TOEFL Mail Magazine Vol.55
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NHK英語講座 インタビュー「英語力」は「人間力」

TOEFL®テストの勉強にNHK英語講座を利用している方も多いのではないでしょうか?その理由は、毎日英語に触れる習慣をつけたい、英語を楽しく学びたい、講師の話がおもしろい、などさまざまでしょう。今回は、そのようなみなさんのニーズに答えるべく多種の番組を放送し続けている、NHKエデュケーショナル語学部の伊藤氏にお話を伺いました。


 この春からの番組に関しては、「NHK英語講座 公式ガイド2007」をご覧下さい。

NHK英語講座 公式ガイド2007 (NHK出版)
NHK英語講座 公式ガイド2007 (NHK出版)


 NHK語学番組放送時刻表
NHK語学番組放送時刻表
(クリックすると拡大します)
その他の情報についてはNHK外国語講座ホームページへ。
また、4月からはNHKの学習者支援サイト(ゴガクル)も始まります。ご期待下さい!

プロフィール:伊藤 尚伸(いとう・ひさのぶ)
伊藤 尚伸(いとう・ひさのぶ)氏 1960年北海道生まれ
1983年早稲田大学教育学部卒業後 NHK入局
千葉放送局、番組制作局教養番組部、北九州放送局などを経て、現在はNHKエデュケーショナル語学部勤務

-- 多くのTOEFL®テスト受験者が、勉強のためにNHKの番組を利用しているようです。この春からまた番組を一新されることと思いますが、NHKのテレビとラジオの根底路線はどのようなものですか。
 英語番組の場合、テレビでは数年前から「目的別」にシフトしています。5つの番組で、目的に応じた内容をショーウィンドウ的に視聴者の皆様に示しています。10〜20分ぐらいは飽きないで見てね、といった入り口程度ですが、週4回放送することで、英語学習の癖をつくっていただきたいと考えています。
 ラジオでは、主に「レベル別」で制作しています。学校放送の番組ではないので、学習指導要領に基づいているわけではなく、学校英語と必ずしもリンクはしないのですが、やはりユーザーや先生方からの要望もあり、”基礎英語1”、”基礎英語2”に続く、”レベルアップ英文法”という番組では英文法に焦点をあてて放送しています。
 テレビとラジオの基礎の上に、高校・一般向けの「英会話入門」「英会話上級」などがあり、この春からは全部で13番組を放送します。

英語力とは
-- そのたくさんの番組の中から、視聴者は自分の時間や好み、レベルに合わせて自分なりの学習法を選ぶことができるのですね。英語力を伸ばす道は無限に提供されているのでしょう。
 最近、部内で、「英語力って何だろう」という議論をしました。勿論、私たちはTOEFLテストなどの英語運用能力テストで何点というように具体的でなくても、英語力を高めていただくために番組を放送し続けているのに違いないのですが、どれをもって英語力とすべきかは常に考えさせられます。よく外国で、ルームサービスを頼んだり、ウェイクアップコールを頼んだりすると、先方に間違いがあるというシチュエーションがあります。その時に、文句を言いたいとする。映画などで、欧米人は人それぞれの個性的な文句を言いますが、我々は語彙力があっても、文法力があっても、なかなかそこまでの匙加減はできません。もどかしいですよね。これは「英語力」が足りないからでしょうか。私は、一定の文法力と一定の語彙があって、そのうえで日本語になくて英語にある「何か」を感じる力があれば、できることなのではないかと考えています。
-- 『日本語になくて英語にある「何か」を感じる力』というのは、その文化に根付いている言葉を学ぶ以上、確かに必要であると思います。TOEFLテストも、昨年7月より日本でも新形式のテスト(TOEFL iBT)が開始され、言葉そのものだけでなく、暗に意味されたことを問う問題も含まれ、より英語によるコミュニケーション能力を測られるテストになりました。

 英語の試験で満点を取る人の中には、ユーモア溢れる素晴らしい英語をしゃべれる人もいるし、全然しゃべれない人もいます。自分の気持ちを明確に言葉にし、相手の言いたいことをくみとることができない人は日本語でもできないですよね。純粋な「語学能力」のみならず、コミュニケーション能力に優れているかどうかも関わってきます。そうなるともう、予想する知識とか教養とか、人間関係の調整能力、人の目を見て話せるか、言葉の裏が読めるか、など全て含めた「人間力」にまで発展してくるのではないでしょうか。
伊藤 尚伸(いとう・ひさのぶ)氏インタビュー ちょうどラジオの“ものしり英語塾”という番組で放送しているような、多角的に「英語」にアプローチする力。「あいつは英語の文法も発音もあまりうまくないけど、サウスダコタやウィスコンシンがどこにある、とか全部知っている」とか、「スタインベックの小説の題名を全て原文で言える」など、そんな知識も含めて全て英語力なのかもしれません。
 私も学生の時、英語が特別できたわけではないですが、好きな音楽の話であれば英語でコミュニケーションをとることができたことをおぼえています。
 その頃、こんな経験をしました。友人たちと居酒屋で飲んでいたとき、女性店員がコップに触れた瞬間にひびが入って割れたことがありました。彼女が「失礼しました」と言って、新しい飲み物と別の料理をもって来た時に、私の欧米人の友人たちは彼女のことを”Midas touch”だと言って一同盛り上がったのですが、私は「”マイダスタッチ”って何?」と、笑うことができませんでした。後で調べたらギリシャ神話で「ミダス王が触ったものはみんな金になる」ということでした。その時私が感じたのは、彼らと同じような感性でジョークを言い合ったりするには、その文化の根底をなしているものを知っている必要があるということです。日本語でいいので「聖書」「ギリシャ神話」「マザーグース」「イソップ」「アンデルセン」ぐらいはしっかり読んでおかないと、洒落や冗談にもついていけないのですから。それも、ひとつの英語力かもしれませんね。


時代の流れ
-- NHKの英語講座は歴史が古いですが、最近は英語を取り巻く環境がめまぐるしく変わっています。グローバル化が進み、英語の必要性もより高まってきました。インターネットでオンデマンドで使える教材も増え、自己学習する可能性も広がったと思いますが、あえてテレビ・ラジオで発信するのはどのような意味を持つのでしょうか。
 この数年で、世の中が便利になりすぎて、24時間対応が当たり前になりました。それがお客様第一主義とうたわれていますが、終電の時間も過ぎたのに営業している駅前のお店で、時間外手当がつかない店長さんが働いていて、日本全体が活力を失っていく一因になっているような気がします。確かに放送もその方向に流れています。時代に合わせ、放送ではなくインターネットで流したらという意見もあります。しかし、いつでもどこでもアクセスすれば番組を聞けるというのでは、学習ソフトと同じになってしまいます。テレビ・ラジオでは決まった時間に決まった長さだけ放送しますので、「見逃した方はこちらへ」というのもある程度必要かもしれませんが、24時間対応だと甘えも出てきます。自己学習方法も人それぞれですが、「いつでもできる」と思うとなかなか継続できない方もおられます。毎日決まった時間に必ずテレビ・ラジオをつけて、英語に触れる。その毎日の数十分の積み重ねで、力がついていきます。時間に縛られるストイックさが求められるような番組も、この時代だからこそ必要とされるのではないでしょうか。ここについてこなかったらまた来年、という厳しさも、あってもいいかもしれませんね。
-- 現在直面している課題はありますか。
伊藤 尚伸(いとう・ひさのぶ)氏インタビュー 1つは、やはりWebサイトにあまたの学習ソフトがあり、百円ショップで英語のCD教材が見つかり、学習機会が溢れている現代で、NHKが放送していく英語番組は、テレビ・ラジオ共にどうあるべきかということです。私たちは多くの先生方とお付き合いしてきたノウハウを活かし、この時代で「放送」だからこそできることを追求していくつもりです。
 2つ目は英語力を高めるためにどんな番組を作ったらいいのかです。日本政府も、多少コンプレックスもあるかもしれませんが、日本人には英語力が足りないと判断しているようです。本当に今まで日本の英語教育は間違っていたのか、これから変革しようとしているのは、ほんとに素晴らしいものなのか、元々そんなに頑張らなくていいものなのか、答えは出ません。以前は「英語力=受験」という一つの尺度がありましたが、今は通用しなくなりつつあります。一方で今でも、TOEFL、TOEICなどのテストで「点数がすべて」という会社もあります。私たちの番組も「これでいいのか」、という疑問をいつも持ち続けて制作に携わっています。
 3つ目は、小学校英語についてです。先生方や親が、それぞれの思惑をもっています。早期教育も含めた小学校英語を機会に、我々は日本人の英語力とは何かを考えていかなくてはなりません。 今はまだ途中経過ですが、現在提供している番組で本当に全てのニーズを網羅しているのか、常に試行錯誤です。
-- 番組を制作する上での秘訣はなんですか。
 外国人の出演者の方と多く接していることが、いい番組の発想を生むチャンスを与えてくれているような気がします。お正月に特集番組を放送したのですが、彼らの発想が我々には興味深かった。英語しか話せない人も勿論ですが、日・英両方しゃべれる人が疑問に思った内容、見方が、日本人には新鮮で面白い。そこに、本当に言語力をつけるというのはどういうことなのか、ヒントがあるのではないでしょうか。そうは言っても、当然、母語には敵いません。ただ、母語にどう近づくか、そのアプローチの仕方を私たちはテレビ・ラジオの番組を通して示したいと思っています。
-- 英語番組の今後の展開についてお聞かせください。
 今年の春から、60歳以上の方が一気にリタイアされます。その中には語学に興味をお持ちの方は潜在的に相当いらっしゃると思います。この春からはじまる“きょうから英会話”のように、中学校レベルの英語表現をベースに、リタイアされた方も「もう一回やり直そう」と思えるような初級者向けの番組を制作します。また”新3か月トピック英会話”もシニア世代を対象にした内容でスタートします。やはり春は、何かを始めようと考える季節ですので、この4月から楽しみです。来年度以降も、よりピンポイントなニーズに対応できるよう議論を重ねていきます。

-- ありがとうございました。
(インタビュー:2007年2月28日 TOEFL事業部 稲吉 美和子)

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