TOEFL Mail Magazine Vol.55
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特別寄稿-TOEFLの変遷と意味
TOEFLの変遷と意味                   
上智大学外国語学部教授 吉田研作氏
上智大学外国語学部教授 吉田研作

 TOEFLは、私にとって最も思い出深い英語能力テストです。というのは、TOEFLが私が今までに受けたことがある唯一の英語能力テストだからです。今から31年前、まだ上智大学の助手だった時、アメリカへの大学院留学を決意しましたが、その条件としてTOEFLが必要でした。しかし当時、TOEFLという名前は知っていましたが、どんなテストかは知りませんでした。今と違い、CIEEはまだ日本におけるTOEFLの実施母体になっていませんでしたし、TOEFL問題集、というようなものは書店に行ってもあまりなかったのではないかと思います。そんな中で、たまたま上智大学がTOEFLの試験会場になっていたものですから、試験当日にいきなり行き、walk-in candidate (今でもあるのかどうか分かりませんが)として、その場でお金を払って受験番号をもらってテストを受けました。しかし、TOEFLについて殆ど何も知りませんでしたので、まず、テストの長さ(それでも当時は今よりずっと短く、2時間半ぐらいだったでしょうか)に驚きました。集中力が途中で途切れてしまい、これはだめだ、と思いながら適当に付けた答もありました。結果は674点。当時、私はTOEFLの最高点がいくらかさえ知りませんでしたので、これがどれぐらいの点数か分かりませんでした。後に満点が677点だということを、当時のTOEFLのPresidentの Russell Webster 氏とTOEFL委員会の委員長の Louis Arena先生からお聞きして、良く取れたな、と我ながら驚いた記憶があります。

 TOEFLは色々変わってきました。一番最初のバージョン(私が受けた前のバージョン)には、ライティングセクションがあったようですが、そのセクションの点数と文法知識のセクションの点数の相関があまりにも高かったので、二つやる必要はない、ということで、ライティングセクションがなくなったようです。しかし、ライティングをなくしたために、TOEFLの点数は高いが英語が書けない留学生が増えました。つまり、ライティングと文法知識の関係は、文法はライティングの「必要条件」ではあっても、その「十分条件」ではないのです。英語で文章を書くためには文法能力は「必要」だが、文法をいくら知っていてもそれだけでは、英文を書くのに「十分」ではない、ということが分かったのです。そこで、1980年台中頃からTWEができ、直接的なライティング能力を測定するテストが再導入されました。そして、それが、CBTに受け継がれました。

 その後、語学力というものをコミュニケーション能力の枠の中で考える必要性が認識され、ETSでは、コミュニケーション能力とは何かについてさまざまな研究がなされ、Research Papersとして報告されてきました。それらの研究から新しいTOEFLの模索がなされ、その結果が今回のNew Generation TOEFL(iBT)なのです。このiBTでは、複数の能力が統合的にテストされます(例えば、読んだものについて話したり書いたりする、読んだものに関連する講義を聴いてそれについて書く、というように)。つまり、本当に言語が使えるかどうかは、それを使う目的を達成するために必要な、関連する技能を統合してとらえなければ、「妥当性」がないと判断されたのです。

 もう一点TOEFLの変遷の中で気がつくことがあります。それは、点数です。PBTの677点の時代からCBTの300点、そして今回のiBTでは120点にまで引き下げられました。語学能力というのは、あまり細かく点数化しても、それによって差別化できる能力はあまりありません。例えば600点と590点で、語学能力として何が違うのか、ということは殆ど意味がありません。ましてや600点と599点の一点の違いは、どういう語学力の違いを意味しているのか、というのは全くの愚問です。点数が大きくなればなるほど、細かい得点差が生まれ、受験者はその一点一点に一喜一憂します。でも、それは単なる点数の問題で、真の語学力とは無関係です。むしろ、最高点は低いが、その一点一点でカバーされる言語能力の幅が広いテストの方が、本来曖昧性を含んでいるコミュニケーション能力の測定基準として実質的な意味があるのです。

 TOEFLは、世界中の殆どの英語能力テストの原型、あるいは、モデルとなってきました。今回の新しいテストは、日本人にとってかなり厳しい内容になっていると思います。本当にアカデミックな状況で英語が使えなければ高得点がとれなくなっています。しかし、これが逆に、また日本の英語教育に波及効果をもたらし、日本の英語教育の改革につながることを期待しています。

吉田 研作(よしだ・けんさく)先生 プロフィール

上智大学外国語学部教授。外国語学部長、国際言語情報研究所所長。専門は、応用言語学。
上智大学英語教員研究会(ASTE)事務局長、TIRF (The International Research Foundation of English Education) 理事、AsiaTEFL理事(2003-2005)、NPO小学校英語指導者認定協議会理事、NPO国際教育活動ネットワークREX-NET理事、文部科学省スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールの研究開発に関する企画評価会議協力者、文部科学省「『英語が使える日本人』を育成するための行動計画」第1研究グループ・リーダー、文部科学省中央教育審議会外国語専門部会委員、文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」審査委員、航空英語証明審査会会長、他歴任。
著書に、「起きてから寝るまで表現」シリーズ監修(アルク)、「外国人と分かり合う英語--異文化の壁を越えて」(筑摩書房)、「コミュニケーションとしての英語教育論」(共著、アルク)、Heart to Heart(共著、MacMillan Languagehouse)、J-Talk(共著、Oxford University Press)、「英語教育へのチャレンジ」(公文)、「日本語を活かした英語授業のすすめ」(共著、大修館)、「英語を私に近づけるMy First English Diary」 (共著、コスモピア)、「どうなる小学校英語-『必修化』のゆくえ」(共著、アルク)、「『英語が使える日本人』の育成のための英語教員研修ガイドブック」(共著、文部科学省)他多数。


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