TOEFL Mail Magazine Vol.72 November 2008
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SELHi校の試行錯誤

SELHiとは、Super English Language High Schoolの略で、英語教育の先進事例となるような学校づくりを推進するため、文部科学省に指定された高等学校のことです。SELHiに指定された学校では、英語教育を重点的に行うだけでなく、大学や中学校等との効果的な連携方策等についての実践研究を実施します。また、研究目的・手法・成果の普及のため、公開授業や成果報告会の開催や、ホームページ上での情報提供を行うことになっています。



それぞれのSELHi指定校は特色のある研究課題を設定しています。目標とする生徒の英語力は 「読む・聞く・話す・書く」という4技能を駆使して自分の考えを発信できる力です。これはまさに北米の大学が留学生の入学要件として期待している力であり、インターネット版TOEFLテスト(TOEFL iBT)はこの要望に応えるために開発されました。そのため、日本の英語教育とTOEFLテストの方向性は同じであると考えます。
本シリーズでは、指定を終了した学校にその学校ならではの成果に焦点を絞りそのエッセンスを報告していただくことを予定しています。高等学校のみならず、中学校・大学、更には小学校の教員の皆様にとっても有益な情報源となるものと期待します。同僚の先生方とも情報を共有し、皆様の授業改革の一助となれば幸いです。

今回は、二期にわたり合計6年間SELHi指定校として研究課題に取り組まれた広島県立尾道東高等学校 外国語科の淀川幸子先生にご寄稿を頂きました。



二期(6年間)のSELHi研究を通じて
広島県立尾道東高等学校 外国語(英語)科教諭 淀川幸子
淀川 幸子(よどがわ さちこ)先生プロフィール
淀川先生広島県出身。
山口大学教育学部中学校教員養成課程卒業。
広島県立三原東高等学校、大和高等学校、湯来南高等学校、久井高等学校を経て、平成15年度から尾道東高校に勤務。
SELHi研究指定第一期(平成14〜16年度)と第二期
(平成17〜19年度)と継続する中、第二期目においてはSELHi研究主任を務めた。
現在は国際教養コース主任と三学年国際教養コ−ス担任を兼務 している。教員20年目。

次の内容は、二期(6年間)のSELHi研究を通じて、広島県立尾道東高等学校が作成した『平成19年度 SELHi研究開発実施報告書』の内容を、加筆・修正したものである。


1 第二期の研究指定を受けた背景
 広島県立尾道東高校は、平成14年度に普通科6クラスのうち1クラスが、英語の授業展開に特徴を置いた「国際教養コース」になり、このコースを対象として、平成14年度から平成16年度まで、文部科学省から「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」の第一期研究指定を受け、「英語が使える日本人」の育成に取り組んできた。第一期の研究開発課題は「国際化に対応した実践的コミュニケーション能力を育成する方法の研究」であり、四技能を有機的に関連させて指導することにより英語運用能力の育成を図ってきた。
 第一期の研究では、個別のスキルに特化することなく、総合的な取組みを行い、初期の目的を達成することができた。しかし、外国人との交流場面において、日本の文化について尋ねられた時に、英語で話すべき内容、つまり日本文化についての知識や理解が不十分であることや、質問された時に即答できないという問題点が明らかになった。

2 新たなる挑戦

 平成17年度から、新たな研究開発課題として「国際社会に生きる日本人として、英語の高度な表現能力を持った生徒を育成するための指導の研究 ―総合的な学習の時間「尾道学」の創設及び国語科との連携を通した指導の工夫・改善― 」を設定し、第二期目の研究指定を受けることとなった。この研究は、国語科との連携を通じて、母語である日本語における即答力などの表現方法を高め、総合的な学習の時間において「尾道学」を研究させ、話すべき内容を深めることにより、英語の高度な表現能力を高めていこうとするものであった。スペースシャトルに例えれば、国語科との連携と「尾道学」はブースターロケットであり、英語科の学習はメインエンジンということになるであろう。


3 「尾道学」について
 「尾道学」を「総合的な学習の時間」の一部と位置付けた。「尾道」について学ぶ中で、生徒がまず自分の身の回りにある問題に気づき、それをどのように解決したら良いかということを現実的に考え、将来的には町への提言を行い、自分の在り方・生き方に結び付けていくことを「尾道学」の目標とした。自己から学校へ、そして地域へと視野を広げさせ、尾道から広島、そして日本を知ることに深化させていく。また、将来的に尾道を離れても、自分の住む町がどうすれば住みよくなるかといった視点を、生徒一人ひとりに持たせることを、最終的な目標と考え、グランドデザインを作成した。
総合的な学習の時間「尾道学」グランドデザイン

総合的な学習の時間「尾道学」グランドデザイン

 (1) 発見(1年次):「尾道」の歴史・商都・福祉・観光A(尾道中心部)・観光B(尾道周辺部)・尾道東高校について情報収集を行い、訪問活動を通じて現状をまとめる。
(2) 提言(2年次):1年次の取組みをもとに、各グループにおいて、多角的な視点・立場から検討し、各グループで考える「理想の尾道像」を発表する。ポスターカルーセルなどの活動を通じ、各自が調べた内容を英語でプレゼンテーションする。
(3) 探究(3年次):これまでに付けてきた英語の表現能力を生かして、2年次での提言をもとにディベートを行い、考えを深め、最終的に自分の「進路」と自分の育った(あるいは通った)町である「尾道」を関連づけて、小論文を完成させる。

 生徒に表現内容を持たせるために、「尾道学」の中で、自分の住んでいる地域の文化に関して学習し、それを英語で表現する場を意図的に与えていった。発表内容が表面的になりがちであるため、生徒自身がロールプレイ(例えば市長、賛成派地域住民、反対派地域住民など)をすることによって、様々な立場で物事を捉える工夫をした。最終的には「尾道への提言」をまとめ、その内容を英語で表現させた。まとめとして、自分の「進路」と「尾道」を関連づけて英語で小論文を書かせた。この小論文に基づき、生徒全員がスピーチを行った。小論文は冊子とし、スピーチはビデオ収録したものをDVDに編集し、来年度以降下級生にモデルとして示すこととした。

 また、「尾道学」を英語の授業にリンクさせ、教科書のトピックに沿って尾道と関連付けた論題を事前に提示し、それをもとにマイクロ・ディベートを実施する取組みも行った。「尾道学」を生かした授業展開としては、英語の授業に使う様々な例文に尾道を意識的に取り入れたり、英作文のタイトルを尾道に関するものにするなど、総合的な学習の時間だけの取り組みにしないよう工夫している。平成17年度は、1年生の校内スピーチコンテストを、尾道に関するトピックに限定して行った。具体的な授業の例として2年生の国際教養コース生徒を対象にしたマイクロ・ディベートの授業について説明する。
 国際教養コースの「英語表現」(文型31名対象・1単位)において、教科書のトピックに沿って尾道と関連付けた論題を事前に提示し、それをもとにマイクロ・ディベートを、ネイティブ教員と協力したTTの形で実施した。前述した国語科との連携における「即答を意識した指導法」の中の「メモを見ながら自分の意見を述べる指導」も同時に行った。毎時間授業の半分の25分を使って、マイクロ・ディベートを3人1組で実施した。授業の進行は、次の表を基準としている。

マイクロ・ディベート進行表

 事前にディベートの論題を与え、インターネット等で調べ学習をさせる。より具体的なもの、説得力のあるものをピックアップさせ、自分の意見のサポーティングアイディアとして取り入れさせ、ワークシートのメモ欄に肯定と否定意見をメモで書かせる。調べ学習の段階では完成した文章を書かせず、キーワードのみをワークシートに書き出させる。
 ディベート時には意見に、より説得力をもたせなければならないため、キーワードの配列等を意識しながら発表しなければならず、論理的思考の育成にもつながっていると考えている。また相手の意見に対して、即興で質問し、それに答えたり、相手の質問を聞いて即興で回答する訓練を重ねている。また、審判役の生徒は両者の意見をすべてメモをしながら聞き、それぞれの論点のもっともらしさや議論の強さをもとに判定をし、その理由も付け加える。

ディベート後ブレーンストーミングをする様子

ディベート後ブレーンストーミングをする様子

  この形態で3ラウンド実施し、全ての生徒が3通りの役割を行い、意見を構築する。さらにディベート終了後、他の生徒の意見や教員の意見を出し、それを板書することによってブレーンストーミングする。最後にそのまとめとして、自分の立場(肯定か否定か)を明らかにして、5分で100語程度の文章にする活動を行う。作文後、教師や他の生徒に自分の書いた内容を読まれることにより、論理的に思考し表現しているかを客観的に確認することができる。


4 国語科との連携について

 国語科との連携(問答ゲーム、再現ゲーム、要約活動)により、育成したかった力は次のとおりである。

問答ゲーム(1年次 ):問いに対してすぐに答えるという力(及び態度育成)
再現ゲーム(2年次 ):聞いた内容から取捨選択して要旨を取り出してまとめる力
要約活動(3年次 ):「単純な置き換え」、「部分的な言い換え」ではなく、
                自分の言葉で言い換えをすることを原則として
                文章を要約する力

 次の図のように、両教科において、各活動をスパイラルに行い、論理的に話す力を育成していった。 

国語科との連携 活動図

国語科との連携 活動図

なお、それぞれの指導方法については次のとおりである。
(1) 1学年 問答ゲーム
 国語科の授業において日本語で行った問答ゲーム(例「休日に行くとしたら山か海か?」)を、共通のテーマと指導順序に従い英語科では英語で行った。「自分のことについて即答できる力の育成」という観点から、準備した原稿を暗記して話すのではなく、問答ゲームを通じて、即興で応えることに重点をおいた。即興で、もしくはメモを見ながら、頭の中で応答する内容を瞬時にまとめて応えさせるという訓練を通じて、理由も含めて即答できる力を育成した。なお、指導方法は次のとおりである。

*指導手順

(1)起立してペアでじゃんけんで話す順番を決める。(20秒)
(2)トピックを板書する。(20秒)
(3)肯定側が話す。(40秒)
(4)否定側が話す。(40秒)
(5)5名程度を指名して答えさせて、フィードバックする。(5分)
(6)個人でノートに整理(3分)

*留意点

(1)ペアワークの際はじゃんけんまたは列で最初の発言者を決め、次の発言者が出来るだけ即答に近い状況を作るために、肯定・否定を指定したり、次の発言者は最初の発言者の反対の立場を指定するなどの工夫をする。
(2)全体でフィードバックする際には黒板にマッピングして、一言だけで終わらせないように、必ず具体例を話させるように工夫する。
(3)振り返りのために、個人でノートに整理させる時には、言えなかった表現を質問させたり、模範例を板書する。時間短縮のため、フィードバックと並行してノート整理させる。

(2) 2学年 再現ゲーム
 国語科では、教師の読む文章を聞いて、キーワードをメモし、それを見て文章で再現する「再現ゲーム」を実施した。英語科でも同様の手法を用いて、ある英文を聞かせて、そのキーワードをメモし、それをもとに口頭で英文を再現する活動を実施した。「要点を瞬時に掴んでまとめる力の育成」という観点から、再現ゲームを通じて、必要な情報を取捨選択することに重点をおいた。なお、指導方法は次のとおりである。

*指導手順
国語の授業での手法

(1) 教員が読む内容を聞きメモを取る。
(2) そのメモをもとに口頭で再現する。
(3) 80字〜100字でまとめる。問いと結論という構成にする。評論文分野の要約問題 であることを意識して行う。

英語の授業での手法

(1) 未習の英検準2級程度の文章、あるいは既習した教科書の内容をCDで聞く。
(2) 英文を聞きながらキーワードをメモする。
(3) そのメモをもとに口頭で本文の再生を行う。
(4) ペアで交互に再生する。その後、自分の聞き逃した部分や相手の使ったよい表 現をメモさせる。

(3) 3学年  要約活動
 国語科では、4000字程度の文章を読んで、30分で600字程度の要約を書かせた。英語科では、全クラスにおいて、500語程度の英文を読んで、トピックセンテンスを抜き出し、自分の言葉で英語要約させる活動を行った。以下を両教科で、共通の評価規準とした。

*評価規準

(1)トピックセンテンスがある。
(2)具体例が削られている。
(3)言い換えがなされている。
   レベル1 単純な置き換え、部分的な言い換えがなされている。
   レベル2 内容を理解し噛み砕いて、自分の表現で内容を表している。
(4)語数が守られている。


5 成果と課題

 SELHi第一期の生徒は、あらかじめ用意した原稿を覚えて、それにジェスチャーを加えて発表することはできており、ディベートも予め原稿を作成し、暗記した内容で実施していた。そのため、即答力に欠け、英語でのデリバリーは素晴らしくても、その後の簡単な質問にも答えられない生徒も多かった。その問題を解決すべく、第二期の研究を開始し、「問答ゲーム」で即答力をつけ、その後「再現ゲーム」で要約力をつけ、さらに「要約指導」で論理的にまとめる力を育成し、「尾道学」で話す内容を作っていった。
 「尾道学」を通じて、尾道を代表する文化についての情報を集め、それをプレゼンテーションする機会を与えることにより、生徒の発信力は向上したが、尾道ラーメンや祭りなど、文化紹介にとどまる表面的な内容のプレゼンテーションも多くあった。また、「総合的な学習の時間」の一部を「尾道学」としたため、その時間が十分ないことから、それぞれのグループで調べた内容をクラス全体で共有する時間が少なかった。英語の授業を利用するなどして、他の生徒が調べた内容を共有させ、さらに深化させていく必要がある。
 国語科との連携については、まず問答ゲーム(1年次)によって、問いに対してすぐに答えるという態度を身に付けさせる工夫と、話す内容をできるだけ多くするために具体例をあげるなどの工夫をしたため、英語の即答力を育成することに役立った。また、問いは易から難の順に並べ、レベルを上げるときはスモールステップで上げていかなければ、生徒の即答力養成につながらないということがわかった。生徒アンケートから、「簡単な日本語から考えて英語を言っている」「英語の文が早く浮かんで、言いやすくなった」などの意見があり、国語の「問答ゲーム」での応答が、英語で意見を即答する際に役立っていると実感する生徒が多いことがわかった。しかし、応えがなかなか出ない生徒に対しては、具体的に考えさせるための手立てや意見を引き出すため、話すための文法指導、語彙指導の工夫が必要である。
 再現ゲーム(2年次)で、聞いた内容から取捨選択して要旨を取り出してまとめる力を育成する活動により、ポイントを押えて聞くことができるようになり、読むときもポイントを押えて読めるようになった。また、「メモをもとに再現する」という形式自体には慣れ、日本語・英語の両言語において、分かりやすく説明する力が身に付いてきた。
 要約活動(3年次)では、国語、英語ともに、「単純な置き換え」、「部分的な言い換え」に関しては力の伸びが見られた。文章を要約する際には、本文をそのまま抜き出すのではなく、自分の言葉で言い換えをすることを原則として指導を行った結果、特に国際教養コースの生徒については英文を読んで、自分の言葉を使って要約する力が付いた。
 詳しい成果と課題は、別紙(こちら PDF形式/208KB)にまとめているので、そちらを引用することとする。これらの指導方法は、全国の学校で汎用できるものであると考える。もし、国語科の協力が得られない場合でも、「問答ゲーム」などの活動を、英語科教員が日本語で行い、その後英語で行えば可能である。この方法が、全国に広まることを期待してやまない。


6 ポストSELHiについて

 平成19年度で6年間にわたるSELHi研究は終了した。最終年度の平成19年度には、2年国際教養コースの生徒が、広島県スピーチ・レシテーションコンテストのスピーチの部で優勝し、1年普通コースの生徒が、レシテーションの部で2位となった。また、前述の2学年生徒1名と2学年普通コースの生徒1名が、「第一回全日本高校模擬国連大会」に広島県代表として参加し、ロシアの環境問題について英語でプレゼンテーションを行った。平成20年度も、SELHi研究で培ったコミュニケーション重視の授業スタイルを継続している。新たな取り組みとして、校内英語ディベート大会を実施し、今年度初めて全国高校生ディベート大会に出場する予定である。広島県は現在、英語ディベート大会が実施されていないため、今後県大会の実施につながるよう検討中である。今後も、これまで行ってきた授業観察や研究授業などにも引き続いて取り組み、お互いの授業をよりよくすることに努めたい。また、国際教養コースの授業スタイルを、より多く普通コースに取り入れ、学校全体として英語を多用した授業を行うことを心がけていきたい。授業で英語力を付けることによって、進路選択の幅を広げる取組みを行い、地域においてだけでなく「広島県一の英語コミュニケーション能力を持った生徒を育てる」ことを目標としていく。





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