TOEFL Mail Magazine Vol.38
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国際教養大学(AIU)学長 中嶋 嶺雄 氏
 
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本シリーズでは、特色ある大学のトップの方々に大局的な視点から大学の運営・指導方針、授業の改善などについてインタビューさせていただいた内容をご紹介しています。

今回は、建学当初から特徴あるカリキュラム内容で注目を集めている、国際教養大学中嶋 嶺雄学長にお話を伺いました。日本の将来をまっすぐに見据え、今までの日本にない新しい大学を創立された中嶋学長は、更なる挑戦を続けていかれることでしょう。

 
 プロフィール
国際教養大学(AIU)学長 中嶋 嶺雄 氏
中嶋 嶺雄(なかじま・みねお)氏(国際教養大学理事長・学長/国際社会学者)
1936年 長野県松本市生まれ。
文学士(東京外国語大学・中国科、1960年)、
国際学修士(東京大学、1965年)、社会学博士(東京大学、1980年)

1977年 東京外国語大学教授
1995〜2001年 東京外国語大学長
1998〜2001年 国立大学協会副会長
現在は、アジア太平洋大学交流機構(UMAP)国際事務総長、文部科学省中央教育審議会委員(大学院部会長・外国語専門部会主査)、財団法人大学セミナー・ハウス理事長などを兼務。
オーストラリア国立大学、パリ政治学院、カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院の客員教授を歴任。平成15年度「正論大賞」受賞。

【著書】

「現代中国論」「中ソ対立と現代」「北京烈烈」(サントリー学芸賞受賞)
「中国の悲劇」「国際関係論」「中国・台湾・香港」「21世紀の大学」
「中国暴発」など多数。

 
国際教養大学は、建学当初から独特の構想やカリキュラムで注目を集めていますが、なぜ既存の大学を改革するのではなく、あえて新たな大学を創設されたのですか?
 私は日ごろから、日本の高等教育・大学のあり方に危機感を持っていました。この国際教養大学は、果たして日本の大学は国際競争力を持ちえているのか、国際社会で活躍できる人材を養成できているのかという批判・反省の上に立って出発しました。日本の高等教育は今までに明治維新直後、第二次世界大戦直後、そして全国立大学が法人化された現在と、3回の歴史的な転換期がありました。この転換期に大学は抜本的に変わらなければなりません。しかし実際は形は変わっても中は古い体質が残っており、なかなか本質的には変われません。そこで実験的に新しい大学を作ることになりました。当初は秋田県内でも多くの議論があり、特に深刻な少子化の時代に新しい大学を作ること自体の意味を問われました。しかし作るからには今までの日本にない大学、そして本当に国際社会のニーズに合った、日本の将来に役立つ大学にしようと決意し、構想を練り続けて実現したのです。
 
国公立大学はみな地理的な名前がついていますが、「国際教養大学」というのはめずらしいですね。

そうですね。本学は地理的な名前をつけていない唯一の公立大学です。地理ではなく、「国際教養」という大学の中味を表に出したかったのです。独立行政法人ですから、財政的にも将来は出来るだけ交付金に頼らないよう自立の道を模索しています。開学早々なのに、このたび文部科学省の現代GP(注)に採択されたことは大きな援助となりました。それにより英語で仕事ができる教育プロジェクトを進めるべく早速活動を始めています。将来的にもう少し余裕ができれば、スポーツ選手の英語教育や専門職大学院を立ち上げるなど、いろいろ挑戦をしてみたいですね。今は白紙に地図を書き、その地図の上に建物を建てているのです。

注:現代GP(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)
文部科学省が行っているプログラム。各種審議会からの提言等、社会的要請の強い政策課題に対応したテーマ設定を行い、各大学等から応募された取組の中から、特に優れた教育プロジェクト(取組)を選定し、財政支援を行うことで、高等教育の活性化が促進されることを目的とする。

 
国際教養大学は、新設大学の中で高校から期待される大学ランキングで第一位と伺いました。他大学との違いはどこにあるとお考えですか?
 一番の違いはカリキュラムだと思います。大学は授業内容が勝負ですので、カリキュラム作りには力を入れました。今の日本の大学はみな、同じようなカリキュラムを提供していて特徴がありません。たとえば日本では安全保障などはタブーですが、本学ではGlobal Studiesの中で予防外交論などを積極的に扱っていこうと考えています。人口学(demography)も日本の大学ではほとんどやっていないのですが、本学ではやります。このような教養教育で他大学との差別化を図っています。本学がランキングでトップだということですが、高校からこれだけ注目されているのはとてもありがたいことです。
 これからは生き残る大学、脱落していく大学が出てくるでしょう。私学は既に定員割れをしている大学もあります。その中で例えば早稲田の国際教養学部や立命館のAPUなどは、注目すべきですね。そういうところから日本の大学全体が国際的競争力を持つようになって欲しいと願っています。
 
一般的に国公立大学では、教授会の権限が強く意思決定システムが滞りがちだと伺いますが、中嶋学長がそのようなリーダーシップを発揮できる秘訣はなんですか?
国際教養大学(AIU)学長 中嶋 嶺雄 氏 法人化したおかげで、教員のみを過保護にする教育公務員特例法が適用されなくなり、教授会の過剰な権限がなくなったことが大きいでしょう。本学は公立大学で初めての独立行政法人ですからね。大学の経営面や意思決定面は非常に重要です。確かに既存の大学では教官が小さな既得権の上に安住し、それを一生懸命保とうとするため、大学全体のビジョンが見えません。意思決定も皆の賛成が必要なので、中味も薄くなりタイミングも遅れます。学長のリーダーシップの貫徹も人事権もありませんでした。それに比べ、本学の全教職員は3年間の任期制で、評価によって毎年給料も変わります。教授会は学期始めと終わりの2回のみで、経営は大学経営会議、教学は教育研究会議が教授会の付託を受けて行っています。
 
入学試験に関しても教授会は関与しないのですか?
 入学試験はすべてAdmission Office(AO)が決定しており、教授会は関与しません。私もAOの担当者と一緒に予備校や高校をまわったりもします。教授会ではなく入試のプロが行っているため、TOEFLテストを導入したり、国公立大学の分離・分割方式を離脱したりなど、思い切ったユニークな入試が実現しました。
 今年の入試は0.5点で学生の明暗が決まったほど競争が激しいものでした。もちろんその0.5点の判断は我々も正確にはできません。入試とはいえ盲点がありますから、それを少しでも緩和するために、例えば他の合格者に比べると英語がずば抜けてできる学生を暫定的にProvisional Studentとして入学させています。実際には正規学生との差は全くありませんが、学校教育法上の規定では科目等履修生になりますので、入学金は頂戴しておりません。このシステムは私がAdmission Officeの場ですぐに採用を決定しました。そのシステムで本学に在籍している14人のProvisional Studentの成績には、私の他にも学生部長、教科の先生やEAPの先生など皆が注目していましたが、全員が期待に沿って平均点を上まわり、EAPもクリアしたので2年次に晴れて正規の学生になりました。入学金もそのときに初めてもらいました。
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それでは、特徴的な授業内容について伺います。まず、全授業を英語で行うことを決定した理由を教えて下さい。
 英語が国際コミュニケーションのツールとして大きな意味を持つことは今や疑いようのない事実です。しかしながら、仕事で英語を使える日本の学生は現在全体の0.25%、ペーパー版TOEFLテスト(TOEFL-PBT)で600点以上のスコアをとる大学卒業者は1000人ほどしかいない状況です。これではとても国際社会で活躍する人材を育成することはできない。議論の中には全授業を英語にする必要はないという意見もありましたが、私は一切の例外を認めませんでした。たとえ中国語の授業であっても英語で行います。アメリカで中国語を学ぶようなものですね。つまり英語という普遍的なコミュニケーションのツールを使って専門を学ぶのです。日本語教育は留学生が対象なので、そこでは例外的に日本語を使っていますが、日本語教師も皆英語で授業ができることを前提に採用しています。
 
次に学校生活についてですが、新入生全員に寮生活を義務付けているという点も珍しいですね。
 そうですね。キャンパスは森に囲まれた自然の中で勉強できる素晴らしい雰囲気で、勉強する環境としてとてもよいと思います。図書館も24時間開館しています。寮には多くの留学生もおり、外国に行く前から異文化交流もできます。
 
全学生に留学を義務付けている点について伺います。TOEFLテストを積極的にご活用されていると伺いましたが、なぜ語学力の基準としてTOEFLテストを選ばれたのですか?
 TOEFLテストは英語能力を測る国際的な基準です。日本の大学は日本人が日本人に日本語で教えますが、本来大学は民族や人種全てを超えて共通の、学問を基盤としたコミュニティーです。そのためにも本学では国際基準が必要なのです。
 留学のためには、必ずTOEFL-PBTで550点をクリアしなければなりません。また、卒業時にはTOEFL-PBTで600点を全学生の卒業要件として課しています。まだ2年目ですが、今の状況を見るとおそらく全員がクリアすると期待しています。TOEFLテストを利用して、徹底的に語学力をつけさせてから留学させるといった具合です。一年間留学する間に、我々は30単位前後を留学先で取得して単位互換することを期待しています。そうすると留年しなくてもすみますが、外国で授業を受け、きちんと単位を持って帰ってくるためにはかなりの語学力が必要となります。語学力がなければ留学をしても単位を取ることはできません。そのためにTOEFLテストの条件をクリアする必要があるのです。ですから、本学では留学を単に義務付けているだけではなく、実際に単位を取ってくる留学ですから他大学に比べて留学がより大きな意味を持ってきますね。
 
国際教養大学のカリキュラムも特徴的で、全体として学生に英語力、教養、そして専門性を身につけさせるように組まれていますよね。その中で留学との整合性はどのようにとられているのですか?
 カリキュラムは事前に予想される留学先の授業内容と綿密にすり合わされています。例えばGlobal Studiesの中国を専攻する学生の場合、中国の映像芸術も学びます。それは、今中国の映画が注目されており、我々の提携校である南開大学(天津市)にもある授業なのでこちらでも準備するのです。確かにカリキュラム作りはとても面倒になりますが、結果的にとても豊富な内容になっています。
 
すると、中国のように英語圏でない国に留学する学生は、英語のほかにその国の言語も勉強する必要があり、大変ですね。
 そうです。ですから学生は遊んでばかりはいられません。入るのは難しいが後は遊んでいても卒業できる従来の日本の大学とは違い、アメリカ型の大学に近づきつつあります。今一番考えるべきことは、勉強をしすぎている学生をいかに休息させるかですね(笑)。精神的なケアは、心理学のカウンセラーの先生が行っています。
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それでは、具体的なカリキュラムの内容について伺います。まずは、特徴的な英語集中プログラム(EAP:English for Academic Purposes)について教えて下さい。
国際教養大学(AIU)学長 中嶋 嶺雄 氏 1年次はまずEAPにおいて、英語の授業についていくための学術英語のスキルを学びます。このEAP1,2,3をクリアしないとBasic Studiesに進めないので、まず1年次にEAPをクリアしてもらいます。入学直後にはTOEFL-ITP(団体向けTOEFLテスト)を実施して能力別にクラス編成をしていますので、能力に応じた教育を提供することができます。たとえば既に600点近い点数を持っている学生は、始めからEAP 3に入ります。そういう学生はBasic Studiesに早くから入っていくシステムになっています。本学は通常の大学の学年とは違い、自由に単位を取ることができます。EAPは1年次に取得が義務付けられていますが、あとは卒業単位を早く取得してもゆっくりでも良いのです。
 EAPでは7.5週ごとにTOEFL-ITPを基準にクラス替えをします。TOEFLテストにもListening、Reading、Grammarなどの要素があり、学生それぞれの苦手分野も違うため、このクラス分けに差別感はありません。ここに来て初めて外国人と接する学生でListeningがとても弱い場合には、EAP 1から入った方がよいですし、帰国生などでSpeaking, ListeningはできるがGrammarが弱い人はそこを強化すればよいのです。
 
EAPの中で、特に重要視しているポイントはありますか?
 特にCompositionには重点を置いています。Computer Skillを含むWritingの練習もします。また、同様にListeningも重要です。Listeningができれば話すこともでき、本当の英語力につながります。Listening力を上げるための設備としてSelf Access Centerという、DVDやテレビを使って興味のあることや不得意なことを自主学習できる場所があります。そこには先生も必ずいます。これも彼らの英語力をあげている要因でしょう。現在は全ての外国のニュースメディアとつなぎ、ジャーナリストになりたい人などはCNNやBBCなどをいつも聞くことができるよう調整をしています。
 また、少人数教育もポイントの一つです。言語教育では、一人当たりの発言回数を増やすためにも少人数教育は必須です。単に日常会話だけではなく、中身のある英語表現ができるように、密度の濃い授業を行っています。また、時間も50分授業を週3回行う区切りになっています。50分というのは、緊張感を保つにはちょうどよい長さです。
 
カリキュラムの中で、専門の勉強はどのようにして行われるのですか?
 専門の勉強は、当面Global StudiesとGlobal Businessに分かれています。その中間では、私自身がGlobal StudiesのIntroductionとして、国際社会を理解するKeywordとKey Conceptを教えます。Global Studiesという授業は他でもあまり行われていないためテキストもないので、学生に講義しながら毎週毎週作りつつ行っています。
 
高レベルの講師陣の理由は、どのような点にありますか?
 まず人事ですね。たとえば中国語の先生でも、私が実際に授業を受けてみて素晴らしい教え方をしている人をリクルートしてきます。一般的にはコネなどで決まりますが、本学の場合は黒い幕をはり、こちら側で採点してオーケストラの楽団員を選ぶような透明な競争人事をしています。どんなに偉い人でも面接や英語力のテストを受けていただき、模擬授業も見た上で最終判断をします。そうでないと大学の質はどんどん低下していくでしょう。
 また、大学にとってはAdministrationも重要です。日本ではAdministration(事務局)の方たちの地位は教員より下ですが、本学では両輪と位置づけているため、モチベーションも高く非常に優秀です。そのかわり、教員と同じく評価によって給料も変わります。今年も20%以上増えた人も、逆に減った人もいました。
 
まだ2年目ということですが、今後の課題は何ですか?
 本学の学生は、日常英会話はできても、授業に出てくる日本語の専門用語をしっかりと理解していません。英語はできるが日本語ができないなどとならないよう、きちんと教える必要があります。日本語表現スキルを履修する学生も多いのですが、日本語の古典などの読書を取り入れるなど、英語力と同時に国語力も重視することが今後の課題ですね。
それでも決して一般の大学生よりできないわけではありません。先日大学で行っていたワークショップで、学生が一生懸命英語で表現しているのです。イラク問題やブッシュ大統領の選挙のこと、男女の性差や家庭内暴力など専門用語が含まれていても、活発に議論ができていてびっくりしました。ですから学生をいかに教育するかが重要なのです。今後も引き続き、学長自ら学生のペーパーや答案をチェックしたりなど、きめ細かい教育を行っていきます。
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在校生および次の世代へのメッセージをお願いします。
国際教養大学(AIU)学長 中嶋 嶺雄 氏 国際社会で活躍する人たちはまず、コミュニケーションのツールとしての英語を徹底的に活用して欲しいです。英語ともう一つ、できればアジアの言葉も習得して欲しい。母語と英語プラスもう一つの外国語という"三言語主義"です。それによってはじめて国際社会に広がりもでます。口先だけではなく、教養と専門的な知識を身に付けて初めて、真の国際人が生まれてくるのではないでしょうか。
最近見たデータでは、アジアの比較でIdentityの強さ、自己主張、自信などは全て中国が一番で韓国が続き、日本は一番下の方にいました。あまり自分を出さないことが日本の美徳なのかもしれませんが、これからはそういう時代ではありません。自分だけが突っ張るという意味ではなく、成熟した国家として国際社会できちんと自己表現をして欲しい。
 
確かに、今でも国際会議などでは、日本の代表者はなかなか発言をしませんよね。
 そうなんです。シンガポール、台湾、韓国など東南アジアの人たちは英語に訛りがあり、文法も発音もなっていないけれど活発に発言をしている中で、日本人はとても静かです。いつも黙っている。やはりコミュニケーションのツールとしての英語力の問題ですね。それが日本人に一番欠けています。お金を出すだけではもう国際社会で通用しない時代になってきています。本学で学んだ学生には、どんどん国際的な場で発言をしていって欲しいのです。
今のところ学生のパフォーマンスはとても良いですが、卒業後の活躍を見て初めて大学の評価は決まります。これからが真剣勝負です。
ありがとうございました。

(インタビュー:2005年5月16日 TOEFL事業部 部長 高田幸詩朗)
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