TOEFL Mail Magazine Vol.52
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SELHiこうの試行錯誤


それぞれのSELHi指定校は特色のある研究課題を設定しています。目標とする生徒の英語力は「読む・聞く・話す・書く」という4技能を駆使して自分の考えを発信できる力です。これはまさに北米大学が留学生の入学要件として期待している力であり、インターネット版TOEFLテスト(TOEFL iBT)はこの要望に応えるために開発されました。そのため、日本の英語教育とTOEFLテストの方向性は同じであると考えます。
本シリーズでは、指定を終了した学校にその学校ならではの成果に焦点を絞りそのエッセンスを報告していただくことを予定しています。高等学校のみならず、中学校・大学、更には小学校の教員の皆様にとっても有益な情報源となるものと期待します。同僚の先生方とも情報を共有し、皆様の授業改革の一助となれば幸いです。

今回は、SELHi企画評価会議協力者および中教審外国語専門部会委員である、当協議会の仲野 友子より、「英語の授業改革: 3か年計画のススメ」と題してお送りいたします。


英語の授業改革: 3か年計画のススメ
国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部    仲野 友子
仲野 友子 プロフィール

仲野 友子(なかの ともこ)

国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部
エグゼクティブ・アドバイザー
SELHi企画評価会議協力者
中教審外国語専門部会委員


 授業力向上を目指し意欲的に授業の工夫に取り組む教員は増えている。彼らは、専門誌からヒントを得たり、学会や研修会に積極的に参加し、志を同じくする教員と意見交換をし、励まし合いながら専門性を高めている。筆者は、そのような場面に同席させていただく機会もあり、その熱意や実行力に敬意の念を抱いている。そして、彼ら一人ひとりが、「我が英語科の指導水準を上げよう」という発想で、自校でリーダーシップを発揮されることを常々願っている。
 外から見ると、教員は「一国一城の主」で、校内において指導方法について研究し合っているという印象を余り受けない。教員が指導法を自負していればいるほど壁を築いている雰囲気さえ感じられる。SELHi指定校においても、事業開始当初、特定の教員のみで研究に取り組む例が思いの外多く、「特定のコースを対象とするのではなく全学年を対象とする」、「全校で取り組む」という応募要件が追記された経緯がある。SELHi指定校の中で、成果をあげている学校は、異口同音に「教師の意識改革」(注1)の必要性を挙げており、「校内において共に切磋琢磨し指導力を上げる意識」もその1つである。個の力を集団の力に昇華させるのは、容易なことではない。教育以外の世界においても全く同じである。
 SELHi指定校が与えられた3年間で、どのように組織的に取り組み、どのようなプロセスをたどったかということは、研究成果とともに指定校以外の学校にとって大いに参考になる。筆者が訪問した指定校は12校とほんの一部ではあるが、それから得た知見と、職場から得た経験をもとに、中期的な目標をもって学校が英語教育の改革に取り組む際に、成功するのに不可欠と考えられる3つのポイントを述べたい。

(注1) 本メルマガ第43号の山岡憲史氏の記事をご参照ください。



T. 大いに議論しよう
 まず、最初の作業は、「3年後自分たちはどのような仕事をしていたいか」という期待や希望を描くことである。英語科教員においては、「どのような英語力を身につけた生徒を育てたいか」、「実践的なコミュニケーション能力とは何か」を議論することである。その際には、目標とする英語力を、できるだけ具体的に「….ができる」というCan - do - statementsで表現し、かつ「なぜそう考えるのか」という根拠の提示も当然ながら欠かせない。様々な意見が飛び交うはず(!?)である。会議という形式にとらわれず、一献傾けながらするのもよし、ちょっとした立ち話でもよし。数名の議論から全員参加など規模も変えながら、結論を出すまで何度でも議論を重ねていくことだ。SELHi指定校によっては、他教科の教員や生徒の声にも耳を傾けている。誰もがある程度イメージ化できる「めざす英語力」を描いていただきたい。
現実離れした目標設定を避けるために、「現在の生徒の英語力はどのようなものなのか」という現状把握も当然ながら必要である。生徒が取得した外部資格試験のスコアや級も1つの指針であるが、やはりCan-do-statementsで具体的に表現することが求められる。
 このようにして、現状把握と目標設定までに、数か月、いやもっとかかるかもしれない。しかし、議論を重ねる過程で、生徒の英語力に対する観察力、分析力が格段に高まるはずである。そして、仲間意識も教員間に育つに違いない。

 現在の生徒の英語力(起点)と3年後に目標とする英語力(着点)が定まった後の作業は、どうやってそこに生徒が無事たどりつけるか、教員全員で日々試行錯誤を重ねながら、道筋を描いていくことである。SELHi指定校は、この試行錯誤を分析的、実証的に検証し成果や失敗を報告書にまとめているので、是非、参考にしていただきたい(注2)

 さて、教員が最も研鑽を重ねるべき指導法の改善について触れたい。まず、お互いの授業を観察し合い気づいた点(優れている点と工夫や改善を必要とする点)を率直に出し合い、それらを分析・整理し、教員全員で取り組む研究課題を絞ることである。あるいは、幾つかのチームを編成し、それぞれが異なる課題に一年間取り組み、共有する方法もよいであろう。また、この課題設定にあたっては、「〜〜をすれば〜〜の力がつく」という仮説を立て、授業実践を通して、生徒の変容を観察しながら実証していく方法が効果的である。

(注2) 文部科学省のホームページから指定校と研究課題を調べ、学校に直接報告書を依頼するなどしてください。

U. 目標達成のためにツールを効果的に使おう

 協同作業においては当事者同士のコミュニケーションを良くすることが必須であり、情報の共有化ひとつとっても工夫と労力を要する。

例えば、

  1. 3年間の取り組み方法を企画書として文章化するだけでなく図式化する。分かり易ければ、それだけ多様な人から意見をもらえる。
  2. 年間活動計画、シラバス、指導案などいわば教育活動の設計図を一元管理し、見直しをしながら修正をかける。 
  3. 目標とする生徒の英語力を共有するために、例えば、スピーキングの伸びを独自に測定する場合には、グレード別のサンプルをビデオ化し、各グレードの基準や注釈を明文化する。
  4. Writing力も同様にグレード別の作品を取りまとめる。
  5. 会議の内容を記録する。いつまでに、何をするというアクション・アイテムは目立つように。
  6. 3か年計画の進捗状況を、管理職や他教科教員にも報告する。

などである。これらの記録は、イントラネット(例えばWiki)を活用すると一元的、かつ体系的に整理でき便利である。個々の教員が書類等を紛失しても、アクセスすればすべて参照できる共有資産となるし、将来、ホームページ上での成果発表も容易となる。



V. 授業研究をしよう

 自分の仕事ぶりを公開し批評を受けることへの抵抗感は誰にもあるが、このハードルは乗り越えなくてはならない。まず、第一歩は上記でも述べたが同僚との授業研究である。SELHi指定校でも授業研究を積極的に行っている学校は、教員のチームワークにおいても授業の創意工夫においても優れている。

 授業終了後の研究会では、授業担当者は指導案をもとに、どのようなねらいで授業を行い、どのような意図で生徒に活動を課したのか、どの部分がうまくいったか、いかなかったか、次の授業にどうつなげていきたいかなどの他に、目標達成に向け順調に進んでいるか、遅れている部分があるか、取り組んでいる指導改善のための工夫がどのような効果をあげているかなど、中期的な視点からも説明する必要がある。また批評する側は、分析的かつ的確に良かった点や改善点を指摘することはもちろんだが、努力を称え一緒に課題を取り組んでいこうという連帯感が生まれるよう配慮することが望ましい。そして、議論を深めるために教授法にかかわる理論を学んだり、他校の公開授業に出向き授業を観察したり、講師を自校に招いて研修会を開くなどして専門性を高めていただきたい。

以上、簡単に3つのポイントを紹介したが、 「力を合わせて英語改革に取り組もう」と決意することが大前提である。小規模の学校においては英語教員は1名の場合もあろう。その場合には同じような境遇の教員を探し出し、情報を交換し励まし合いながら共に取り組むことから始めたらどうだろうか。ある程度の規模の学校であれば、管理職の理解以外に3名の英語科教員の意思統一が図れれば動き出す。そして、前進し続けることである。

「せっかく取り組むなら、SELHi事業に申請しよう」というチャレンジも、SELHi企画評価会議協力者としては、大歓迎である。



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