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TOEFL Mail Magazine Vol.42
 

大学トップに聞く
【小樽商科大学 学長 秋山 義昭 氏】

 本シリーズでは、特色ある大学のトップの方々に大局的な視点から大学の運営・指導方針、授業の改善などについてインタビューした内容をご紹介しています。
  今回は、CIEEメンバー校でもあり、戦前に官立高等商業学校として開学され、また当時より「商学に国境なし」との考えのもと、語学教育に力を入れてきた小樽商科大学秋山学長にお話を伺いました。"北に一星あり 小なれど その輝光強し"の言葉は、まさに小樽商科大学を表しているといえるでしょう。

 
プロフィール:秋山 義昭(あきやま・よしあき)氏
小樽商科大学 学長 秋山 
        義昭 氏
昭和17年6月28日生
出身:北海道深川市
学歴:
 昭和40年3月 北海道大学法学部法律学科卒業
 〃 42年3月 北海道大学大学院法学研究科修士課程修了
学位:
 平成元年6月 法学博士(北海道大学)
職歴:
昭和42年4月
北海道大学法学部助手
  〃 44年4月 小樽商科大学短期大学部講師
  〃 46年10月 同 助教授
  〃 57年4月 小樽商科大学商学部助教授
  〃 58年10月 同 教授
  平成4年7月 小樽商科大学学生部長(〜平成8年6月)
  平成13年4月 小樽商科大学副学長(学術担当)
 平成14年4月 小樽商科大学長(現職)
専攻:行政法学
研究分野:国家賠償法、行政争訟法を中心とした行政救済法の研究
所属学会:日本公法学会(平成10年〜平成13年 理事)
 

昨年の4月から国立大学が法人化しました。小樽商科大学は地方にあり、規模も比較的小さな国立大学だと表現されていましたが、どのような独自性を打ち出して改革を進めていこうとお考えですか?
 法人化とは大学運営に競争原理を導入することです。大学の裁量の幅を広げ、教育研究を活性化し、効率化を図る。確かにこの点は今までの国立大学に欠けていた面がありました。国の機関のため、どこの大学も同じで競争原理が働かず、研究で世界水準に遅れをとったという危機感を持って必死になって努力をしていなかった気がします。効率化の面でも多くの無駄がありました。このような反省点を改善すべく法人化の動きが進められ、随分変わりました。まず仕組みでは、今まで国立大学には全く無縁だった理事や役員会を置くなど、法人に特有の組織体制になりました。人材の採用も大学の判断に委ねられるようになったので、真っ先に国際企画課を作り、英語のスペシャリストの職員2名を採用しました。1名は留学生の対応をしています。今までは国際交流の窓口に行っても英語を話す職員がいなかったため、専門の先生を連れてきて通訳をしてもらうなど大変でした。今では窓口で対応できるため先生方の負担も軽減し、留学生にも喜ばれています。もう1名は国際交流事業の企画、海外の協定校との連絡、折衝などの仕事をしています。これは、法人化のメリットを強く実感している点です。
 また、2007年度には少子化のピークをむかえ、国公私立大学をあげて各大学は学生獲得に向けてしのぎを削ることになるでしょう。このような大学間競争が進む中、国立大学といえども独自性を強く打ち出し、個性を発揮し、特色を鮮明にすることが求められます。本学のような地方で小規模、さらに文系のため予算にも限界がある大学ですと、大変厳しい状況にさらされます。本学は明治44年に開校されており、古い歴史・伝統があります。強調すべき理念は実学重視・人格教育・語学教育の3点です。これらにより、戦後他の高等商業学校が総合大学化する中、本学は唯一単科の商科大学として残りました。その後規模を拡大しながら現在に至っていますが、建学の教育理念そのものは、取り組み方の違いこそあれ現在も引き継がれています。この伝統をさらに発展させていくことが本学の存在感を示すことになると考えています。
 
貴校は戦前に全国5番目の官立高等商業学校として開学されておりますが、「実学重視」とはその歴史に由来しているのですね。
小樽商科大学 学長 秋山義昭 氏 そうです。本学は実業界に役立つ人材の育成と貿易・産業振興の目的で設立されました。そのため当時から商業実践という科目があり、学校内に模擬銀行を作り、生徒が行員や客になって実務を勉強したり、また商品実験という科目では実際に石鹸を作っていました。これが品質もよいと評判で、市民が買いに来たり、学生が町に売りに行ったという話も残っています(笑)。
「実学重視」の理念を発展させたものとして現在特に注目されているものに、ビジネス創造センター(Center for Business Creation:CBC)があります。これは、産学連携を目的としてビジネス相談、共同研究プロジェクトなどを実施しており、現在では非常にユニークな存在として全国的にも知られるようになりました。また、2004年4月には専門職大学院として、MBAを与えるビジネス・スクールを開校しました。同スクールの生徒は大半が社会人であることから、札幌都心にあったサテライトを2005年4月からは駅前に移転し、アクセス面や設備など、すばらしい教育環境が整いました。そこはCBCの拠点にもなっています。商科系大学のメリットを生かし、産学連携に力を入れ、本学の持てる知的財産や教育の成果を還元していきます。
貴校は高等商業学校でありながら、文学・哲学・歴史といった一般教養科目にも力を入れ、人格教育を重視されてきたと伺いました。それはどのような理由からですか?
 初代校長、渡邊龍聖が倫理学専門であったため、品格ある実業人の育成を考えたからです。もうひとつは、本学が当時北海道になかった旧制高校の役割を併せ持つことになった経緯があります。当時は北海道大学が札幌農学校から伝統を引継いだ理系の大学だったので、理系は北大、文系は小樽高商となり、文系の科目に力を入れたのです。
また忘れてはならないのは、戦前本学から伊藤整や小林多喜二らの有名な作家を生んだことです。本学の広い分野で自由に勉学ができる当時のカリキュラムや教育環境そのものが、彼らの才能を開花させたのではないでしょうか。文学者を中心としてさまざまな分野で活躍できる多彩な人材を輩出したのも本学の特徴であり、人格教育の賜物と言えるでしょう。商科系・産学連携・経済活性化への貢献に併せて、文学や芸術のロマンの世界という両輪がうまく調和しながら現在まで発展してきたといえます。
この人格教育の充実のためには、少人数教育によるきめ細かな教育を心がけています。学生数に対する教師の数は非常に恵まれており、ゼミ毎に独立した専用室も用意しています。学生は自由にこれを使用できるので、集まっていろいろな相談をしたり、試験前には自習室としても利用できます。一般教育科目でもゼミを開いています。法人化されると規模の小さい大学は不利だと一般的に言われますが、少人数教育は反対に小規模大学の特権です。教職員と学生はお互いの顔を覚えることができるので、コミュニケーションが図りやすく、距離も近い。ゼミでは多くて10人、少ないと1人という少人数教育を徹底して行うことができます。本学の同窓会は結束が非常に固く母校愛が強いと言われていますが、これも2年連続・少人数ゼミ教育の成果でしょう。
もうひとつの建学当初の理念である語学教育についてですが、歴史的に語学を重んじた背景を教えてください。

小樽商科大学 学長 秋山義昭 氏 本学には昔から「商学に国境なし」という考え方がありました。商業を勉強するには貿易・取引などの観点からも多様な言語を勉強しなければなりません。また、国際的な舞台で活躍できる人材を育成しようという考え方からも、語学教育に力を入れていました。本学は戦前から、当時としては珍しく英語・ドイツ語・フランス語のほか、中国語・ロシア語・スペイン語の6カ国語を教えていました。ネイティブの先生方もたくさんおり、高等商業学校でありながら "北の外国語学校"と呼ばれていたほどです。
 この伝統を生かし、現在では国際交流、語学教育の充実に一層力を注いでいます。まずは外国語教育の環境を整備するために言語センターを設けて、現在では従来の6カ国語に加え朝鮮語と、外国人留学生のための日本語の計8カ国語を教えています。私は異なる文化、背景に触れること自体が教育だと考えています。言語を通じて多様な考え方に触れ、広い視野を身に付けることこそが重要なのです。

そのようにして習得された言語を使って、実際の国際交流はどのように推進していらっしゃるのでしょうか?
 語学教育の強みをいかして国際交流にも力をいれています。在学生数は2500-2600名ほどですが、12カ国17大学と国際交流協定を結んでいます。毎年100名ほどの外国人留学生を受け入れており、国際交流センターが親密に教育・生活支援をし、国際交流会館を宿泊施設として提供しています。協定校からの留学生に対しては、英語による1年間の短期留学プログラムを実施し、経済・商学・経営関係をはじめ、日本語、日本事情といった科目を提供しています。また、留学生一人に必ずボランティアの日本人学生一人をつけ、勉学や生活の支援をするチューター制度もあります。これは日本人学生にも勉強になり留学生にもとても喜ばれている、両者にプラスになるシステムです。学生同士だからいい。日本での様々な手続きや、買い物・風習・してはいけないこと・すべきことなどを教えているようです。留学生の母国に帰ってからの報告書の中にも、チューター制度のことは必ず触れてあります。
今後は受け入れ留学生数を増やすのではなく、質の一層の充実を図りたいと考えています。本学に来た留学生に満足してもらうために、よりきめ細かな指導・教育支援体制を提供し、彼らが母国に帰ってからも本学に良いイメージを持ってもらえるような受け入れ体制を整えていきます。本学の学生にも海外留学にどんどんチャレンジして欲しいと考えています。短期の語学研修なども含め留学するのは圧倒的に女子学生が多いのですが、学生の6割を占める男子学生もぜひ頑張って欲しいですね。
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留学する学生の語学力について、基準などは設けておられますか?
 海外に留学する以上はある程度の語学力を身につけてから行ってもらいたいと考えています。学内で募集するときに選抜しますが、TOEFLテストの点数を定め、レベルに達しない場合は希望者の枠内でも認めていません。留学先で取得してきた科目については単位互換を認めており、留年はしなくてもよいシステムです。大学院入試にもTOEFLテストを取り入れています。
語学教育と人格教育は関わりがあります。読み書きができればよいというのではなく、コミュニケーションができ、違った国の異なる考え方を理解できることが重要なのです。そうすれば反日感情なども理解できるでしょう。私は5月の終わり、日中関係が非常にデリケートな時期に中国の大連にある交流大学の東北財経大学に行きました。中国は初めてでしたが、向こうの大学の方たちと実際に話をして、今まで中国人や街に対して持っていた先入観が払拭されました。帰りに韓国の交流大学に寄り、全く同じ感想を持ちました。国家間、国民同士のわだかまりなどは、そういうところから解決するのでしょう。ぜひ本学で学生同士の交流を深め、理解し合い、催し物なども一緒にやってもらいたいと思います。私は、外国人と日本人の混住寮を作りたいとの夢を持っています。留学生会館は留学生のみで生活しているため、外国人だけでグループを作ってしまいがちです。普段からお互いに生活を共にすれば、相互理解もより深まるでしょう。
 
最後に、卒業生および在校生へのメッセージをお願いします。
小樽商科大学 学長 秋山 義昭 氏 卒業生には、本学の教育理念・培ってきた歴史・伝統をよく理解し、自分なりにそれを発展させ、実現して欲しい。そして広い視野とチャレンジ精神を持っていて欲しいですね。在校生には、この教育環境を最大限に活用して日本全国に、そして世界に羽ばたいていってもらいたい。
本学には "北に一星あり 小なれど その輝光強し" という、戦前の小樽高等商業学校の時から言い伝えられている言葉があります。「小さくともキラリと光る大学」という私のとても好きな言葉で、本学の特徴をよく言い表しています。これからはただ光っているだけではなく、地方の大学として地域振興や経済活性化に寄与し、地方の原動力、希望の星となるべく、さらなる前進を遂げられるよう努力してまいります。
 
ありがとうございました。

(インタビュー:2005年8月2日 TOEFL事業部 部長 高田幸詩朗)
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