For Lifelong English

  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授

第125回 Writing Style Guides-アメリカの大学・大学院におけるEssays, Papers, Theses, DissertationsなどのWritingに必須!

アメリカの大学と大学院においては、essays(written examinations), papers, reports, theses(MA/MS), dissertations(Ph.D.)などの執筆は、writing style guidesに沿って書くことが求められます。大学1、2年次の教養課程(core curriculum)でbasic writing style guidesを身につけ、3、4年次の専門課程で専門分野別writing style guidesの基本を学び、大学院修士課程から博士課程で完結します。博士論文(Ph.D. dissertations)は原則、指定されたwriting style guidesに沿っていなければ受理されません。(*1)

日本でこうした取り組みをしている大学や大学院はあまり見かけません。今や多くの分野の国際学会誌は英語で書かれているのに、英語のwriting style guidesに至っては学生の多くがその存在さえ知らずに卒業してしまっています。かく言う筆者自身、日本で英語英文学を専攻しながら、学部論文(1966年提出、英語)と修士論文(1968年提出、日本語)は自己流のスタイルで執筆しました。(*2)

ですから、アメリカに留学し最初に履修した英文学の授業で、筆記試験でのessay writingとpapersの作成に大変戸惑いました。アメリカ留学を考えている読者は、今のうちにwriting style guidesを入手してしっかり目を通しておくべきです。手始めに、インターネットで“writing style guides”と入力し、関連サイトを見ることから始めてみましょう。詳細な情報については現物を購入しなければなりません。応募時に提出する志望事由(statement)を書く際にも役立ちます。

“List of Style Guides”と称するWikipediaのサイトが、主要なwriting style guidesにつき非常によくまとめているので、これに沿って話を進めます。開いてみましょう。

List of Style Guides

まず、writing style guides(manuals)とは何かを述べています。一般的に、essays, articles, reports, papers, theses, dissertationsなどdocumentsのスタイルおよびフォーマットに共通性を持たせることを目的にしたガイドラインで、general useなものとspecialized useなものに大別され、後者は分野・業界別に細分されhouse styleと呼ばれているとあります。

英語のwriting style guidesを見ると、オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカなどの英語圏の国別のものがリストされていますね。本稿では、アメリカのwriting style guidesを取り上げ、特に、大学と大学院で必要と思えるものに焦点を当てますが、各種法人とジャーナリズムで一般向けマス・コミュニケーション用のフォーマットとしてよく使われているのが、

The Associated Press (AP) Stylebook

The Elements of Style(*3)

の2つです。後者が前者を補い、general use writing用のwriting style guidesとしてセットで頻繁に使われています。留学中の授業以外の活動に役立つでしょうから目を通しておくとよいでしょう。

分野・業界別special useのwriting style guidesについては、このサイトは、“For legal documents”,“For academic papers”,“For journalism”, “For electronic publishing”,“For business”,“For the computer industry (software and hardware)”,“Editorial style guides on preparing a manuscripts for publication”の7項目に分けて紹介しています。勿論、これら以外にも沢山あります。上述したmedical writing stylesもありませんし、日常生活に関わる公的行政(public administration)もありません。Wikipediaですから、気がついた人たちが欠けている情報を補充していくでしょうことでしょう。

本稿では、留学中に要される、“For academic papers”にリストされている4つのwriting style guidesに注視します。最初にリストされている

The Chicago Manual of Style(1906, The University of Chicago Press)別称“Chicago

は、初版(1906年)から17版(2016年)も数え、最も古く、かつ幅広く使用されています。特に社会科学系と歴史学系で使われ、アメリカのみか世界中で多くの出版社が採用してきたようです。次にリストされている

A Manual for Writers of Research Papers, Theses, and Dissertations, Chicago Style for Students and Researchers (1937, Kate L. Turabian) 別称 “Turabian

は、出版に適用されるChicago Manualを、research papers, theses, dissertations用に特化して開発されたもので、これからアメリカの大学や大学院に留学を考えている読者には必見です。2018年の第9版が最新版です。筆者自身もPh.D. dissertation(1978,言語学)の執筆に際して指定されたのが“Turabian”でした。3番目にリストされている

MLA Handbook for Writers of Research Papers (1977, Joseph Gibaldi) 別称“MLA

(MLA Handbook for Writers of Research Papers, Fifth Edition)<
▲ (MLA Handbook for Writers of Research Papers, Fifth Edition)

は、アメリカ最大の人文科学、英文学関係の学術学会Modern Language Association (MLA)が発行するwriting style guideで、前身はThe MLA Sheet(1951)で、2008年の第8版が最新版です。アメリカの大学では、人文科学系(humanities, arts and science)全般、特に文学系の専攻で採用されています。アメリカの1、2年のcore curriculumは、理系文系に関わらず人文科学系の授業が多く含まれており、MLA Handbookは1、2年次のFreshman EnglishやSophomore Englishなどのコースで手ほどきを受けるでしょう。高校生にも推奨されているようです。アメリカ留学を考えている読者には必見です。4番目にリストされている

Publication Manual of the American Psychological Association(1923, The American Psychological Association) 別称“APA

は、The American Psychological Association(APA)が発行するwriting style guideです。Social sciences系の学術論文・書籍に幅広く使われ、他の多くの科学分野でも多少の変更を加えて使用されています。最新版は2009年発行の第6版で、現在の規範で偏見を助長すると思える表現を極力減らすガイドライン(*4)などを示しています。

このWikipediaの “List of Style Guides”では、“For academic papers”のwriting style guidesとして以上の4つを挙げていますが、これら以外にも沢山あります。特に大学院留学を考えている読者は、自分の分野では何が使われているかをしっかり調べておく必要があります。例えば、医学(medicine/medical science)では、代表的なのがAmerican Medical Association (AMA)のAMA Manual of Styleです。

AMA Manual of Style

医学の研究分野は細分化されており、それぞれが推奨するwriting manualがあるかもしれません。例えば、眼科学(ophthalmology)では、

Ophthalmology Procedures Manual

などが推奨されており、学術論文を寄稿する場合のガイドラインが示されています。要は、自分が専攻する分野ではどのwriting style guidesが推奨されているかを事前に知っておくべきです。

学術雑誌などはそれぞれが推奨するhouse style guidesがあります。例えば、Science誌やNature誌に寄稿する場合は、

Preparing Your Manuscript and Figures – Science

Formatting Guide | Nature

などのオンラインstyle guidesに沿って書かなければなりません。筆者の専攻を例にとると、上述のModern Language Associationは、PMLAProfessionを発行していますが、両方ともMLA Style Manual(“prepared in accordance with MLA style”)と指定しています。しかし、アメリカ言語学会The Linguistic Society of Americaの機関誌Languageでは様々な言語を扱うので、以下のようなhouse styleを指定しています。

Language Style Sheet

For academic purposesのwriting stylesも含め、全てのwriting stylesに共通して、electronic publication(EPUB)がもたらす変化に合わせた改変が目立ちます。例えば、APA Styleを見ると、次のような但し書きが付いています。下線部に注意して読んでみましょう。

The sixth edition offers new and expanded instruction on publication ethics, statistics, journal article reporting standards, electronic reference formats, and the construction of tables and figures. The sixth edition has been revised and updated to include

new ethics guidance on such topics as determining authorship and terms of collaboration, duplicate publication, plagiarism and self-plagiarism, disguising of participants, validity of instrumentation, and making data available to others for verification;

•new journal article reporting standards to help readers report empirical research with clarity and precision;

•simplified APA heading style to make it more conducive to electronic publication;

•updated guidelines for reducing bias in language to reflect current practices and preferences, including a new section on presenting historical language that is inappropriate by present standards;

•new guidelines for reporting inferential statistics and a significantly revised table of statistical abbreviations

•new instruction on using supplemental files containing lengthy data sets and other media;

•significantly expanded content on the electronic presentation of data to help readers understand the purpose of each kind of display and choose the best match for communicating the results of the investigation, with new examples for a variety of data displays, including electrophysiological and biological data;

•consolidated information on all aspects of reference citations, with an expanded discussion of electronic sources emphasizing the role of the digital object identifier(DOI)as a reliable way to locate information; and

•expanded discussion of the publication process, including the function and process of peer review; a discussion of ethical, legal, and policy requirements in publication; and guidelines on working with the publisher while the article is in press.

APA Styleより抜粋)

下線部の表現を拾うと、従来の紙メディア出版をベースにしたwriting stylesから、e-publishingをベースにしたwriting stylesに大きく舵を切っていることが分かります。オンライン化によりcollaborativeな研究スタイルが促進されると、当然そのauthorshipとterms(条項)の規定が必要になります。また、多メディアのビッグデータやDOI(the digital object identifier)などの使用が可能になります。

そうした良いことだけではなくe-publishingにも弱点があります。簡単な操作で、duplication(重版)、plagiarism(盗作)、disguising of participants(研究参加者に見せかけること)などの違法行為ができてしまうことです。よってこれを防ぐ指針が必要になります。また、これまで見過ごされてきた表現方法には、グローバル社会では偏った不適切とされるものがあり、それらは現状に合うよう正さなければなりません。オンライン化がもたらす良い面を助長し、悪い面を予防し是正する次世代の表現manualsに脱皮する姿勢が見て取れます。(*5)

こうして伝統的なwriting style guidesが、electronic publishingを視野に入れた調整を行なっている中、“For the computer industry”の項目にあるIT関係のwriting style guidesは、まさにelectronic publishingに特化したものと言えるでしょう。以下のようなものがありますが、いずれこれらが主流になるかもしれません。

Apple Style Guide

Google Developer Documentation Style Guide

Microsoft Writing Style Guide

筆者は本稿第113回で、アメリカの大学のwriting centers、writing servicesについて触れました。(*6)これらの組織が力を入れているのは、まさに、大学と大学院のコースで要するwriting style guidesの習得を徹底させることなのです。例えばインターネットで“Turabian Style Guide”と入力すると、それを推奨している以下のような大学のwriting centers、writing servicesのサイトが出てきます。

Chicago/Turabian Documentation Style-UW Madison Writing Center

Turabian Footnote/Endnote- Georgetown University Library”(*7)

他のwriting style guidesについてもチェックしてみてください。大学や大学院のコースがいかにこれらのwriting style guidesを重視しているかが分かります。筆者の訪問したwriting centersでは、サービスを受けていた留学生の多くが、その基本的知識に欠けていたという印象を持ちました。(*8)

アメリカの大学はこの点一つをとっても非常に進んでいます。アメリカ留学を考えている読者は、できるだけ早い時期に志望校の志望学部が推奨するwriting style guideに目を通すべきです。オンラインで簡単な知識は得られます。筆者らの時代はそれさえありませんでしたから、本当に便利な時代になりましたね。TOEFL iBT® テストのWriting Sectionにも大いに役立つと思います。自学自習の精神で頑張りましょう。

(2018年11月13日記)

 

(*1)筆者が在籍した当時のGeorgetown UniversityのSchool of Languages and Linguisticsでは、 Ph.D. dissertation執筆に当たり“Turabian”が指定されました。かなり厳しくチェックされました。
(*2)1960年代でしたが、授業で手ほどきを受けた記憶がありません。
(*3)高校生と大学生および社会人の英語の文法、語彙、表現などの学習に有効です。
(*4)“Updated guidelines for reducing bias in language to reflect current practices and preferences, including a new section on presenting historical language that is inappropriate by present standards”(https://www.apastyle.org/products/4200067より抜粋)
(*5)“List of Style Guides”Wikipediaの“For the computer industry”にリストされているApple Style Guide,Google Developer Document Style Guide, Microsoft Writing Style Guide
(*6)第113回「Linking Words を使えるようにしよう―TOEFL iBTテスト、SAT、GREなどに備えて」の(*4)を参照してください。詳細は、『グローバル社会を生きるための英語授業』(鈴木佑治)に記してあります。
(*7)大学によってはwriting centers/writing servicesは、libraryの中にあり、library活動の一環として行われています。
(*8)筆者は、本稿第113回で触れた通り、アメリカの大学のwriting serviceをオンラインで受けられるように模索しました。その理由の1つはwriting style guidesを重視し、留学生など未習者に懇切丁寧に教えていたからです。時間切れで断念せざるを得ませんでしたが、日本の大学は、日本語と英語のwriting style guidesを早急にカリキュラム化しなければなりません。いずれも、日本語と英語の教員と専門分野の教員がcollaborationしなければ実現しないでしょう。オンラインでできます。青写真は、上記(*6)の『グローバル社会を生きるための英語授業』に記しました。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。