クローズアップインタビュー

英語を活かしグローバルに活躍されている方にインタビュー

中川智皓先生インタビュー
  • 中川智皓先生
  • 大阪府立大学 工学研究科 機械工学分野 助教 博士(工学)

今回は大阪府立大学・中川智皓先生のインタビューの後編になります。前回の内容はこちら

“即興型英語ディベートが全学校に取り入れられることになれば、日本の英語教育は絶対に変わっていく”

高等学校における授業向けの即興型英語ディベートプロジェクトについて教えてください

中川先生:
即興型のディベートに関するプロジェクトが、文部科学省の調査研究に採択されましたので、授業の中で導入できる形の即興型英語ディベートを指導しています。50分間で完結し、かつ最終的には教員が1名か2名で1つのクラスをマネージできるようなものを目指しています。今後、即興型英語ディベートが全学校に取り入れられることになれば、日本の英語教育は絶対に変わっていくと思っています。
編集部:
高校では英語の授業は週に何回かありますが、どのくらいの回数が適切なのでしょうか。
中川先生:
週に1回は英語ディベートの時間があることが理想です。現段階では授業カリキュラムの調整が必要ですので今すぐ全部の学校に導入するというのは難しいと思いますが、スケジュールが調整できる学校には試験的に導入しています。
編集部:
高校生に指導されているということですが、どのような高校に行かれているのですか。
中川先生:
当初は私の専門が工学ということもあり、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に選ばれている高校から「科学英語の指導をしたい」という要望で、理数系の学校から始まりました。現在は理数系に限らず指導しています。
編集部:
これまで指導された学校の中には、英語が得意な学校ばかりではなくて、英語が苦手という生徒が多い学校もあったかと思いますが、生徒たちの反応はどうでしょうか。
中川先生:
そのような学校にも指導に行くこともありますが、ディベートはチームで話し合わないと、自分の番が来た時に困ることになるので、生徒たちはみな力をあわせて頑張って行っています。中には一文を作るのも大変な生徒もいますが、少しずつ教えながら文章を完成させて、完成したものを頑張って言えるようにしています。
編集部:
題材は高校生向けのトピックになるのでしょうか。
中川先生:
例えば「コンビニの深夜営業を禁止する」「制服を廃止にする」などのような身近な問題になりますが、ディベート慣れをしている高校の場合は「一夫多妻制を導入する」など、学校ごとにトピックは異なります。
編集部:
高校生でもディベートは全て英語で行うのですか。
中川先生:
全部英語です。内容によっては、日本語だと気恥しさがあり言えないことも、生徒たちは「英語ならば、とりあえず通じればいいか」と話してくれるというようなこともあります。
編集部:
チームは何人編成ですか。
中川先生:
出席状況などによって臨機応変に変えることもありますが、だいたいは3対3です。やはりチームのよいところは、論題を与えられて「それについて肯定を書きなさい」と一人で考えるよりは、みんなで考えて15分後にディベートを行う方が緊張感を持ち集中して取り組むことができることです。授業後のアンケートでも「自分がこんなに話せないということを初めて知りました」「結構書けているのに、いざ話そうとしたら話せなかった」「新しい単語を時間内に覚えることができました」との前向きな回答が結構あります。私もディベートをしている途中で知らない単語があるときは、その場で必ず一度発声して覚えるようにしています。苦労して暗記するのではなく、ディベートの中で自然に使ってストレスなく単語を覚えられることもディベートのよいところです。
編集部:
プロジェクトはどのくらいのスパンでしょうか。
中川先生:
3年間で1年ごとの契約です。今は2年目が始まるところです。今後は即興型英語ディベートを使って、筆記テストでは評価が難しいような論理的思考力とかコミュニケーション能力などを評価する段階に入ります。
編集部:
指導要領の改訂等にあわせ「他教科の内容も学習の題材として取り上げよう」という動きがありますが、そういう流れもディベートに関心が高まっていることと関連があるのでしょうか。
中川先生:
即興型英語ディベートについては主に英語科で紹介しているのですが、教員の方については「科目は関係なく参加してください」と声をかけていることもあり、理科や社会の先生も参加されています。参加された先生からは、「自分たちの教科でも使える要素がたくさんある」という声を多くいただいています。やはり論題が与えられて肯定と否定に分かれて勝負する、この勝負というところが生徒のモチベーションを高める重要な要素の一つであると思います。また、個人対個人ではなくて、チーム対チームというのもポイントです。チームとして協力して行うことで、英語が苦手な生徒がいてもお互いにサポートしながらやっていくので、そういうところが楽しさを生む要素になっているのではないかと思います。
編集部:
実際にディベートを通じて学んだことは、どういったところに繋がりやすいのでしょうか。
中川先生:
まず英語で発信する力が身に付くことが一番大きなことだと思います。私の研究室ですと、年に1回国際学会へ行く際に、学生に「発表をしに行っていいよ」と勧めても「いや、いいですわ」と言われることがあります。とても成績がいいのに、少し英語を話すのが苦手だからという理由で遠慮されることが続いた時は、本当に残念だと思いました。せっかく世界で発信できるような良いものを持っているのに世界に伝えられない、それはとてももったいないことです。でもディベート等を通じて、全員が少しでも英語で発信することに慣れることができれば、日本のプレゼンスが少しずつ変わっていくのだと思います。最低限自分の言いたいことは言える、そこは重要かと思います。

中川智皓先生インタビュー

TOEFLテストについてのお考えや即興型英語ディベートとの共通点などお聞かせください

編集部:
即興ディベートのお話をお伺いして、TOEFL®テストとの共通点が多いと思いました。例えば、TOEFLテストでは1度の試験で4技能を測りますが、スピーキングの試験ではコンピューターの画面に出てきた問題に対して、ヘッドセットに付いているマイクを使って解答していきます。そこで初めて聞いた情報を即興でサマリーを作って準備して、「1分間で答えなさい」というような問題や、自分が興味を持ったことがない両者のトピックに関してどちらかを選んでそれについて答える、というような問題が出るのですがそういう問題が問う内容は、即興型ディベートにすごく共通していると思いました。
中川先生:
はい、共通していると思います。即興型のディベートを行っていれば、TOEFLテストの受験がとても楽しみになるのではないでしょうか。即興型のディベートでは、高校生は3分間、大学生では7分間で行っているので、「1分なら軽く話せるよ」と感じる学生が多いのではないかと思います。
編集部:
TOEFLテストでは、ほかにも問題を聞いてそれに対して「何を言っていたか要約しなさい」といった問題や、あるいは「読む」と「聞く」が両方出てくる問題もあります。読んで聞いてから「このお題については自分でどう思いますか、この人はどう言っていますか」など、そういった理解していることを前提とした理由付けを問う応用問題もあります。
中川先生:
その点についても即興型ディベートのポイントと共通していると思います。ディベートのスピーチの基本的な構成としては、反論と自分たちのポイントという形になりますが、反論するときに必ず、前に喋った相手チームの話をまとめるという作業が必要になります。しかもそれをなるべくコンパクトに、要点だけをピックアップしまとめる。そして「こう思います」という形で反論していくので、そのまとめる作業はそのままTOEFLテストでも充分使えるように思います。
また即興型では相手チームが話している途中に割り込む形の質疑応答があります。その質問を受けた場合はその質問に即座に答えなければいけません。そういうことを考えると、準備時間が30秒あるというのは全然大丈夫だと思います。さらに即興型ではスピーカーとスピーカーが交代で話していくのですがその間に準備時間はありません。ですから「○○さんのスピーチが終わりました。はい、拍手。次の人はスピーチを始めてください」というような感じです。また実際の会話や討議でも、「わかった。30秒待ってな」ということはありえません。そういう意味でも、即興型ディベートは現実に即した力が付きやすいディベートスタイルだと思います。
編集部:
TOEFLテストのスピーキングも大学や高校での授業や生活を想定して作られているので、即興型英語ディベートとの親和性というのは高いと思います。

TOEFL Web Magazineの読者にメッセージをお願いします

中川先生:
TOEFLテストの対策としてもたくさんのメリットがあると思いますので、学校内だけでなく、学外でも色々な機会を見つけて、ぜひ即興型ディベートにもチャレンジしていただきたいと思います。

 

中川智皓先生インタビュー
  • 中川智皓先生 プロフィール
  • 大阪府立大学 工学研究科 機械工学分野 助教 博士(工学)
    東京大学大学院 工学系研究科 産業機械工学専攻 博士課程 修了(2010年)。
    2010年より現職。専門は、機械力学・制御。
    東京大学英語ディベート部を設立し、大学生英語ディベート世界大会ESL準決勝進出(日本最高記録)を果たし、東京大学総長賞を受賞(2006年)。
    堺市・大阪府立大学 産学官連携人材等育成事業「即興型英語ディベートによる英語コミュニケーションスキルの育成事業」責任者、文部科学省助成事業 高等学校における「多様な学習成果の評価手法に関する調査研究」研究代表者などを務める。
  • ディベートの事業について
  • 文部科学省助成事業 高等学校における「多様な学習成果の評価手法に関する調査研究」
    http://englishdebate.org/

    本事業での即興型英語ディベートでは、授業時間内で各人のスピーチ時間を設けることで英語での発信力を鍛え、勝敗によってモチベーションを高め、各種スキルを効果的に身に付けます。
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。