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言葉の玉手箱

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英語に限らず外国語を学習していると、言葉の世界の奥深さに気付かされます。古来の日本人は言霊(ことだま)と評して、言葉には霊が宿り、見えざる力を働かすのだと考えました。使い慣れた短いフレーズの中にもコミュニケーションを左右するほどの力があるのです。

毎回ご好評をいただいているこのコーナーでは、テンプル大学ジャパンの川手 ミヤジェイエフスカ 恩先生が、異文化間コミュニケーションにおける言葉の使い方の重要性に焦点をあて、興味深く解説してくださいます。言葉の世界の面白さをお楽しみください。

>Dr.川手 ミヤジェイエフスカ 恩(めぐみ) Dr.川手 ミヤジェイエフスカ 恩(めぐみ)
テンプル大学ジャパンキャンパス教養学部
(Megumi Kawate-Mierzejewska, Ed.D., Temple University, Japan Campus)
2000年より、ETS公認コンサルタントを務めてきた。
専門分野:中間言語語用論(Interlanguage Pragmatics)

外来語『サービス』の意味(その1)
有償?無償?

英語にも、日本語にも『サービス』という言葉がある。日本語のこれは、英語から借りてきたものに違いない。本稿では、『サービス』のように英語でも日本語でも同じ表現で使われている言葉を、便宜的に “外来語 (loanword)”1と呼ぶことにする。外来語といえば、『和製英語』2を想像することがあるかもしれないが、それとは区別しておく。さて、それでは、『サービス』が『有償』か『無償』かを考えた場合、英語で使われるところの『サービス』と日本語における『サービス』とは同じ概念をもつものなのだろうか。

まず、日本語でのサービスだが、ある国語辞典によると「相手の為に気を配って尽くしたり、物を売るときに値引きしたり景品をつけたりすること」であるという。3更に前者においては「家庭サービス」とか「サービス精神」とか言うような形で使われるという。また、後者では、無償で配られる「景品」がサービスであるというわけだ。そこで、これらの定義から考えると日本語では『サービス』という言葉が「無償」という概念にも結びついていることがわかる。

次に、英語ではどうかというと、辞書による定義をみる限りでは、日本語のようにはっきり「無償」であるとわかるような概念はない。4, 5 また、英語では日本語にあるような「家庭サービスをする」と言うようないいまわしは、 “spend time with one’s family”ということになり“service (サービス)”という言葉は使わないようだ。「家族サービス」というようないいまわしは英語にもあるが、これは “family duty”となる。つまり、こちらも “service”という言葉は使われていない。更に、前出の「景品」も英語では“service”ではなくて、 “giveaway”とか “free gift”とか言われている。以上からもわかるように、英語には、日本語で使われるような『サービス』という概念はないようだ。つまり、日本語での「無償」という概念のもとに英語の “service”という言葉に飛び付くと、実は「有償」だったなどと言うことになったりするわけだ。

以上、『サービス』が「無償」か「有償」かについて考えてみたが、実社会でいかにこの表現が使われているかを考えてみると、多少なりと疑問がのこる。そこで、次回は、英語で “service”と使われる時(書かれている時も含む)は、必ず有償なのだろうかということに焦点をあてて、“service”と『サービス』の複雑さについて異文化間での誤解の事例も踏まえて考えてみる。

[注]

  1. 『外来語』とは、「ワイン(wine)」とか「ミルク(milk)」というような西洋の言語から借りてきた言葉で、カタカナで表されることが多い。
  2. 『和製英語』とは、英語に聞こえるが英語にはない「ジャパニース・イングリッシュ(日本人の話す英語)」とか「ガソリン・スタンド」というような日本語独特のカタカナ言葉である。また、日本人英語話者の中にはそれらの表現が英語だと信じて使っている場合もある。誤解を招きやすい和製英語に関しては、近いうちに玉手箱で紹介する予定。
  3. Goo辞書『サービス』(情報入手日:2010年3 月18日)
  4. Oxford English dictionary(情報入手日:2010年3 月18日)
  5. Merrian-Webster’s online dictionary(情報入手日:2010年3 月18日)

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