TOEFL Mail Magazine Vol.56 April2007
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e-Language in Action最終回

最終回
英国における本プロジェクト協力校 − オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、マンチェスター大学を訪ねて
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鈴木佑治先生

鈴木 佑治
慶應義塾大学環境情報学部教授  兼 同大学大学院 政策・メディア研究科委員


 20回続いてきた本連載「e-Language in Action 〜次世代メディアとプロジェクト発信型英語教育〜」は、今回をもって終了します。また新たな連載を企画しておりますが、次回の5月号にその連載内容に関する記事を書きたいと思っております。さて、筆者は、2007年3月9日より3月17日の間、本掲載で紹介したケンブリッジ大学、オックスフォード大学、マンチェスター大学などの英国の協力校を訪問しました。これまでの活動の報告と今後の活動の打ち合わせをするのが主たる目的でした。今回はそこで見聞きし感じたことを簡単に報告し、本連載の最終回といたします。
 筆者は、ドイツ、ベルギー、フランス、スペインには何度か行きましたが、英国には一度も行ったことがなく、今回が初めての訪問です。同行した山中司君は、英国滞在2年の経験があり、英国の地理事情に詳しくとても助かりました。重い機器や荷物を抱えて列車やバスでの移動は不可能と考え、ロンドン・ヒースロー空港に着くやレンタカーを借りました。
 1ポンドが240円という破格の為替レートに加え、英国はバブル経済で物価が高く、ボトル1本の水が290円するのには閉口しました。2000ccの車をレギュラー・ガソリンで満タンにすると12,000円以上かかりました。留学生の授業料は150〜170万円が一気に240万円以上に跳ね上がり学業への影響も出始めてきました。銀行の貸出し金利を上げてバブルを抑制しようとしていると聞きましたが、同時に定期預金の金利も5、6%に上昇し、金利の安い日本で金を借りてポンドに換金し英国の銀行に預ける人々が多く、それが異常なポンド高につながっているようです。
 筆者らは日本を発つ前に1週間270ポンドの予算でレンタカーを予約しておきました。その予算内で借りられる2000ccクラスの車は、プジョー、フォード、ボルクスワーゲンなど、日本ではみな超高級車です。費用を切り詰めるために、日本車の方が安かろうと考えて交渉してみたところ、日本車は3倍以上の750ポンドから800ポンドもすると言うのです。 結局、プジョーを借りることにしました。英国は高速道路が無料で、主要高速道路(Mマークの道路)に日本で言えばバイパスのような道路(Aマークの道路)が整備され、ガソリン代以外は費用が掛からずなんとか凌ぐことができました。
 到着した翌日の3月10日と3月11日は週末で大学は閉まっています。そこでロンドン、オックスフォード、ストラットフォード、ベッドフォード、ケンブリッジやその周辺コミュニティーを回り、様々なバックグランドをもつ人々の話す英語に触れながら、プロジェクトの研究テーマの一つである英語の多様性を実感することにしました。
 3月10日はロンドン市内をざっとドライブした後、オックスフォードに立ち寄り、シェイクスピアの生誕地ストラットフォードに泊まりました。翌日の3月11日の日曜日の午前中にストラットフォードを見学し、午後はベッドフォードに行き市内を見学しました。
 筆者の専攻は言語学ですが、英文学も専攻したことがあります。研究テーマはピューリタン文学者のジョン=バニヤンです。ベッドフォードはバニヤンの生誕地で、有名な寓意物語『天路歴程』(The Pilgrim’s Progress)を生んだ場所です。米国のニューイングランドに渡ったPilgrim FathersのPilgrimは当然バニヤンのこの著書に負うところがあり、米国ニューイングランドのその子孫にとっては自らのルーツでもある筈です。しかるに、バニヤンの銅像は忘れ去られたかのように道路脇に寂しくたたずんでいました。バニヤンはアカデミアとは無縁でしたが、ほぼ同時代のシェイクスピアもそうです。筆者は、10年におよぶ米国滞在中に、シェイクスピアについてはよく耳にしたものの、バニヤンについては一度も耳にしたことがありません。今回の旅でも、ストラットフォードでは何人かの米国人に会いましたが、ベッドフォードでは一人も見当たりませんでした。
 そのような思いをはせながら夕方ケンブリッジに入りました。社会言語学の英国英語についての色々の研究がありますが、近年には世界各国から様々な人々が集まり、英国の英語はとても多様性に富んでいます。楽しいことですし、よいことです。この週末の2日間だけでもそのことを強く感じました。

 3月12日にはケンブリッジ大学の、Selwyn CollegeのMasterであるRichard Bowring博士を訪ねました。岡部めぐみさんがケンブリッジ大学との交流を紹介してくれましたが(第52号本連載第16回参照)、その参加者の中に、Bowring博士の学生も含まれていました。ケンブリッジ大学の歴史と伝統には圧倒されます。このCollegeの学生も伝統的な厳しい教育を受けているようです。Collegeのランチに招かれ、大きなダイニング・ホールで教授陣と学生と一緒に食事をいただきました。ランチ一つとっても伝統的マナーを受け継ぐ場のようです。
 ランチを食べながらBowring博士とインターネットを使ったLanguage&Culture Exchangeにつき意見を交わしました。大変関心を持っていただき、今後も何らかの活動が続く感触を得ました。
 さて、ケンブリッジ大学は、Francis BaconやNewtonらを輩出したTrinity CollegeやKing’s Collegeを中心に発展し、サイエンス系で卓越した世界のトップ大学です。現在は21世紀の展開を図ろうと考えているようです。英国の大学では外部評価を行っていると聞きました。5*,5,4,3a,3b,2,1というスケールを採用し(The Research Assessment Exercise RAE(http://www.hero.ac.uk/rae/)参照)、国際的レベルと評価されるには5*ないし5を取らなければなりません(最近6*が追加されている)。4以下はそのレベルに達していないということになり、世界中から学生を集めるのは困難になります。聞くところによると、2001年に実施された評価では(RAE(http://www.hero.ac.uk/rae/)2001年参照)、ケンブリッジ大学でさえ4という評価を受けてしまったCollegeがあり、改善を勧告されているとのことです。日本の大学が同じ評価をうけたらどうなるでしょうか。
 その夜は再びオックスフォードに戻り宿泊しました。翌13日は同じく岡部さんが紹介してくれたオックスフォード大学の大学院教授Ernesto Macaro博士に面会しました。また、交流に協力していただいた日本語科の先生方に会い、これまでの活動報告と今後の活動について懇談しました。3時過ぎにオックスフォードを発ちマンチェスターに向かいました(第52号本連載第16回参照)。
 マンチェスターに着いたのは午後6時ごろでした。日本の大学生協を通して予約したホテルは、マン町の外れにあるマンチェスター・ユーナイティッドのメーン・スタジアム近くにありました。その晩は記念試合があるとのことで、筆者らが外を散策していると、あちこちからサポーターが集まり瞬く間に飲み込まれてしまいました。これも英国文化です。オックスフォードやケンブリッジのキャンパスで見たクリケットやラグビーやボートに興ずる人たちとは一味違う英語が飛び交っていました。マンチェスターの下町の魂に触れるようでまさに旅の醍醐味を堪能しました。
 翌日3月14日は、マンチェスター大学のSchool of Languages, Linguistics & CulturesのJonathan Bunt教授(第54号本連載第18回参照)、Ian Reader教授、Yukiko Shaw氏(第44号本連載第8回参照)らを訪ね、こちらとは長年の交流があることから、これまでの活動をお互いの立場から報告し合い、今後の活動についてかなり長時間語り合いました。また、International Development Division副所長のCaroline Whitehead博士と面会し、マンチェスター大学の世界戦略について色々お話を伺いました。マンチェスター大学もRAEの評価を受け、ほぼ全ての学部が5以上の高評価で、その結果人気も高くなり英国各地より優秀な学生を集めているようです(RAE(http://www.hero.ac.uk/rae/)2001参照)。
 e-Language in Actionでは、これら英国の大学と交流を持ちましたが、学生の交流から研究者同士の交流になりつつあります。インターネットで話した先生方と現実に会うと初対面にもかかわらず、初めて会うような気がしません。最後には実際に会って話してみたくなるというもこのプロジェクトの目標です。今回の訪問はそのことを実証する旅となりました。
 最後に、この滞在中に気になった英国の教育に関するニュースを紹介します。英国では小学生から14歳までの外国語学習者の数が激減しており、政府はそのことに危機を感じているようです。もともと外国語は小学校から必修であったのですが、1980年代に日本の学校を真似て、数学や英語(英国の国語)などの主要教科の成績を上げることに専念しました。そのために外国語を必修からはずし、選択にしたのですが、それが外国語学習者の激減を招いた原因であると報道されていました。現在、小学校より外国語を必修科目にすべく制度を変えようとしているようです。
 筆者は教育の制度だけではなくまた別の要因もあると考えました。英国の児童の大部分は英語を母語としますが、英語がグローバル語化しつつある現在、母語さえ知っていれば基本的には不自由しません。そのことが却って仇になり、外国語を学習する意義を殺いでいることも考えられます。ただし、全ての情報が英語化しているわけではありません。英国人が英語だけしか知らないということでは、他言語で書かれた情報を得ることには不得手であり続けます。そうしたことに対する危機感が表層化した議論であろうと思いながら、テレビの討論会を聞いていました。
 我が日本に置き換えてみると日本の事情はグローバル言語化した英語を話す英国とはやや違います。日本人の母語は日本語です。母語だけではこれからのグローバル社会を生きられません。まず英語を学ぶことはグローバル社会の情報受信と発信に必要不可欠です。加えて他の言語を学びその言語で書かれた情報を学ぶことも必要になります。2つ以上の外国語を学ぶことはよいことですが、まず、英語を学ぶことがサバイバルの条件になるでしょう。
 以上、筆者にとって充実した1週間でした。この4月より今回会った先生方とインターネットで今後の活動につき、オンライン会合を重ねながら煮詰めていこうと考えています。
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。 最新情報は関連のウェブページよりご確認ください。
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