきていたのです。近年では、海外の銀行だけでなく米国の通信販売会社を始め、たくさんの企業がインドにコールセンターを設けています。よく授業で学生に話していたことではありましたが、実際にインドからかかってきたのは初めてでした。
 彼らは必要に応じて米国や英国のアクセントの訓練を受け、なるべくインド人のアクセントを消すようにトレーニングを受けていますが、実際には非常に強いアクセントでした。今度の件でいろんなインド人のオペレーターと入れ替り立ち代り話をして、だんだん慣れてきましたが、最初のうちは何を言っているのか理解することが難しかった。ペラペラと速いスピードであのアクセントでずっと話されるのには、本当に苦労しました。
 今の時代、特にアジアを中心にした英語のバラエティーに対応しなければいけない機会が増えてきています。これからおそらく、中国でも英語ができる人が画期的に増えて、中国人英語の特徴に慣れる必要もでてくるでしょう。ネイティブスピーカーの英語を聞き取り、理解するのも、もちろん難しい。しかし聞きなれていないアクセントの英語を理解するのはもっと難しいかもしれない。個人の癖も考えると世界中の何十万、何千万の英語のバラエティーに対処しなければならないでしょう。さまざまなアクセントが許容される時代になってきたのですから、我々日本人も以前より発音を気にしすぎず、コミュニケーションができるのではないでしょうか。


語彙を増やすことこそ上達への道
---大杉先生のご経験から、リスニング上達のためには、どのような勉強法が効果的だとお考えですか。

 とにかく語彙を増やすことが、一番効果が表れやすいと思いますね。TOEFLテストのような英語テストでは特に、語彙を増やすことは明らかに点数に直結します。多少文章の構文がわからなくても、単語がわかれば十分なこともあります。おそらく「英語ができない」という人の中には、英語そのものの読書量が足りない、つまり読書量のインプットが少ない人が多いのではないでしょうか。
 私のころは、古い時代ですからあまりいろいろな勉強方法がなかったので、英語の本を大学生のときに読みました。特にテネシー・ウィリアムズやアーサー・ミラー、ウィリアム・インジといったアメリカの作家の戯曲をずいぶん読みました。テネシー・ウイリアムズは全部読みましたね。戯曲を読むきっかけになったのはアーサー・ミラーの Death of a Salesman の英語劇でした。それまで日本国憲法や日米安保条約などを読んでいたので、文学に対する渇望があったのかもしれませんね。私は残念ながらキャストには選ばれず、大道具や音響、会場係だったんですが、台本をいつもポケットに入れて、キャスト以上に細部にわたり読み込んでいました。劇なので会話を読んでいるわけですね。そこで会話の英語がたくさんインプットされて、それが良かったのでしょう。


英語の持つ文化性とCollocation

 語彙を増やすうえでは、単語だけでなくcollocationはとても重要です。「話す」「書く」ではある程度collocationを無視してもコミュニケーションは成立します。たとえば日本語では、傘を「さす」と言いますが、外国人の方がこれを知らずに、「私、傘、開きます」と言っても私たちには通じます。しかしリスニングは違います。これを知らない外国人は、「傘、さしますか?」と聞かれたら、「え!傘で刺すの?やめてよ」と怖がってしまうでしょう(笑)。やはり言語の難しさはリスニングにあるのです。
 collocationには文化性の強いcollocationと弱いcollocationがあります。たとえば、「提出する」という単語にあたる”submit”はたいてい知られていますが、そのくだけた言い方の”turn in”や”hand in”という言い方は、もしかするとそれほど知られていない。これはそんなに文化性が強くないので、一般的な英語として使われます。ところが”green-eyed monster”という言い方などは非常に文化性が強い。英語文化で嫉妬(ジェラシー)がgreenで表されることを知らなければ、ただの「緑色の目をした怪物」としか思えない。「嫉妬に狂っている」だなんて想像もつかないでしょう。
 世界中で、ネイティブスピーカーの数を上回ってネイティブでない人が英語を使うようになってくると、それぞれがアメリカやイギリスの匂いがプンプンするような文化性の強い英語を勉強する、というよりは、世界英語になってくると匂いの少ない英語を学んだほうが良い、という考え方もあります。日本でも、昔は米国文化の強い英語が教えられていました。英語の教員はあまり知られていない米国的な表現を使って、「お前ら知らないの」などと薀蓄を言って喜んでいたものです。私も若い頃は、そういう表現を見るとうれしくて一生懸命覚えたものですが、いろんな人とつきあって、いろんな英語に出会うにつれ、考え方も変わりました。スコットランドやアイルランドの人と話すと、「本当にそれが英語!?私のほうが上手なんじゃないの。」と思ってしまうような個性の強い英語にも出会います。英語は一種類ではありません。ですから、非母国語者の英語の勉強では、特定の文化性の強い表現に傾倒しないほうがよいでしょう。


会話文と散文のバランスが大切

 私は、言葉の教育やそれを測るテストは、散文と会話文のバランスが大事だと考えています。テキストのREADERと呼ばれている、分量が多めの散文も、また会話のダイアログも、両方を勉強しなければなりません。オーラルコミュニケーションや実践的コミュニケーションだとかいってあまりにぶつ切りの短い会話ばかり練習するのはよくありません。
 テストをする場合も、Productiveな力とReceptiveな力、散文と会話のバランスを取らなくてはいけません。英語圏の大学に行って勉強する目的であれば、英語での講義(長い散文的モノローグ)を聴いて理解することと、クラス内でのディスカッションや友達との会話をわかることが両方必要となってくるのですから。


英語を学ぶ学生に期待すること

---大学で教鞭をとられていて、昨今の学生の英語力についてどう感じていらっしゃいますか。

 学生の読むことによるインプット量の足りなさは特に感じます。基礎固めより、断片的な表現をちょこちょこっと覚えるプレハブ式のような英語が多い。そんな英語は根っこがない。文法が弱いと英語は伸びません。「ここに名詞が2つ並んでいると、文にならないでしょう?」と言っても、その「変だ」という感覚がわからないのです。昨今の英語力低下は、このような根本的な部分が問題なのではないでしょうか。
 でも今年はとても有望な学生が入学してきたので期待しています。去年の秋に特待生入試でたまたま私が面接した生徒です。彼女は高校生で、なんとTOEICテスト満点を取っていました。エリートの社会人でもなかなか取れるものではありません。まず驚きました。
 面接の際に英語で「今一番関心を持っていることは何ですか」と私が質問をすると、自分が好きな映画俳優の出身がスコットランドだとわかったから、スコットランドに興味があるとのことでした。具体的に何をしたのか尋ねると、図書館に行ってスコットランドに関する本を片っ端から読みました、と言うのです。試しに、ちょっと私にスコットランドについて簡単に話してみてくれる?と言ったところ、歴史から何からずーっと、英語で喋り始めました。イングランドといつ戦争をしていつ統合されて、未だに反発心を持つ人がいて独立を叫んでいて・・・と延々と話しているんです。感動してしまいました。英語ができることももちろんすばらしいことですが、それより高校生で興味を持ったことについて、自分で図書館に行ってたくさん本を読むエネルギーがすごい。そしてちゃんと自分の中で消化して、人に説明できることがすばらしい。

---何かに興味を持つことは、語学を勉強するうえでも大切なエネルギーです。先生のラジオ講座をずっと聞き続けられたのも、先生のストーリーがとても興味深かったからです。メールマガジンの読者の皆さんにも、ぜひ、興味を持って英語を学び続けていただきたいですね。

---最後に、読者の皆様へのアドバイスをお願いします。

 「読む」「書く」「話す」は連携していて、上達させるにはよい英語を取り込み、それを真似することが重要です。よい英語のエッセイや小説などを持ち歩いて、「ああ、こういう英語の表現っていいな」という部分を読み込んで、自分で英文を書く時にその真似をして書いていく。その時に「聞く」も同じようにできればいい。よい英語のリーディング教材には、名文家と言われる人の本を選べばいいですが、リスニング教材は、「この人の英語がいい」という判断が難しい。『大統領のスピーチ集』やBBCのリスニングシリーズなどを試してみてはいかがでしょうか。格調高い良い英語を聴いて、自分が話す時にそのリズムや発音を真似して練習してみてください。
 外国語の学習には、観察をして、真似るというプロセスが必ずあります。観察力を磨くためには、まず目の前にいる人の日本語の話をよく聞いてみてください。その人の話し方の特徴が耳に残るくらい観察力を養っていくと、外国語の観察に繋がっていき、真似をするのが上手になります。その真似を発展させて、自分の英語にしていくことが大切なのです。


---ありがとうございました。

(インタビュー: 2007年7月13日 TOEFL事業部 部長 根本 斉)


☆こぼれ話☆
NHKラジオ英会話の講師をしていらしたのが、もう10年以上前というのが信じられないほど、エネルギッシュで魅力溢れる大杉先生に、NHK時代のことを聞いてみました。

やはりNHKラジオ英会話をしていたころが一番楽しかったですね。私も若かったしやりたい放題でした。午前2時ぐらいでもまだ平気という感じでしたから。あのバブル時代は本当におもしろかった。あんなに気前良く平気で散財したのは人生の中であんまりないですからね。あの頃は生まれて初めてポルシェ買っちゃったんですよ。それは17万キロ乗りましたけどね。今はもう信じられないですよ、1台の車にあんなにお金をかけたなんて(笑)。そういう時代でしたね。


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