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For Lifelong English

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様々な世代の人々が様々な場で、生涯を通して何らかの形で英語にかかわって仕事をしています。英語は人それぞれ、その場その場で違います。このシリーズでは、英語を使って活躍する方にお話を聞き、その人の生活にどう英語が根付いているかを皆さんにご紹介し、英語の魅力、生涯にわたる楽しさをお伝えしていきます。英語はこんなに楽しいもの、英語は一生つきあえるもの。ぜひ英語を好きになってください。

第44回 For Lifelong English
– 嘉悦大学 学長 加藤寛先生に大学改革のお話を聞く その3

加藤 寛先生

加藤 寛先生プロフィール
大正15年、岩手県生まれ。
経済政策の理論と実践における日本のリーダーとして、国鉄を始めとする3公社の民営化に携わるとともに、10年にわたり政府税制調査会会長を務める。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス開設準備に関わり、1990年初代総合政策学部学部長に。
その後1995年から12年間、千葉商科大学学長を務め、両大学において“カトカン”と親しまれ、大学改革を進めた。
2008年4月、嘉悦大学学長に就任。

鈴木 佑治(聞き手)

聞き手:鈴木 佑治先生
立命館大学生命科学部生命情報学科教授
慶應義塾大学名誉教授

日本語でも夢を語れない学生は英語でも語れない

加藤寛先生:
今の学生は日本語でも自分のことを語れないから本当にどうかと思いますけれども。そこで嘉悦大学では、「カタリバ」というNPOの教育を取り入れたんですよ。これは慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(以下SFC)を卒業した学生が作った団体ですが、その代表の今村さんが今「TIME」誌などに取り上げられて、世界的にも有名になっています。このカタリバとは何かというと、日本語でいいからしゃべろうというグループです。嘉悦大学に入ってきた人達は、最初は自分は夢なんて語れないという。そこで、カタリバにみんなが集まって上級生の話を聞いたり、それに反論したりなんかしているうちに、しゃべれるようになっていくというやり方です。このやり方を、大学では嘉悦大学が一番初めに初年次教育に取り入れ、文部科学省の中央教育審議会が嘉悦大学の初年時教育は素晴らしいと紹介したくらいなんですね。自分は夢など語れないとばかにしていた学生が、しゃべり始めたら夢がだんだんできてきて、今何をやりたいかと聞くと、自分は将来愛情をもって人に接するような警官になりたいと話すようになった。今2年生ですが、警察官の試験に合格しようと一生懸命勉強しています。
鈴木先生は、これを英語教育でされたんですよね。みんなが自分の知っている言葉を使って自分を表現する、ということをやらせる。これが大切ですね。でも日本の教育はこれをやらせないようにするんですよ。だからみんな英語がいやになって、やらなくるということだと思うんですね。だから鈴木先生がしていることは、これは教育全てに通じるものだと感じています。

鈴木佑治先生:
ありがとうございます。これは、SFCに始まり、千葉商科大学でも立命館大学でも採用した方法ですが、英語の最初の1時間目では、まず人間関係を作るようにしています。日本語でも話したことがないクラスメートが、人間関係もないままに英語で話せるはずがありません。だからまずはみんなで日本語で思いっきり話します。するとお互いに知り合うようになり、出身地、出身高校、クラブ活動、アルバイト、授業などについて意見交換をするようになります。それを「英語で言ってごらん」というと中学校や高等学校で習った表現でいとも簡単にこなします。その輪が広がれば、やがて、外国の人たちも入ってくるようになり、自然に英語で世界中の人たちとコミュニケーションする環境が整います。SFCでも千葉商科大でもそうでしたし、今の立命館大でもそうです。
でもこの方法は、SFCの開設初年度にはまだ実践していませんでした。実は加藤先生からヒントを得たんですよ。加藤先生がいらっしゃるところには笑いが絶えず、先生がいろんな人に話題を振ると、いろんな話ができたんですね。私は教員ですが、その私でも加藤先生とはそれまでお話しする機会もなかったですし、緊張していましたけれど、先生のおかげでだんだん話せるようになりましたし、ご一緒していた他の初対面に近い先生方ともそこで話すようになりました。やっぱり人間関係が非常に重要だと気付きました。もともとは先生からヒントを得ました。
加藤寛先生:
最初は怖い顔をしている官僚や先生方も、話していると、だんだん口がふっと笑うようになって、みんながしゃべるようになるね。
鈴木佑治先生:
学生も同じで、みんな自分と同じ普通の人間なんだと分かる頃から始まると、メッセージが湧いてきて英語で発信していくんですよね。大学によってカラーはありますし、確かにはじめは英語のクオリティには差があるかもしれませんが、そんなことはどうでもよくなります。それぞれ面白い、インパクトある発表をしてくれますから、世界中に友達ができてみんな英語を話すようになります。

嘉悦大学での新しい取り組み

鈴木佑治先生:
嘉悦大学ではカタリバのほかにも、新しい英語教育を今年スタートさせたと伺っておりますが。
加藤寛先生:
初年次教育のカタリバが評判良く、次は語学だということで、SFC卒業生の嘉悦先生が頑張っています。
鈴木佑治先生:
嘉悦先生はSFCの1期生で、SFC時代は私の授業もとり、アドバイザー・グループのメンバーのお一人でもありました。SFCの大学院を修了してこちらの嘉悦大学で教鞭をとり活躍されています。嘉悦先生、 その新しい授業について簡単に説明していただけますか?
嘉悦先生:
この授業は、今年4月からスタートさせた、英語の単位を落とした学生のための救済策です。スカイプを使って、本学とフィリピンをつないで授業をしています。これはそもそもは商用のサービスで、やはりSFC卒業生がスタートした事業です。日本側の英語学習という目的だけでなく、フィリピンでは大学を卒業してもなかなか就職先がないため、フィリピンのエンパワーメントといった側面もあります。嘉悦大学ではこれに目をつけ、授業に取り入れることにしました。スカイプをつなぐ相手は大学を出て教育を受けた、英語もパーフェクトな方達です。こちらはそもそも単位を落とした学生達ですから、できは悪いはずなんですけれども、引き出してくれるのがうまいので、とても楽しそうに話しています。この授業を行う教室はもちろん無線LANで、プロジェクター3台で教室の前後に3人の映像が映し出せるようになっています。まだまだスタートしたばかりで、英語で情報発信をするには長い距離がありそうな気はしますが、自己紹介から始まって、みな楽しく話しています。
鈴木佑治先生:
まさに私の目指すところと同じですね。外国にいる人達とは簡単には会えませんので、まず、オンラインを使ってお互いの文化や言語を交換する。最終的にはface-to-faceで会えるようにしてあげるのが、私の描く未来図です。学生達と外国の友達が行ったり来たりできるようにしてあげたいですね。またその授業の成果について、後日聞かせてください。

TOEFLメールマガジン読者へのメッセージ

鈴木佑治先生:
それでは加藤先生、最後に、TOEFLメールマガジンの読者に向けて、英語の重要性、どういう英語が必要かということをお話いただけますでしょうか。
加藤寛先生:
自分の言葉でしゃべる。これが一番重要ですよね。これができるようになったら、外国に行っても恐れなくなります。今日本の若い人がわりと平気で向こうの方と溶け合うんですよね、それはやっぱり自分で自分のことを言えるようになってきている、ということが大きな特色だと思います。ぜひそれを続けていって欲しい。
二番目に、TOEFLテストを勉強していると、英語だけじゃなくものの考え方、表現の仕方など、いろんなことを勉強できちゃう。それを教えてもらえる。これがものすごく大きいですね。こんな便利なものはないと思います。ぜひ頑張って勉強してください。 以上

鈴木佑治先生の感想

1990年にSFCが開設した時に、加藤先生は60代の半ばを過ぎた頃であったと思います。いみじくもこの私もちょうどその年に差し掛かりました。先生は、当時あまり聞きなれなかった名称の学部の立ち上げの陣頭指揮を執られていらっしゃいました。私たち凡人にはとてもできることではありません。当時の先生の年に差しかかった今、その感を一層強めています。そんな激務の中で先生の周りは明るく絶えず笑い声が溢れていました。嘉悦先生はその時18才、加藤先生の総合政策学の授業に足早に急ぐ姿が目に浮かびます。加藤先生を嘉悦大学の学長にお迎えして、色々な素晴らしい試みをしていますが、嘉悦先生自身英語教育に携わり、学生さんが英語で話せる機会を工夫されています。私が加藤先生から学んだことはみんなが楽しくコミュニケーションできる場づくりです。嘉悦先生もあれから20余年、オンラインで交流する学生さんを見させていただきましたが、英語でカタリバを作ろうとする熱意に満ちていました。これからが楽しみです。

–「嘉悦大学 学長 加藤寛先生に大学改革のお話を聞く」–全3回
99号– 「嘉悦大学 学長 加藤寛先生に大学改革のお話を聞く」 その1
100号– 「嘉悦大学 学長 加藤寛先生に大学改革のお話を聞く」 その2

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