授業での実践事例

英語教員による生徒・学生の英語力向上に向けた授業での取り組み

和歌山県立向陽高等学校 海野真帆先生
  • 和歌山県立向陽高等学校
  • 海野真帆先生

 

TOEFL®テストWritingを視野に入れた初歩指導

個々の英文の構造解釈や文法知識の習得に重点を置いた、従来の英語授業が批判を受ける一方で、実際に正確なコミュニケーションを実践するには、やはりある程度正確な文法構文に則った英語力が不可欠であることは言うまでもないでしょう。これまで当然のように行われてきた英語授業の形態が「コミュニケーション能力の育成」にそぐわないというより、習得した言語知識を実際のコミュニケーションに利用する機会が、授業では「必要性の低い付随的なもの」という位置付けでしかなかったということではないかと、自分自身の反省も込めて実感しています。最終目標として十分なaccuracyを伴う言語力を目指しつつ、途中の学習段階でのinaccuracyに対して教師がどの程度まで許容するかが、生徒の語学学習に対する意識を大きく左右します。私は授業では、教科書本文のoverlappingやshadowingを通して、英文を意味内容と結び付けて自動化させることから始め、最終的にはその英文を用いた口頭でのsummarizingやessay writingへとつなげ、段階的なaccuracy向上を目指しています。

中でも、writing指導に関しては試行錯誤を重ねており、TOEFL iBT® テスト教授法ワークショップ(*)でのWriting Rubrics に基づくscoringは非常に興味深い内容でした。これまでも、TOEFL®テストのような高度なwritingに向けた基礎固めとして、main ideaやreasoningといった日本語では比較的希薄な概念を念頭に置き、教科書のレッスン内容に関連した初歩的なwriting教材を作成してきました。生徒はwriting作業で単語や構文、文法を駆使することで記憶が定着し、またoutputする英文のaccuracyは回数を重ねるごとに確実に向上します。

授業で扱った教材の中から、以下4点ご紹介します。

  1. [1年生] 日本アニメを扱うレッスンで
    桐原書店 PRO-VISION English Course I [旧課程] Lesson 3
    子供に見せるには「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」のどちらが望ましいか、理由とともに考える。グループで意見交換し、理由を英訳した後、個人でwritingとしてまとめる。身近な事柄を多面的に考察する。
  2. [1年生] 絶滅動物を扱うレッスンで
    桐原書店 PRO-VISION English Course I [旧課程] Lesson 6
    絶滅した動物3種(レッスン本文で扱っていない動物:Golden Toad、Pyrenean Ibex、Baiji River Dolphin)を取り上げ、ワークシートを用いてそれぞれ簡単に学習し、「復活させるなら、どの動物が最もメリットが大きいか」を考える。グループで意見交換し、理由を英訳した後、1対1のvalue debate形式で英語で討論する。別の生徒がジャッジとして勝敗を決定、その理由も説明する。最後に、他の生徒の意見も取り入れながら、個人でwritingとしてまとめる。
  3. [2年生] Steve Jobsの伝説のスピーチ“Stay Hungry, Stay Foolish”を扱うレッスンで
    啓林館 ELEMENT English Communication II  Lesson 2
    スピーチの中でJobsが取り上げたthree storiesについて、main ideaは何か、またそれについて自分はどう思うかをwritingとしてまとめる。それぞれのstoriesの中でJobsが学んだこと、結論として述べていることは何かを考えながら、main ideaを見極める。
  4. [3年生] 学校設定科目での考査問題として(解答時間50分・辞書使用可)
    給食配給業者4社の中から、小学校の給食に最も適切な1社を選び、その理由を説明する。「価格」「栄養」「味」などの点で4社はそれぞれ条件が異なり、最も重視すべき点や些末な点などを各自で理論付ける。解答は200語前後。TOEFL® PBTテスト と同時に実施されるTest of Written English(TWE)で実際に出題されたトピックにヒントを得て作成した。

こういったwriting活動では「意図が理解できる」英文であれば可とし、正しい英文で自己表現しようとする意欲、そこから生徒が得る語学学習への動機付けを重視するようにしています。また定期考査でも、自分の考えを短い英文で書く問題を徐々に取り入れつつありますが、やはり教師それぞれの価値観が異なり、採点の際に様々な問題が生じます。文法的に間違った英文でも内容重視で点数を与え、逆に正しい英文でも解答として不十分なら減点する、といった観点にはまだまだ周囲の抵抗があり、教師側の意識改革も大きな課題ではないかと感じます。

語学学習は決して一定の期間で完結するものではなく、ゴールもありません。手近なテストの点数だけに囚われず、生徒が自主的・継続的な学習習慣を身に付けられるよう、今後も教師として指導力を高めたいと思います。

 

(*)TOEFL iBT®テスト教授法ワークショップ・・・TOEFLテスト開発・運営元の米国ETSが提供する、米国ETS公認トレーナーによる英語教員のためのワークショップ

和歌山県立向陽高等学校 海野真帆先生
  • 和歌山県立向陽高等学校 海野真帆先生プロフィール
  • 大学時代に留学目的でTOEFL PBTテストを初受験、以来現在まで受験を重ねる自称TOEFLテストマニア。アメリカ文学を専攻し、翻訳家を目指した時期も。2011年度より英語ディベート指導を始め、高校生の熱意と底力に日々圧倒されている。ディベートで身に付く論理的思考と、TOEFLテストで必要な情報処理能力は同じ線上にあると実感。
  • 和歌山県立向陽高等学校
  • 旧制海草中学を前身とし、2015年に海草・向陽創立100周年を迎える伝統校。校訓「自彊不息 質実剛健」の精神を受け継ぎ、文武両道に励む。2期制や70分授業、土曜講座を実施し、確実な進路実績を誇る。クラブ活動では少林寺拳法全国大会優勝、水ロケット国際大会出場など、多くの方面で成績を上げている。スーパーサイエンスハイスクール指定3期目。イギリスに姉妹校を持ち、台湾修学旅行では現地高校を訪問するなど、国際交流にも力を入れる。2004年度より中学校を併設。
達人セミナーについて
  • TOEFL iBT® テストPropell® ワークショップについて
  • TOEFL® テスト主催団体ETSと当協議会が共同で毎年開催している英語教員対象のワークショップです。TOEFL iBT® テストにおける問題のねらい、採点基準や指導法等について理解いただき、今後の指導に役立てていただくことを主な目的としています。

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