TOEFL Mail Magazine Vol.49
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SELHi校の試行錯誤


それぞれのSELHi指定校は特色のある研究課題を設定しています。目標とする生徒の英語力は「読む・聞く・話す・書く」という4技能を駆使して自分の考えを発信できる力です。これはまさに北米大学が留学生の入学要件として期待している力であり、次世代TOEFLテスト(TOEFL iBT)はこの要望に応えるために開発されました。そのため、日本の英語教育とTOEFLテストの方向性は同じであると考えます。
本シリーズでは、指定を終了した学校にその学校ならではの成果に焦点を絞りそのエッセンスを報告していただくことを予定しています。高等学校のみならず、中学校・大学、更には小学校の教員の皆様にとっても有益な情報源となるものと期待します。同僚の先生方とも情報を共有し、皆様の授業改革の一助となれば幸いです。

今回は、このシリーズで初めて、英語科教員以外の先生からのご寄稿です。SELHi研究に取り組まれた高校の「副校長」先生の立場から、ご執筆をいただきました。


大阪教育大学附属高等学校池田校舎のSELHi
大阪教育大学附属高等学校池田校舎  副校長 奥村 芳和
奥村芳和先生 プロフィール

大阪教育大学附属高等学校池田校舎  副校長 奥村 芳和氏 大阪教育大学附属高等学校池田校舎副校長
文科省「初等中等教育における国際教育推進検討会」委員(2004.9.〜2005.8.)
昭和22年生まれ
関西大学社会学研究科博士課程単位取得退学
社会科教諭
英語科の教員ではありません。英語専門のニュースレターという場違いなところに登場してしまったのではないかと感じています。 SELHi実施校の管理職として、思うところを述べさせていただきました。


1. 大教大附高池田のプロフィール
 大阪教育大学附属高校池田校舎は、本年50周年を迎える。1965年に創設され、池田市緑丘の陸軍砲兵工廠ガラス工場の跡地に建設されてからの歳月は、当時の自然林や卒業記念樹を成長させ、100mのけやき並木や巨大なヒマラヤスギの大木、桜やくぬぎ・赤松の自然林に囲まれた緑豊かなキャンパスを出現させた。現在1学年4クラスで全校生徒約488名(男子233名 女子255名)、教員28名、卒業生は7700名を越えた。1972年に生徒の服装を自由化し、同年から前・後期の二期制を採用し34年が経過した。このような教育環境のなかで、個を大切にし、自由で自主・自律を尊ぶ校風が培われてきた。お互いに顔の見える小規模校でこそ可能になった校風といえる。
 附属中学校から定員の3分2が進学するが、中高一貫カリキュラムは採用していない。1・2年生は全員共通科目を履修し、3年生で大幅な選択制を導入している。これは、より高度な幅広い教養を身につけ将来へ備えるとともに、深く熟慮して進路選択を行うためである。3年生のカリキュラムはコース制を取らず、個々の生徒の希望が尊重され、進路に応じたきめ細かい選択ができるように配慮されている。
 生徒たちは、学校への高い帰属意識のもとに、クラブ活動・生徒会活動に励みながら、学ぶ心を持続し高める努力を続けている。
 大学進学は、6割が理系学部へ、4割が文系学部その他へ進学する。約8割の生徒が国公立大学へ、そして、6割の生徒が京都大学・大阪大学・神戸大学・東京大学・国公立大医学部へ進学する。

2. 国際教育・スーパーイングリッシュランゲージハイスクールへの取り組み
 本校および附属池田キャンパスの小中高では、国際教育に取り組んで13年が経過した。その間、高等学校では、「ユネスコの国際教育」を国際教育の原点として位置づけ、横断的・総合的学習の中での体系的な国際教育の実施、帰国生徒・外国人生徒の受け入れや長期・短期の留学生の受け入れ、生徒の海外留学等の試みを行ってきた。また、附属小中高が連携して12年一貫の国際学級や国際コースの設置も模索されたこともあったが実現はしていない。2003年に「ユネスコ協同学校」に加盟が認められアジア4カ国(中国・韓国・フィリピン・タイ)との国際交流が活発に進められている。
 国立大学附属学校も2004年度からの国立大学法人化のもとで、生き残りのための個性化を求められてきた。そのなかで、文科省より2002年より「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)」の募集が開始された。本校では、英語教育の質的向上・教員の資質の向上・国際教育との連携・大学や研究機関との連携を目指して応募し、2003年度から「他教科と連携させた、国際社会に通用する英語力養成のための教育方法の研究開発」のテーマで3年間の研究を開始した。
 文科省は、今、教育の国際化を積極的に進めようとしている。2002年7月に「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想が発表され、その中核的事業としてSELHiが実施に移された。また、2005年8月に「初等中等教育における国際教育推進検討会」が、『初等中等教育における国際教育推進検討会報告−国際社会を生きる人材を育てる−』をまとめ、2006年2月に「国際教育推進プラン」の募集が行われ6月に全国から4地域が指定された。また、2005年9月に、高等教育を対象とした「文部省における国際戦略」が提言されている。
 本校では、SELHiの指定を受けると共に、13年間にわたる国際教育が評価され、2004年9月〜2005年8月の1年間、副校長の私が、「初等中等教育における国際教育推進検討会」の委員として国際教育の有り方を審議する機会を得た。本校は、文科省が推進する二つの教育の国際化政策に軸足を置き、新しい教育の研究開発に乗り出すことになった。

3. バリバリの受験英語からの出発
 英語科の教員の言葉を借りると、SELHi指定にいたるまで、本校はバリバリの受験英語の学校であった。週5日制になってからは、1・2年生の英語の時間は標準的な5時間しか確保できていない。ALTは1年生のOCTのみ、LLの設備もない状態で、Reading・Writing中心の授業が行われていた。英文法は、参考書を与え、定期的にテストをしながら自学自習させるなどの手段を講じ、少ない時間でも学習効果を高める工夫をしてきた。その結果、英語のセンター試験の学校別平均点では、全国トップの成績ですと大手受験業者から耳打ちされることも時々あり、英語科の教員にも高度な英語力育成への自負があった。
 志のある生徒は、卒業後、大学1・2回生の夏休みに、イギリスやアメリカの大学の夏休みを利用して実施される1〜2ヶ月ほどの語学プログラムに参加し、ListeningやSpeakingの能力を高め、英語力の完成度を高める努力をしていた。多くの卒業生たちは、高校時代に文法やReading・Writingなどの基礎をしっかり訓練してもらったおかげで、短期の研修にもかかわらず、自然に言葉が口を付いてほとばしり出るようになり、自分でも驚くほどの英語力と会話力に対する自信を持つことができたと話してくれた。ヨーロッパからの研修生と比較すると、日本からの研修生は、文法力と確かなReading、Writing能力を背景にしてListeningやSpeaking能力の習得が早いとの感想も述べてくれた。
 つまり、本校の英語教育は、文法、Reading、Writing中心のオーソドックスな英語教育ではあったが、ListeningやSpeakingの基礎となる力を培っていたことになる。また、インターネットが発達した現代においては、正確に文章を読み、折り返し的確なる文章を返す能力は、ビジネスや学問の世界において必須能力となっている。限られた授業時間で効率よく高度で確かな英語力を培うには、本校の教授法も捨てられないという英語科の思いは強かった。

4. 理系の生徒にも充実した英語教育を
 本校卒業生の動向を見ていると、生徒数の6割を占める理系の生徒のほうが、大学進学後英文に接したり海外へ出かけるケースがはるかに多い。従って、我々は、高度な英語力は、本校の生徒全員が身に付けるべきものであるとの考えに立っている。SELHi校の中には、英語コース・国際コースを設け、対象を少数クラスに特化して、週に10時間近く、あるいはそれを上回る英語の時間を設けている高校が多数を占める。女子生徒が大半を占め、文系の中核コースとなっている場合が多い。これでは、理系志向の強い生徒は英語教育から取り残されることになりかねない。また、「英語が使える日本人の育成」という裾野を広げる役割は果たせない。
 そのために、本校では、SELHi実施に当たって次のような原則を立てた。

(1) 全ての生徒に(希望者やコース分けは行わない。全ての生徒を対象とする。)
(2) 全ての機会に(英語の授業だけでなく、他教科の授業や教科外活動とも関連させて実施。)
(3) 普通のカリキュラムで(普通科・普通高校としてのカリキュラムは変えない。)

これらの三原則(英語科にとっては研究開発の大きな制約となる)のもとに、よりコミュニカティブな英語能力の向上と英米文化理解の促進を目指して、

a. Reading能力の開発
b. Writing能力の開発
c. ListeningおよびSpeaking能力の開発
d. 少人数クラスでのディスカッション能力の開発

に取り組むこととなった。

5. 国際教育と連携した附属池田のSELHi
 実施計画は盛りだくさんな内容となった。Reading(精読だけでなく多読・速読も重視して)、Writing(和文英訳よりも自由英作文を重視して)、Listening(多聴によって英語の音に慣れることを重視して)、Speaking(AccuracyよりもFluencyを重視して)の4技能のバランスの取れた英語発信能力を育成する授業改革を目指した。


 普通のカリキュラムで実施したため、英語授業外で生徒が自主的に英語に接する機会を増やす努力もした。横断的・総合的学習で実施する国際教育との連携、1・2年におけるリーディングマラソンに取り組ませるために500冊程度の小さな英語図書室の開設、ALT・帰国生たちとの会話を楽しむ週1回のイングリッシュ・サロン、ラジオ講座の活用、外部講師による英語での講演会、エッセイコンテスト・スピーチコンテストへの積極的な参加、夏休みに実施するアクティビティ講座(English in Action)、英国語学・多文化理解研修等々。
 ここでは、国際教育とSELHiとの連携を紹介する。本校では、2005年1月、日本政府が提案し国連総会で採択された国際的学習テーマ「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development)に基づき、横断的・総合的学習での取り組みを発展させた国際教育を進めている。また、この横断的・総合的学習には全ての教科の教員が参加し、文字通り横断的学習を実践している。
 文科省・ユネスコ日本委員会・ユネスコアジア文化センター(ACCU)・本学の特別研究経費から支援を得て、2004年7月の「附高祭(文化祭)」に中国の人民大学附属高校・韓国の上黨(サンダン)高等学校・タイRajabhat Institute Thepsatri附属高等学校・フィリピン教員養成大学附属高等学校から16名の先生と生徒を招き、2005年1・3月には、本校生がタイ・フィリピンを訪問、同年11月には韓国サンダン高校から10名の先生と生徒が来訪し、ユネスコ協同学校(ASPnet)の理念を共通の基盤とした「学びあい」と「協同研究」の相互交流を進めている。この3月には、安藤スポーツ・食文化振興財団の支援を得て、本校の12名の生徒と4名の教員が中国人民大学附属中等学校を訪問し、7月には、人民大学附属中等学校の同数の生徒と先生が本校の附高祭(文化祭)に合わせて来訪した。これらの日常化した国際交流は、SELHiの目標である「英語が使える日本人の育成」の実践の場にもなっている。
 生徒たちは、パワーポイントを使用しながら環境問題・平和の問題・人権問題・各国の文化などについて英語で発表し合い、ディスカッションを始めた。単なる自己紹介型・日常会話型の国際交流ではなく、国連が提唱する「持続可能な開発のための教育」の理念に基づく共通の学習・研究基盤があるため、事前に各国の生徒たちは学習し、英語で発表するための十分なる準備をして交流する。専門的な用語もお互いに学習した結果として相互に理解が可能となる。事前の英文レポートの交換・ビデオレターの交換などの準備作業も英語を使う機会となる。SELHiと国際教育が連携するようになって、全ての教員がSELHiの試みにも関係するようになった。普通のカリキュラムという限られた英語の時間を、横断的・総合的学習と連携させることによって実質的に大きく拡大させることができた。生徒たちにとっても英語を使う実践の場を得ることは、その後の英語学習への大きな動機付けになった。英語学習から興味を失いかけていた生徒が復帰する場面も多々見られた。

6. あとがき
 SELHiは、本校の英語教育に大きな変化をもたらした。Reading、Writing中心のバリバリの受験英語からReading、Writing、Listening、Speakingの4技能をバランスよく教える取り組みが大きく進んだ。授業の一部で取り入れた20人学級の効果も絶大であった。英語科には、普通のカリキュラムで、全校生徒を対象にしてという工夫のしようのない制約を当初から押し付けてしまったが、何とか国際教育と連携することによって活路を見出すことが出来た。
 何事にも積極的に取り組んでくれる生徒というすばらしい資源を、生き生きと生かすことが出来たと思う。エッセイコンテスト、スピーチコンテストでは、全国的な場面で大きな活躍を見せてくれた。SELHiは、本校の英語教育・国際教育にプラスの影響を与えてくれた。
 SELHiの実施最終報告書は、間もなく本校のホームページに掲載する予定である。詳しい内容を知りたい方はそちらをご覧いただきたい。

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