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TOEFL Mail Magazine Vol.42
 

教室からの声:TOEFL ITPテスト
【早稲田大学 理工学部 上野 義雄 先生】

 このコーナーでは、TOEFLテストの実施・運営団体であるETSのプロダクツをご利用いただいている高等学校・大学での導入事例を、現場の教室からお伝えします。
 ETSプロダクツとは、ペーパー版TOEFLテスト(TOEFL PBT)の過去問題を使った「団体向けTOEFLテストプログラム:TOEFLテストITP」や、インターネットに接続できる環境があればどこからでもアクセスができ、短時間で採点とフィードバックを自動で行う、ライティングの授業には欠かせない「オンライン・ライティング自動評価ツール:Criterion」など、現在日本国内のみならず世界の教育現場の皆様に多くご利用・ご活用いただいているETS開発のテスト・教材です。
 今回は、TOEFLテストITPを導入されている早稲田大学理工学部上野義雄先生からのレポートです。

 
 上野 義雄 先生 プロフィール-------------
略歴:
 早稲田大学理工学部数学科卒業
 早稲田大学大学院文学研究科修了
 シカゴ大学大学院言語学科博士課程修了【Ph.D(言語学)】
現職:早稲田大学理工学部理工系英語教育センター助教授

 早稲田大学 理工学部-------------
早稲田大学は、「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」を3つの建学の理念と、そこから生まれ受け継がれてきた早稲田スピリットが校風である。そのなかで理工学部は100年の伝統を持つ、私学として最も歴史のある理工系学部であり、学祖大隈重信以来の「基礎と応用の両立」という教育研究原理を堅持しながら飛躍を遂げている。
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 理工系英語教育センターの概要

 理工系英語教育センターは、国際レベルの研究者・技術者を育成し世界に送り出すことを目的とし、理工系学生に適した実践的な英語教育を行うために、2004年度に新たに設置されました。この設置に伴って私を含む4名の専任教員が外部から着任しました。現在、以下の教育目標を掲げ、そのプログラムと教材の開発を行っています。
 理工系英語の教育目標
研究者・技術者として 理解能力
英語で書かれた専門書や論文が理解できること
英語でのプレゼンテーションや講演が理解できること
発表能力
英語でレポートや論文が書けること
英語でプレゼンテーションや講演が行えること
国際人として 意思疎通能力
英語でディスカッションや日常のコミュニケーションが行えること

当センターでは、この教育目標に沿って新しい英語カリキュラムを開発しています。また、理工学部3学部分割に合わせて2007年度の全面実施を目指しており、昨年度からいくつかの学科を対象にそのための試みをFS(feasibility study)として行っています。昨年度は2学科、また今年度は6学科が参加しています。

 新カリキュラムの特徴とTOEFL-ITP

 以下の点が挙げられます。なお、いくつかにすでに現行カリキュラムで実施されているものです。
1.
入学時に1年生約1800人全員がTOEFL-ITPを受験し、この結果をもとにクラス編成を行います。結果によっては一部飛び級を認めています。このTOEFL-ITP全員受験という制度は2000年より実施されていて、その費用は学生が納入する実験実習費から出ています。
2.
現行カリキュラムの週1回開講「英語I」(通年)と「英語II」(半期)を再編し、それぞれ週2回授業の形態を目指しています。
3.
Webを活用した共通教材を導入しe-ラーニングを可能にします。昨年度は1年生用教科書としてTalking about AmericaというCD2枚付きビデオ教材を完成しました。さらに、この教科書に合わせたe-ラーニング教材として、音声画像と聞き取り・発音練習を含む多様な補充練習問題を備えたWeb教材を開発しました。このWeb教材にはe-ラーニング・マネジメント・システムを付けてあり、学生の学習記録が分かるようになっています。今年度の「英語I」ではこの教科書とWeb教材を使っています。2年生以上の授業にも今後共通教材を導入していきます。
4.
共通の評価基準を導入します。1995年より行われている制度をさらに改善し、「英語I」の場合には全履修者を対象に年4回の共通試験、学年度末のTOEFL-ITP、各授業担当者がつける授業成績の3種類のデータを組み合わせて最終評価を出します。「英語I」では、TOEFL-ITPを学生の英語力測定と評価のために利用しているので、授業ではTOEFL対策本のような教材は使っていません。2年生対象の「英語II-FS」クラスでも、今年度は共通教材とパラグラフ・ライティングを導入し、前期4回・後期4回の共通テストを行い、この結果と学期末TOEFL-ITP、授業成績を組み合わせて最終評価をつけています。現在試みている評価法、すなわち授業成績、共通教材にもとづく共通テスト、TOEFL-ITPのスコアを組み合わせて最終評価を出すという方式は、以下の点で優れていると考えられます。ア)共通教材の使用と組み合わせることで、教員間の極端な内容・評価のばらつきをある程度避けることができます。授業の質を保つために、昨年は非常勤の先生方全員に数回の説明会と英語のインタビューを受けていただきました。もちろん授業成績を担当の先生方から出していただく際には、共通の尺度(たとえば、教場テスト30%、発言・発表を含むclass performance 40%、ライティングを含む提出課題30%のようなもの)で評価するようお願いしています。イ)PBTには誤差が±14点あるとよく言われていますが、他の要素(授業成績と共通テスト)と組み合わせることで、より信頼度の高い評価になっていると考えられます。ウ)TOEFLを苦手とする学生でも授業を大切にしてがんばれば評価が上がることになり、授業へのより積極的な参加を促します。また、現在試行している方式では、授業成績が不合格の場合にTOEFL-ITPが何点であっても最終評価は不合格となりますので、授業をないがしろにしてTOEFL対策に専念するというような学生はおりません。
5.
早稲田大学では、すでにオープン教育センターで全学的に英会話中心の授業が多数開講されています。私たちは、それらの科目との棲み分けを考えて、理工学部内では、ディスカッション・論文執筆・プレゼンテーションなどに重点を置いた科目を開講しようとしています。この試みの一環として、今年度は「英語II-FS」にパラグラフ・ライティングを一部取り入れ、後期末までに5段落のエッセーを書かせることをねらっています。また、「英語III-FS」では昨年度より前期は科学系論文の執筆練習、後期はプレゼンテーション練習という授業を試みています。
6.
3,4年次配当の英語科目としては、「英語を学ぶ」姿勢から「英語で学ぶ」姿勢へつながるような一連の上級クラスの開講を考えています。多くの学生にとって、英語はいつまでも「学ぶ」対象でしかなく、「英語で何かを学ぶ」という姿勢がなかなか身に付きません。しかし理工学部生・理工学研究科大学院生を取り巻く状況はご存知の通りで、英語が唯一無二の理工系世界共通語となっています。したがって、将来、研究者になるにせよ、技術者になるにせよ、日常のメールやレポート・論文執筆、プレゼンテーションを英語で行う場面が数多く予想されます。このような状況ですので、学生にはできるだけ早い時期に「英語で何かを学ぶ」という姿勢を身に付けて、語学と専門の壁を取り去ってほしいと考えています。個人的には、この目的のためにMITのOpen Course Wareが使えそうなので注目しています。とくに、「線型代数」、「微分方程式」、「物理」、「生物学」などの理工系学生がすでにある程度なじんでいる分野の学部基礎科目が、授業風景のビデオ付きで公開されています。事前に語彙・内容に関するワークシートを与えておき、これらの授業を自宅で受講生に見させた上で、それをもとにディスカッションや発表中心の授業が展開できないかと考えています。

 English Forum-FS

 昨年度着任以来、国際教養学部の生井健一先生と共同で理工学部3,4年生対象に「English Forum-FS」という週1回の半期科目を開講しています。この科目は、市販のCD付き教材3種類(TOEFLの文法問題集、雑誌記事抜粋した教材、ビジネス英会話の教材)を与え、毎週自宅でのディクテーション、音読、シャドーイングという予習中心の内容になっています。教室では指定の範囲にもとづき、受講生のシャドーイングのチェック、英語での語句の確認、小テストなどを行っています。このクラスでも、pretestとposttestとしてTOEFL-ITPを利用しています。これまで3学期行いましたが、1学期で平均25点スコアが伸びています。2学期を通してこの科目を履修した学生は平均50点以上スコアを伸ばしています。

 以上、思いつくままに、私見を交えながら理工学部の英語教育改革とTOEFL-ITPについて書いてまいりましたが、少しでも読者のみなさまのご参考になれば幸いです。なお、拙文は私個人の執筆であり、必ずしも理工系英語教育センターの公式見解というわけではないことを、ご承知おきください。

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