TOEFL Mail Magazine Vol.53
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SELHi校の試行錯誤


それぞれのSELHi指定校は特色のある研究課題を設定しています。目標とする生徒の英語力は「読む・聞く・話す・書く」という4技能を駆使して自分の考えを発信できる力です。これはまさに北米大学が留学生の入学要件として期待している力であり、インターネット版TOEFLテスト(TOEFL iBT)はこの要望に応えるために開発されました。そのため、日本の英語教育とTOEFLテストの方向性は同じであると考えます。
本シリーズでは、指定を終了した学校にその学校ならではの成果に焦点を絞りそのエッセンスを報告していただくことを予定しています。高等学校のみならず、中学校・大学、更には小学校の教員の皆様にとっても有益な情報源となるものと期待します。同僚の先生方とも情報を共有し、皆様の授業改革の一助となれば幸いです。

今回は、英国生徒派遣プログラムが進行中の茨城県立日立第一高等学校の加藤浩一先生と、国際科を中心に地域の国際教育をリードしてきた茨城県立日立第二高等学校の矢野賢先生から、ご寄稿を頂きました。2校の共同によるSELHiの取り組みです。



SELHi研究を振り返って:試行錯誤の3年間
茨城県立日立第一高等学校教諭 加藤 浩一
茨城県立日立第二高等学校教諭 矢野 賢
加藤浩一先生 プロフィール

加藤浩一先生加藤 浩一(かとう こういち)
茨城県日立市出身。上智大学外国語学部英語学科卒業
教職歴は8年。平成15年4月、文部科学省スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)第2期校・茨城県立日立第一高等学校に赴任、平成16年度から17年度の研究主任。平成18年度英語科主任。FluencyとAccuracyのバランスのとれた英語教育を目指し、日々奮闘中。


矢野賢先生 プロフィール

矢野 賢氏矢野 賢(やの けん)
茨城県日立市出身。帝京大学文学部教育学科卒業
教職歴は宮城県で3年、茨城県で11年の計14年。平成14年度から平成15年度文部科学省スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)第2期校・茨城県立日立第二高等学校における研究委員。平成16年度より同校国際教育部長。Readingにおけるイメージを使ったスキーマの活性化とScaffoldingのありかたに関心を持ち、パワーポイントを使った効果的な授業展開を試行錯誤している。



1. はじめに
 日立一高と日立二高の両校は、「国際社会で活躍できる英語力の育成−様々な活動を通して、高度な実践的コミュニケーション能力を習得する−」という研究開発課題のもとに、平成15年4月にSELHiの指定を受けた。茨城県の高校として初のSELHi指定、確かに名誉なことであったが、それは同時に3年間にわたる長い試行錯誤の始まりも意味していた。具体的な指導の方向性をめぐって教員間に不協和音が生じることもあり、決して順風満帆とは言い難い3年間であった。幸いなことに、こうした試行錯誤は、一定の成果をもって報われることになった。生徒の英語力は3年間で着実に上昇し、英検などの検定試験でもセンター試験でも、両校の生徒は、これまでにない好成績を示した。授業の内容にしても、教員の協力体制にしても、3年前とは全く違う好ましい変化がみられるようになった。もちろん、一方で多くの反省材料も残った。ここでは、(1)授業改善、(2)教員の協力体制、(3)合同研究の3点について、両校の取り組みと課題を簡単に報告したい。

2. 授業の改善にむけて

 「SELHiはイベントではなく、授業の改善を目的とした研究活動である。」この認識が教員の間に共有されるまで、両校とも相当の時間を要した。国際科を中心に地域の国際教育をリードしてきた日立二高と英国生徒派遣プログラムが始まったばかりの日立一高、両校にとってSELHiは、海外交流活動を活性化するための好機と捉えられた。同時に、「国際友好の日」や日立サミットなど、両校が共催で留学生やALTと交流するイベントも数多く企画され、こうしたイベントの出来がSELHiの成否を決するという思いを抱く教員も多かった。実際、国際交流の活性化という面では、両校とも大きな成果をあげることができた。両校共同で開催した日立サミット、日立一高の模擬国連会議参加(英国ロイヤルラッセル校)、日立二高のハワイ・ニュ−ジーランド・タイ研修、国際交流の日など、詳細は報告書に譲るが、両校の国際交流活動はSELHi以前とは比較にならないほど活発なものになり、生徒の異文化に対する理解や関心を深めるのにも大いに役立った。

茨城県立日立第一高等学校のSELHiの取組

 一方で、「授業の改善」という意識が浸透するのには、時間がかかった。それどころか、授業とSELHiは別物だと考える教員もいて、研究1年目は、様々なイベントに追われ肝心の授業の改善には手が回らないという実情が見られた。SELHiの研究助言者や運営指導委員の手厳しい助言を得て、授業の改善に向けて本格的な取り組みが始まったのは、研究2年目からだった。
 日立二高の国際科では、総合英語及び英語理解の指導において、従来の訳読中心の授業スタイルからの脱却が図られた。授業の大半を英語で行い、パワーポイントの効果的な使用やペアリーディングの工夫などにより、視覚・聴覚を活用して内容理解に主眼を置く授業が展開されるようになった。授業の様子を平成16年8月の全英連関東ブロックの模擬授業で公開した際には、県内外の特に進学校の先生方から、生徒が積極的に活動に取り組む様子について評価する声をいただくこともできた。このような取り組みは国際科の指導のみならず日立二高英語科教員全体の研究課題として、SELHi終了後の定期的な授業改善のための指針となっている。平成18年度は東海大学から鈴木広子教授を招き、リーディング教材の指導のあり方について、定期的に授業改善のための研修会を行っている。
 表現力の育成を目指し、1分間スピーチやプロセスライティングを導入し、これらとリンクしてディベートの指導も行われるようになった。当初は要領を得ない所もあったが、数次にわたるプレディベート活動を経て、年度末には活発な議論も見られるようになった。プロセスライティングについては、平成18年度から普通科におけるライティングにおいても採用され、指導者同士の共通理解のもと、指導実践を開始している。
 日立一高では、ALTや外国人講師を活用して、音声を重視した指導やリーディングマラソンの活動などが行われた。日立二高と同様に、従来は主流を占めていた訳読中心の授業は、徐々に姿を消し、内容理解と自己表現を重視する形で、テスト問題についても大幅な見直しがなされた。中でも、校内考査の全てにリスニングテストを導入したことは、生徒の音声に対する意識と学習意欲を高めるのに大いに役立ち、全体的な聴解力の向上につながった。 模擬国連会議との関連では、参加生徒を対象に決議案の作成やディスカッションなどの事前指導を半年にわたって行い、研修の成果を授業のグループワークなどに反映させるように努めた。ALTや外国人講師の協力を得て、エッセーライティングとそれをベースにしたディスカッション活動も授業に取り入れられるようになった。
 日立二高と同様、こうした取り組みは、SELHi以後の指導にも引き継がれ、教師主体の講義型の授業を、いかにして生徒主体の参加型の授業へとシフトするかという課題に、個々の教員が真剣に取り組み始めている。
 SELHi指定以前と比べて、両校の英語授業は確かに大きく変わった。研究当初、具体的な授業改善の方向性があいまいであったために、生徒の英語力の二極化など予期せぬ壁にぶちあたることも多かったが、「よりコミュニカティブな授業を」という意欲は、研究が進むにつれて強まっていった。両校のSELHiは、授業改善の Best Example にはなりえなかったが、Good Example を提供することには成功したのではないかと自負している。



3. 教員間の協力体制

 試行錯誤を経ながらも両校が授業改善に一定の成果をあげることができたのは、教員間、特に英語科内に協力体制が確立できたことが大きい。前述したように、研究開始当初、SELHiの意味や方向性について、教員間では必ずしも意思の統一がはかられていなかった。英語コミュニケーション力の向上という基本目標には賛同しつつも、訳読からの脱却やグループワークの活性化といった具体的な方策を実施する段階になると消極的な姿勢を示す教員もいた。
茨城県立日立第一高等学校のSELHiの取組 だが、こうした総論賛成、各論反対の雰囲気は、話し合いを重ねるにつれて、少しずつ変化していった。日立一高では、運営指導委員の助言を受けて、シラバスが作成され、具体的な指導目標や方針・指導計画を共有する作業が始まった。教員個人の自主性を尊重するのをよしとしてきた英語科の伝統がくずれ、科内の共通理解や協力体制を促進する一つのきっかけとなった。同様に、日立二高でも、英語の指導法や授業の進め方について英語科内でアンケートをとり、それをもとに授業改善のための話し合いがなされた。SELHiをきっかけに、ともすればタブー視されがちな、授業の進め方・教え方について率直な意見の交換がなされるようになった。
 もっとも、3年間の研究を振り返って悔やまれるのは、こうした協力体制の確立に、いかにも時間がかかりすぎたことだ。最後の連絡協議会では、研究助言者のある先生から、「研究3年目の学校にしては、何のためのSELHiかという根本的な部分についてコンセンサスが十分に形成されていないという印象がある。」という厳しいご指摘をいただいた。計画・準備段階での甘さが、最後まで尾を引いてしまったことは、今回の研究における最大の反省点の一つである。


4. 合同研究

 日立一高と日立二高の合同研究の中で、最も大きな成果が見られたのは、国際交流の分野である。毎年2回、合同英語合宿が実施され、海外派遣生徒を中心に英語を使った様々な研修活動が行われた。県内外の留学生を招いてのディスカッションフォーラム、日立サミットの開催にあたっては、両校の生徒が協力して実行委員会を設立し、英語劇の上演やディベートコンテストなどが行われた。生徒に英語を実際に使う機会を与え、英語コミュニケーションへの能力と意欲を高める上で、両校の共催によるイベントは、非常に意義のある活動になった。
 昨年のSELHi公開授業では、両校の生徒がディベートで対決するという企画も実施された。本番での生徒たちの奮闘ぶりもさることながら、合同での準備活動や事前研修を通じて、両校の貴重な交流と学習の機会を共有することができた。研究の仕上げとして、年度末には両校の生徒を対象に合同のアンケートも実施された。
 残念ながら、授業や指導法の研究については、両校の連携は限定的なものにとどまったが、英語合宿やサミットをはじめ、単独では実施が困難な様々な学習の機会を提供できたのは、合同指定ならではのことであった。


5. おわりに

 試行錯誤の連続ではあったが、SELHiとしての3年間は、両校にとって、とても意義深いものになった。率直に言って、「地域における英語教育の先進校」になるという目標がこの3年間で十分に果たせたとは思えないが、今後、時代の要請に応えた新しい英語教育を模索していく上で、SELHiとしての経験は両校にとって大きなアドバンテージとなるに違いないと確信している。今回の研究の成果と反省をふまえ、両校ではすでにそれぞれ独自の試みが始まっている。「生徒たちの英語力向上のために何ができるのか。」という根本的な課題は、むしろ、SELHi後にこそ強く問われる。そのことを強く意識しながら、日々の実践に努めていきたいと考えている。



国際教育交換協議会(CIEE)からのお知らせ

国際交流や模擬国連については、詳細な報告書があるとのことですので、興味・関心のある方は茨城県立日立第一高等学校の加藤先生もしくは茨城県立日立第二高等学校の矢野先生までお知らせいただければ幸いです。

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