s

美容師インタビュー

  • print

美容師としてのスキルを活かしながら「ヘアカットボランティア+ホームステイ」というスタイルで10カ国を渡り歩き、現在も旅を続けています。


高橋 明由武 さん
(国際理容美容専門学校 広報課勤務)

海外体験プログラムにご興味をお持ちのみなさんが渡航先で行いたいことの1つに、「現地の人と交流すること」があるのではないでしょうか? 渡航先によっては、「英語にも不安があるのに、現地の言葉なんて挨拶すら知らない…」ということもありますよね!
都内美容学校にお勤めで、お休みを利用して海外で「無料でヘアカットをする」というボランティアを個人的に行っていらっしゃる高橋さんに、「言葉の通じない海外で現地の人々と交流するにあたってのコツ」を伺いました。英語もあまり得意ではないそうですが、これまでにヨーロッパ、アジア等10か国でヘアカットボランティアをされたそうです。

暮らしに根ざしたその国を見たい

なぜ「観光」ではなく、「ヘアカットボランティア」なのでしょうか?

「世界ウルルン滞在記」(以前、TBS系列で放送されていた番組で、芸能人が海外でホームステイを通してその国の文化・習慣を体験する様子をドキュメンタリー放送した番組)の旅スタイルに憧れ、自分でも行ってみたくて始めました。観光よりも、暮らしに根ざしたその国を見たいんです。現地の生活・文化を知りたい、現地の人のことを知りたい、という強い想いから旅人アプリを利用し「ヘアカットボランティア+ホームステイ」という形で旅をするようになりました。
4年前に始め、これまでに、イタリア・フランス・バチカン市国・フィリピン・タイ・台湾・グアム・香港・ロシア・ベトナムを渡り歩きました。
このスタイルの良いところは、「一瞬ではない出会い」があることです。ヘアカットでの出会いから始まり、同じところに泊まり、同じものを食べるという「生活」を通して2~3日ほど一緒に過ごすことができるので、より深く関わることができます。これまで出会った方とは、今もFacebookなどでやりとりが続いています!

高橋さん写真

プライドは捨て、あらゆる手段を使ってコミュニケ―ション!

言葉が通じない国で、どのようにローカルの方とコミュニケーションを取るのでしょうか?

僕は英語もあまり話せません。ジェスチャーでもある程度は伝わりますし、語学力をフル稼働させて自分の知り得る単語を並べたり、聞き取れた単語から相手の言わんとすることを推察したり、翻訳アプリに助けてもらったり、で、かなりのコミュニケーションは図れると思います。
翻訳アプリは結構重宝していて、相手の言っていることを理解したい場合には、「文章で打って」と依頼して、コミュニケーションを図ることもあります。訳される日本語が変な文章になっていることから考えると、僕が翻訳アプリを使って伝えたことも滅茶苦茶なのだとは思いますが、それでも何が言いたいのかはお互い伝わります。100%の正しさは求めません。
正しい言葉を話そう、というプライドは捨てた方がよいと思います。
「言葉が分からない」という危機感を持って渡航するからこそ、却って、現地で調べた単語なり表現なりは身につくような気がします。繰り返しコミュニケーションを重ねると、「大体こんなことかな?」と分かってくると思いますよ。
また、みんながワイワイと楽しく集まるような場所では、言葉が話せなくても、踊ったり、自分の得意なことを披露したりして、馴染むことはできると思います。

言葉ができるかどうか、ではなく一緒にいて楽しいか、「人としての魅力」ですね。

言葉も文化も違う人々とのコミュニケーションは精神的にも疲れますが、それでも、「関わりたい、知りたい、知ってもらいたい」という想いがあれば、何とかコミュニケーションはとれます。
日本のことを伝えるためには、習字道具や浴衣など日本を紹介するための小道具を持参しています。今回ベトナムでは、どうしても「ブンチャー」というベトナムのつけ麺を食べたくて、滞在先の方にお願いして作っていただいたのですが、そのお礼として、次の日には、予め日本から持参した乾麺とスープの素を使って僕が日本のつけ麺を作り、ご馳走しました。

高橋さん写真2

相手を尊重する態度・気遣い

現地の人々とコミュニケーションを取る中で大切にしていることはありますか?

「外国人」として自分が相手の国にお邪魔している以上、相手の文化風習を受け入れ、尊重する姿勢でいること、が基本だと思います。僕は、同じ格好をして同じものを食べることを心がけていて、出されたものは基本的に全部食べます。料理をいただいた後にはきちんとリアクションをするようにもしています。
また、マナーやモラルも大切ですね。相手の都合・スケジュールに合わせる、その国でNGとされることはしない、など、失礼のないようにすることは人と人とが付き合っていく中では絶対に大事だと思います。ヘアカットボランティアをする時にも、行う場所には配慮するようにしていますし、使わせてもらった場所を汚さない・ゴミを残さない、ということにも気をつけています。

ヘアカットをする中で大切にしていることはありますか?

信頼関係を築けるように気を遣っています。髪を切るということは、刃物を持った見ず知らずの人を無防備に後ろに立たせる事になるので、絶対的な信頼関係が無ければ髪は切らせてもらえません。また、お気に入りの美容師や理容師に髪を切ってもらいたい方が殆どだと思うので、言葉の通じないアジア人美容師に髪を切らせてくれるということも、信頼あってのことだと思います。
更に、どんなタイミングでも満足してもらえるヘアカットができるよう、常に集中しています。僕の旅のスタイルでは、ヘアカットをする代わりに一般家庭に泊めてもらうので、カットの出来に滞在先確保がかかっているんです(笑)。滞在先の方には、朝・昼・晩タイミング問わず「ねぇ、髪切ってよ!」と言われることがとても多いですが、「(僕を)滞在させて良かった」と思われたいので、夜遅く疲れて眠い時でも、どんなに酔っ払っている時でも、オーダーが入ればカットします。ヘアスタイルはなぜかお任せが多いので、似合うヘアスタイルを一生懸命ヒアリングして考えます。言葉が100%は分からない時は勘でカットしますが、もしそこで手を抜いたり気に入らないカットをしたりした場合は、追い出されて野宿ですから必死です(笑)
台湾でお世話になった家族は、夜中の0時にビールを17杯飲んだ状態の僕に、「今から髪切ってよ」とオーダーしました(笑)。キツかったですが、気に入ってもらえたので良かったです。普通、酔っ払った人に髪切ってもらいたくないですよね(笑)。
これからボランティアで海外に行く方も、日本の常識は世界では通じない事を常に意識しておいた方が良いですよ!

ベトナムでのエピソード 

今回、CIEEのベトナム「児童福祉」ボランティアの活動場所の1つであるハノイの孤児院でヘアカットボランティアをされましたが、その時のことを教えてください。

実は色々ハプニングがありまして(笑)。べトナムの現地団体の方と待ち合わせしている場所へ、ハノイからバスで向かったのですが、バスを降りたら荷物の中に入れていたはずのiPadとヘアカット用のハサミ一式がなくなっていたんです!iPadはともかく、ハサミだけは何とか見つけなければ、と思ったのですが、待ち合わせの時間はもう過ぎているのでとにかく待ち合わせ場所に向かおう、と。待ち合わせ場所まで案内してくれたベトナム人がいるのですが、「急いで欲しい」と伝えてもなかなか理解してもらえなくて、お勧めだというお茶屋さんに連れて行かれて…。 「待ち合わせに遅れているから急いでくれ」と必死で訴え続けたら、「なんだ、オマエ急いでいるのか!」「だから言ってるじゃん!」というようなやり取りを経て、待ち合わせ場所に着いたのは約束の時間から1時間以上過ぎた頃でした。かなり遅刻したものの、きちんと待っていてくれ、申し訳なくもありがたかったです。

が、肝心なハサミは無いんですよね・・・?

そうなんです。とにかく、子どもたちの髪を切るにはハサミを調達しなければ、と辺りを見回したら、偶然、日用品などをリヤカーで売っているおばあちゃんが目の前にいたので、おばあちゃんからとりあえず櫛とハサミを買いました。 ハサミと言ってもヘアカット用ではなくて多分裁ち切りバサミか何かだと思うのですが、無いよりはマシ!ということで。そして、そのハサミで何とか子どもたちの髪を切ることができました。

子どもたちの様子はどのような感じでしたか。

とにかく明るかったです。一番印象的だったのが、子どもたち同士で注意し合う姿でした。ダウン症などの障がいを持った子が、髪を切られている子に「頭を動かしちゃダメだよ!」とか注意するんですよ。そして、カットが終わると1人ずつ写真を撮っていて・・・多分、「忘れないように」とか「記録として残したい」とい気持ちがあったのではないでしょうか。日本から来た、ということに喜んでくれたのではないかと思います。お土産に日本のお菓子、ラムネを持って行きプレゼントしたのですが、大喜びしてくれました。 
結局、「夕飯の時間だからもう終わりにしないと・・・」と、スタッフに言われるまで11人の子どものヘアカットをしました。
ヘアカット用のハサミではなかったので、スタイルを作るということまでできず、「カット」で終わってしまったのが心残りですが、子ども達はとても喜んでくれたので良かったです。

高橋さん写真3

子どもたちとのエピソード以外にベトナムでの思い出はありますか?

1つ自分にとって新たなチャレンジを行いました。現地の美容院をアポなしで訪問し、「髪を切らせてもらえないか?」と尋ねてみました。「髪を切ってください」ではなく。3件中2件は断られましたが、3件目でOKしてもらえました。ご夫婦で経営されているお店で、お二人と色々な話をしながら髪を切らせていただきました。ダメ元での試みだったので嬉しかったですね。
その他、ビーチでのヘアカットボランティアも行ってきました。

高橋さん写真4

高橋さん写真5

そして孤児院でのヘアカットボランティアの後日談として・・・。実は紛失したiPadとハサミが見つかりました!ホームステイさせて頂いていたご家庭でiPadとハサミをなくした件を話したところ、そのご家族がなんと警察官の方で、バス会社に連絡してくれ、「見つかった!」と。本当にラッキーでした。

海外渡航に不安を持っているみなさんへ

海外への興味もありながらも、渡航に不安を持っている方もたくさんいます。そんな方へメッセージをお願いします!

言葉や安全性に対する不安があることはとてもよく分かります!でも、「不安だけど一歩踏み出すか、不安だからやめておくか」、で、その後に大きな違いが産まれます。海外に行かなければ分からないこと、海外に行ってこそ見えてくるもの/得られるもの、がありますし、何より視野が広がります!不安を持って海外に渡航している日本人同士が現地で出会い生まれる友情もあり、それも良いものです。
不安や自信の無さは、結局、自分で殻を破るしかないんです。一歩踏み出した先に見える世界に向けて、是非挑戦して欲しいと思います!

編集後記
CIEEのベトナム「児童福祉」ボランティアの活動場所の1つ、ハノイの孤児院でヘアカットボランティアを実施されたことをきっかけに、今回インタビューさせていただきました。「英語も話せないし、ヘアカットボランティアをするまでは海外体験もゼロだった」そうですが、短期間で現地の人とかなり深い交流ができている秘訣は何なのだろう、と、とても興味がありお話を聞きました。
もちろん、ヘアカットというスキルが大いに役立っていることは間違いないですが、それ以上に、お話しから垣間見える「他人の気持ちを大事にする、人と人との関係を大切にする」という姿勢・考え方、が交流上手の秘訣なのでは、と感じました。「相手の嫌がることはしない」「相手が喜ぶことを考える」という、子どもの時に教えられた人間関係を築くための基本は、国籍や言語・文化に関わらず活きるものですね。
語学力などのスキル・テクニックも大事ですが、やはり人と人との繋がりは「気持ち」 なんだな、と、人としての魅力をつけていきたいな、と改めて思ったのでした。
今後、高橋さんがどのような国でどのような人々と会い、どのような交流が生まれるのか、国際交流に携わる者として陰ながら応援したいと思います。


高橋さんプロフィール



Profile:高橋 明由武 / Ayumu TAKAHASHI


国際理容美容専門学校法人本部広報課勤務。

4年ほど前からストリートヘアカットをしながらヘアカットボランティアを始め、これまでにイタリア・フランス・バチカン市国・フィリピン・タイ・台湾・グアム・香港・ロシア・ベトナムを渡り歩く。

今夏も愛用のバックパックを背にニュージーランド・マレーシアへ。

旅のポリシーは、「ゲストハウスやホテルに泊まらず、必ず現地の一般家庭に泊まりお世話になった人の髪を切る」こと。

(プロフィールはインタビュー当時)


 

他の記事も読む

|CIEE CLUB