TOEFL Mail Magazine Vol.58 June2007
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SELHi校の試行錯誤


それぞれのSELHi指定校は特色のある研究課題を設定しています。目標とする生徒の英語力は「読む・聞く・話す・書く」という4技能を駆使して自分の考えを発信できる力です。これはまさに北米大学が留学生の入学要件として期待している力であり、インターネット版TOEFLテスト(TOEFL iBT)はこの要望に応えるために開発されました。そのため、日本の英語教育とTOEFLテストの方向性は同じであると考えます。
本シリーズでは、指定を終了した学校にその学校ならではの成果に焦点を絞りそのエッセンスを報告していただくことを予定しています。高等学校のみならず、中学校・大学、更には小学校の教員の皆様にとっても有益な情報源となるものと期待します。同僚の先生方とも情報を共有し、皆様の授業改革の一助となれば幸いです。

今回は、「初級からディベートを学びながら、英語力をアップさせる」という方策で、指導法の「汎用性」の確立を目指された私立高山西高校の、宮川純一先生にご寄稿を頂きました。


SELHiのチャンスを生かして
私立 高山西高等学校 宮川 純一
宮川 純一(みやがわ じゅんいち)先生 プロフィール
私立 高山西高等学校 宮川 純一氏岐阜県高山市出身
関西学院大学文学部教育心理学科卒業
私立 高山西高等学校で英語指導23年目。
ディベートに取りつかれて11年。
英語を話し始める生徒の変化が生き甲斐です。 「全国高校生英語ディベート大会」の事務局長として、全国の先生方とネットワークを構築中。世界大会で日本代表チームが勝ち進む姿を夢見ています。

1. SELHiは、チャンスだった。
 本校は11年前(平成8年)から、日本語のディベート大会「ディベート甲子園」に参加している。ディベートがいかに生徒に知的刺激を与え、情報の吸収と発信能力を高めるかに驚き始めたものだった。平成10年に「ディベート甲子園」のご縁で小山文夫先生(上田染谷丘高校、当時)に誘っていただき長野県の英語ディベート大会を見学した。英語を使って生き生きと議論する100名を超す高校生達を見て衝撃を受けた。英語ディベートを体験した生徒のその後の人生は、未経験者と明らかに違うものになるだろうことを確信した。この確信に基づき自身の学校でも早速取り組んだ。確かに生徒はやった分だけ発話力を身に付けた。平成14年にはついに岐阜県英語ディベート大会を立ち上げた。ところが、なかなか参加校が増えない。そこに、SELHiの話を聞いた。「チャンス!」だと思った。平成16年度から3期校としてSELHi をいただくことができ、とにかくディベートをとことんやろうと思った。
 それまでの英語ディベートの扱いは、大学生の先鋭的な専門分野になっていたように私には思える。英語ディベートのイメージは、英語学習の最終段階に位置づけられる高度なものだという評価が一般的ではないか。しかし高校生(初心者、もちろん中学生も)から楽しめるディベートがあっていいはずだし、ディベートを学びながら、英語力がアップするという方策がSELHiを通じてもっと見つけ出されればいいと思った。英語ディベート(を楽しむこと)が目的となり、英語が手段に変化すればなおいい。しかも、大会に参加する一部の生徒のものではなく、授業としてクラス全体に展開する指導法の一部になりえることが少しでも立証できればと思った。「汎用性」の確立である。
「英語が伸び、上級者になってから → 英語ディベートをやろう」から、
「初心者から皆で英語ディベートをやりながら → 英語を伸ばそう」
への変換である。

かつてのディベートの位置づけ
これからのディベートの位置づけ
【かつてのディベートの位置づけ】
【これからのディベートの位置づけ】

 この英語ディベートの流れが高校英語教育界に自然な形で入ってくるべきだと思ったし、「使える英語」の指導の重責の一部を担えるはずだという思いでSELHiをスタートした。
 申請に当たり、次の2点を本校の公約として決めた。
「授業としての英語ディベート指導のマニュアル作成」
「全国大会の開催」
 当然、無謀な計画ではあったが、SELHiを通してでしか成し得ないことも明らかだった。校内的にも自分たちへの縛りとなり、一つの目標、励みになった。やるべきことが具体的になったことで英語科の先生方の結束も高まったと思う。
 また、全国大会の開催は、全国の先生方との協力が不可欠だが、その先生方と繋がるためにもSELHiの力をお借りするしかないと思った。本当にチャンスだった。
※研究開発課題はこちら

2. SELHiは、刺激だった。

サーキットスピーチの様子 SELHi、1年目(平成16年度)は、Affirmative, Negative, Judgeの3役を3人で回す「マイクロディベート」というミニゲームしか策はなかった。向かってみると悪くはないが、10回ほどで破綻した。議論が深まりを見せない。部会で話し合いを重ね、「サーキットスピーチ」が次の案として浮上した。同志社大ESS部の新人研修用のこの練習法は大変効果があった。生徒が発話を促されていく様は見ていて面白かった。
 しかし翌年、当然の如く次なる壁が待っていた。「サーキット・・・」は「立論・質疑」の段階までしかカバーしない。ディベートの醍醐味とも言える反駁・反論にはまた別の策が必要だった。「反駁練習」としていくつか開発してみた。が、それよりもさらにダイナミックなトレーニングを模索した。「教師VS生徒全体」が次の一手となった。 ある若手の先生が長文読解を、生徒と競う形で解き進めるという授業形態を取っていた。時に生徒の方が正解を出す問題も出る(生徒は大喜びだ)。教師が必死になる姿こそ、生徒を熱くする。その原理を持ち込んだのが「教師VS生徒全体」だ。それまでのディベート指導は、生徒を肯定・否定に分け、教師はジャッジの立場を取り、少し高みから「やってごらん」という姿勢でしかなかった。それでは、劇的な変化、刺激的な動きにならない。教師が生徒と真剣に向き合うことで、議論は当然白熱する。生徒は公的に、教師の発言に100%反論する事を許可されるのだ。しかも、生徒は教師の使った表現と戦略を、次に肯定否定が逆転した時には、早速使おうとする。ゲームが人を熱くすることは周知の事実だろうし、特に先生が相手ならなおさらだ。教師は時に負けてやってもいい。生徒のモチベーションは相当高まる。そこに身を置ける心の余裕も、こちらの勉強になった。

私立 高山西高等学校でのSELHi校の様子
私立 高山西高等学校でのSELHi校の様子
私立 高山西高等学校でのSELHi校の様子
【写真】「教師VS生徒全員」の様子

 最終年(平成18年度)に「ティーチャーズマニュアル」を、本校の若手がどうしても完成させると意気込んで、3月3日の文部科学省主催「英語が使える日本人育成フォーラム」に間に合うようにギリギリまでかかって仕上げてくれた。3年間の軌跡が刻まれた力作だ。一時は、年度が終わってからでも・・・と諦めムードが漂う中、何とかやり切れたのは、公約を果たしたいという一心からだったように思う。教頭先生のバックアップも大きな励ましとなった。
 振り返ると、どん詰まりになって苦しんで模索して、皆が知恵を出し、ようやく次の一手が生まれたようなところがある。そんなSELHiは刺激的だった。

3. SELHiは、出会いだった。

 SELHiのよい所は、全国規模でお付き合いが出来るということだ。飛騨の山奥の一英語教師が全国各地の学校の様子を気にしたり、電話やメールで意見を交換したり、実際にお会いしたり、時にお酒を酌み交わし日頃のご苦労や工夫・成果をお聞きしたりすることは、本当に収穫であった。SELHiでなければあり得ない人の交流である。
 また、運営指導委員会の大学の先生方からの多くのアドバイスは、貴重なものだった。大所高所からのご助言は、これまでの教師生活では発見し得ない視点であった。服部晃先生(岐阜女子大学)、マーガレット山中先生(同)、矢野善郎先生(中央大学)、大野秀樹先生(大東文化大学)、の4名の先生方の3年間に渡る多くのご助言は、かけがえのないものだった。中でも服部先生からは学校全体での動き、他教科との連携を。山中先生からは生徒の視点に立った授業の重要性を。矢野先生からはディベートの基本理念を。大野先生からはCritical Thinkingの概念を盛り込んだ指導法をじっくりと教えていただいた。
 また、公約の一つ「全国大会の開催」には、加納幹雄先生(金沢大学)、松本茂先生(立教大学)のお力が大きく関った。そして全国で地区大会を開催されている先生方とネットワークを構築することもできた。その連携は、夢のコラボレーションだった。ルールやフォーマットのすり合わせは、それまで独自で行ってきた様々な流れを一つにまとめていただく作業だった。各地区の独自性を一部譲歩していただく事でもあり、それぞれに大変なご理解をしていただけたと思う。全国約10都県で行われている地区大会のすり合わせは現在も進行中だが、全国の高校生のために全国大会の必要性を感じておられる先生方の気持ちが出会い、一つになりつつある。SELHiの勢いを借りてたくさんの見えない力が結集した。この全国大会はSELHiが産み落とした大会だと言っても過言ではない。そうした取り組みが全国発信の形になっていると高塚成信先生(岡山大学)から評していただいたが、感激の至りだった。SELHiは、大きな出会いの場だった。
全国大会は17都府県38校52チーム208名が参加しました。
決勝戦の様子(加藤学園暁秀A vs 神戸市立葺合)
全国大会は17都府県38校52チーム208名が
参加しました。
決勝戦の様子
(加藤学園暁秀A vs 神戸市立葺合)
優勝した静岡県の加藤学園暁秀高校Aチーム 世界大会(ソウル)への出場権を得ました。
閉会式には古田岐阜県知事にも参加いただけました。 後ろは松本茂先生。
優勝した静岡県の加藤学園暁秀高校Aチーム
世界大会(ソウル)への出場権を得ました。

閉会式には古田岐阜県知事にも
参加いただけました。 後ろは松本茂先生。


4. SELHiは、未来へ。

 公約だった「ティーチャーズマニュアルの作成」と「英語ディベート全国大会の開催」が、多くの先生方のご協力で一応の形になった。英語ディベートが全国に普及する一助になれば幸いである。長野県の大会で、あの時得た感動を全国の高校の先生や生徒達に味わってもらえればと思う。 
全国大会の事務局としてしばらくは機能していく所存だが、全国での地区大会開催のご援助もさせていいただきたいと思っている。また英語ディベートの世界大会に日本チームを送り出す支援もしていきたい。授業で取り組まれる先生方に資料を送る等して、出来る範囲で3年間のSELHiでお世話になった先生方へ恩返しが出来ればと思う。
 本校としても、生徒に今まで以上に英語ディベートの面白さと、英語力の伸びに驚いてほしいと思う。
 最後に、これからSELHiを取り組まれる方に本校からアドバイスできることがあるとすれば次の3点を挙げたい。
よくこだわる (多くの事をやらず、焦点を絞る。)
よく発信する (「汎用性」を確かめる意味で、他校と情報交換。)
よく失敗する (失敗して次の方策が生まれる。)

以上です。ありがとうございました。

5. 追記

第2回大会ポスター  ぜひ、第2回全国英語ディベート大会にご参加下さい。
平成19年度、第2回大会は、名古屋で12月15日(土)16日(日)。 申込締切、11月12日
お問い合わせ 高山西高校 宮川純一

※昨年度の様子はこちら

「高校生英語ディベート授業論 ティーチャーズマニュアル」
「英語ディベート大会 開催マニュアル」 ※絶版
をご希望の方はこちらをご覧下さい。

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『 高校生英語ディベート授業論 』
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