今回は、日本語と英語の断りの方略について考えてみる。日本人は言いにくいことをはっきりとは
言わずに遠まわしに言ったり婉曲的にいったりする傾向があるとよく言われる。今回取り上げる『断りの方略』の中には数多くの遠まわし表現が見られるようだ。日本語には30以上の断りの表現があるという話も聞く。『ちょっと考えておきます』『検討させてもらいます』『善処します』『難しい』といったものから
『勘弁してほしい』『ちょっと。。。』『無理』『できない』というようなものまである。今回は、その中の
『難しい』という表現に焦点をあててみる。

日本語でいうところの『難しい』という表現を英語になおすと“It’s difficult,” “It appears difficult,” とか“It would be difficult.”ということになるのであろうが、英語でもこの表現が日本語と同じように使われるのだろうか。結論から言ってしまうと英語ではちょっと違うニュアンスで使われることが多いようだ。
身近な例で考えると、先日、お会いした松村先生によると、連絡なしに先生のコースを何回も休んだ
学生に個人的に休んだ箇所をすべて教えてくれと頼まれたのだが、スケジュールの違いから無理なことが分かったので、“It appears difficult.”といったら、学生は、“Difficult?, I see. So, yes or no?”と更に
交渉を進めてきたという。そこで、先生は、その学生に “Well, I’m sorry, but …”という具合に『できないってこと』をはっきりと伝えると同時に、英語での “difficult”の意味を聞いてみたという。学生によれば、英語でそういわれた時、多くの場合は『難しいけどやってできないことはない』というようにまだ話し手(例えば、依頼主)にもチャンスはあると解釈されることが多いらしい。そこで、更なる交渉をしてくるようだ。
ビジネスの状況でも同じことがいえるようだ。友人の商社マンがアメリカの会社とある商談をした時、
お互いに条件が合わなかったので、日本側は、“It’s difficult”と言ってその交渉を打ち切ろうと考えた。しかし、相手側は、その発言が商談の打ち切りを意味するものであるという解釈はしなかったようで、
『商談を成立させるためには、条件をどのように改善していけばいいのか』というような返答をしてきたと
いう。これらの、やり取りからも、日本語の『ちょっとむずかしいかなあ』というのをそのまま英語にしても、誤解を生じることが多いようだ。
では、英語では、これらの場合、どのように対処すれば、いいのだろうか。まず、教師と学生の会話であるが、この場合は、教師はできないということを『詫び』+『理由・説明』というような形を使って表現することができるのではないだろうか。後者の場合は、もう少し複雑で、このような場合は、英語母語話者の間でも使われる『即答回避』の方略などを使い、『じゃあ、この件は次回に』というような不特定未来の形をとってみるのはどうだろうか。アメリカ英語母語話者がよく使う “We should get together”と同じように、解釈されれば目的は達せられるわけだ。
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