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TOEFL Mail Magazine Vol.42
 

特別企画〜日本でのTOEFLテスト40年を振り返って〜
第7回:「CIEE TOEFLテスト日本事務局10周年記念」
現在180カ国*1以上の国で年間約72万人*2が受けているTOEFLテスト。そのスコアは全世界の5,000以上の機関に利用されており*2、なお増えつつあります。今年の9月から(日本では2006年5月)次世代(インターネット版)TOEFLテストが導入されたことを受け、40周年を迎えたTOEFLテストの歴史を、開発の経緯・データ・当時のエピソードなどを交えながら、シリーズで振り返ってみたいと思います。

*1
TOEFL®- iBT Tips; ETSより
*2
TOEFL® Information and Registration Bulletin 2005-2006(PBT,CBT用)より
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読売新聞の記事第6回では、1990年代に日本でのTOEFLテスト受験者数が増加の一途をたどった様子をお伝えしました。日本での受験者数は世界でもダントツの1位であり、2位の中国にも大差をつけていました*3。1992年5月28日には、当協議会CIEEが日本におけるTOEFL事業委託運営を1981年に開始して10年が経過したのを記念し、ささやかな記念レセプションを開催しました。その報告が同年10月29日に発行され、現在でも残っています(写真)。この記念には米国ETSよりRobert Hill氏も来日し、読売新聞・THE DAILY YOMIURIの取材にも応じました。以下1992年6月12日の読売新聞の抜粋です。

読売新聞の記事

「十年間増え続け、今や世界一になった日本の受験者数について(Robert Hill氏は)『単に北米留学希望者が多いからではなく、国際語、世界の共通語として、日本人が英語を重視しているから』と分析する。・・・(中略)・・・『受験者が将来、グローバルに活躍することが私たちの夢。試験が円滑にできるよう、日本の教育関係者のご協力を』と理解を求める。」

そのほか、当協議会代表やTOEFL事業部長のあいさつから、毎年増え続け、10万人を超える受験者数に対応する試験会場の不足の深刻さが伺えます。(次号に続く)

(*3:TOEFL Test and Score Manual Supplement' 1992-93 Edition; ETSより)

 
 当時の日本

Jリーグ1993年にはサッカーのJリーグが開幕し、その年の流行語大賞にもなりました*。食では、フィリピンのデザートであり、独特の食感を持つナタ・デ・ココやワインが広まりました。1993年にはまた、記録的冷夏に見舞われて米不足になり、タイ、中国、米国から緊急輸入を行いました (1993年米騒動)。 (*http://ja.wikipedia.org/wiki/より)

【画像:こちらより引用】

 
 当時を振り返って

今回は当時、TOEFL事業部で受験者の受付業務および受験者対応を担当していた2名にお話を伺いました。

Sさん:
受験者対応、受験票、スコアの送付と申込用紙受付業務担当
Nさん:
不備申込用紙の返送、返金処理、臨時会場での実施補助と申込用紙受付業務担当
 
受験者増に伴い、試験の実施にはトラブルやイレギュラーな処理も多様化したと思いますが、その処理にあたり苦労されたことをお聞かせください。
Sさん たくさんありすぎて、何からお話ししたら良いか・・・(笑)。トラブルのほとんどは受験者と実施側(米国ETS)の定義の違いから来るものが発端になっていたように感じます。
遅刻者が多くなってきたのが1992年頃でしたが、これもReporting Time(受験票に印字されている会場の試験開始時間のこと)の定義が受験者によって解釈が違うためでした。Reporting Timeを集合時間と解釈している人は、この時間を過ぎても悠然と会場に来ます。でもETSはReporting Timeが試験の開始を伝える時間という定義でしたので、その定義から言うと開始時間になり、この時間に試験会場の席についていなければ当然遅刻扱いとなるわけです。
とはいっても、日本ではアメリカのように『遅刻→即退場』と受験者を帰すのも気の毒なので、会場にもよりますが開始時間を10分過ぎるくらいまでは受け入れていた会場がほとんどだったと記憶しています。
Nさん でも、その「会場によって受け入れ時間が違う」というのが、トラブルにもなりましたよね。「先月受験した時は別の会場で15分過ぎても入れてくれた」とか言われると、断るのに苦労しました。すんなり理解してもらうことはほとんどありませんでしたし、毎回、開始時間後は「もう誰も来ないでね・・・」と心の中で思い、緊張しながら会場の中と外を行ったり来たりしていました。
Sさん 遅刻に関しては、少しでも定義をわかってもらえるようNoticeを作って受験票に同封することで、注意を促したりしました。多少は減ったような記憶がありますね。でも、不思議なことに遅刻してくる受験者って、遅刻以外にも問題を抱えた人が多かったと思うんだけど・・・。
Nさん そうそう。受験票に写真を貼るのを忘れてきたり、ID(身分証明書)が規定のものと違っていたり・・・。会場に時間通りに来ている受験生は、すべて用意してきている人ばかりで、開始時間まで参考書を開いて勉強していたりして待っていましたね。だからこそ、試験は時間通りに始めないと待っている人たちに迷惑がかかると感じていて、遅刻者にはついつい厳しく対応してしまいました。
Sさん 遅刻といっても理由は様々ですから、深刻な事情がある遅刻は別ですよ。
交通機関や、天候のトラブルといった外的な要因での遅刻は、私たちCIEEからETSに事情を説明して、希望のテストが受験できなかったとしても次回の受験を交渉しました。特に地方の場合は会場も少なく、交通機関も限られますから少し大げさにETSに報告したりして、次回への振替受験を許可してもらったことも少なくありません(笑)。交通機関のトラブルや天候は受験者には非がありませんし、ETSも比較的柔軟に受験機会を与える姿勢でしたので、交渉がしやすかったです。実施日の前日はなぜかいつもはあまり気にしないのに、やたらとお天気が気になって全国の天気予報を見たりしていました。
Nさん 雪や台風の情報には敏感になりましたよね。実施にトラブルが発生するということは、受験生への影響はもちろんですが、私たちの仕事にも大きな影響があります。だからこそ、実施日は「何も起こらないで、無事に終了しますように」といつも祈っていました。

Sさん

年に数回と数えるくらいでしたが、交通機関や天候などの事情で次回の受験をアレンジした受験者から、お礼や励ましの言葉をいただくこともありました。それは嬉しかったし、実際励みになりましたね。
Nさん ただ、IDの不備はいかなる事情があっても受験は断っていましたし、再受験というオプションはほとんど認められませんでしたね。
それだけ厳しかったということでしょうか?
Nさん そうです。TOEFLテストの場合、日本の他の試験では認められるものでも不備になります。でも、日本の受験者全員がパスポートや免許証を持っているわけではないですし、アメリカと日本はIDに関しても環境や認識が異なるので、この点をETSに理解してもらえるよう、日本での受験は他のIDも許可してもらいたいと提案したこともありましたね。
Sさん 何度もFAXやレターを送ったり、ETSスタッフの来日時に会議の議題にも挙げました。でも、やはりTOEFLテストは世界共通の試験であること、アメリカの大学の入試のような位置付けのテストであるだけに、日本だけの事情や環境が通用することはなかったです。私も含めてTOEFL事業部のスタッフは、日本の受験者の事情や受験環境を良くしたいという思いはあっても、ETSの世界共通のルールでは認められないことが多いという現実にストレスを感じることが多かったのではないでしょうか。
受験者からのクレームと比べてもですか(笑)?
Nさん 私はやはり受験者からのクレーム対応が大変でした。「辛い」というより、「難しい」というほうが正しいかな。 
受験者が増えれば、それだけ個々の問題が出てくる。たとえば、部屋の温度、リスニングの音響環境などは、できるだけ同じ環境で、公平に実施できるよう事前に会場を下見して確認をしていたのですが、それでも実施当日は「暑い」という声があがり、設定温度を下げると今度は「寒い」という受験者がいる。音響についても、前日の音響チェックの際には何も問題がなかったのに、試験当日一つのスピーカーから出力される音が弱いため、席の配置を変えたりしたこともありました。実際はそれほど動かしていないのですが、少しのことでもやはり気になるのでしょうね。私が明らかに前の席よりもよく聞こえる席に移動してもらおうと促すと、「さっきの席のほうがよく聞こえたのに・・・」とクレームがつく。それでまた元に戻したりするのですが(笑)。
試験の開始時間ぎりぎりまでドタバタしていたことが多かったように記憶しています。
Sさん 試験会場については、受験者の間で様々なうわさや評判があったみたいです。受験の申込用紙には試験会場の希望を書く欄があり、該当の会場番号を記入してもらうようになっているのですが、一つだけしか選べないんです。でもあるとき、ある受験者からの申込用紙を開けたら、申込用紙のほかに、レポート用紙一枚に自分の希望会場をベスト10方式に羅列している人がいて、「ここに書いてあるいずれかの会場で受け付けられない場合は受験しません」という手紙が添えられていたことがありました。
Nさん そうそう、ありましたね。(笑) 
試験会場についてはよほど早くに申込を済ませていないと、受験者の希望どおりにならないことが多かったですからね。 特に大都市の場合は既存会場の席数ではとても収容できないため、私たちCIEEで臨時会場を設営せざるを得ませんでした。しかも、できるだけ一度に大きな人数が収容できる会場となると限られてしまいます。都心から離れた、国際会議なども行う大きなコンベンションセンターなどは比較的間際でも借りられたし、音響も最新式なので受験者にはいい会場だろうと思って借りてみたら、受験者からは「遠すぎる」というクレームを受けたりもしました。
その声に基づき、毎回近場で探すのですが、すでに他の予約で空きがなかったり、近いけど音響機材が備わっていなかったりするため、やはり同じ会場になってしまうわけです。
Sさん 会場の評判も、受験生によって異なっていましたね。「○○会場は先月受験したときに音響が悪かったからそこでは受験したくない」という声があるかと思うと、別の受験者から「○○会場(前述と同じ会場)は、先月とても音響が良かったから次回もぜひ同じ会場で受付してほしい」とリクエストされたり・・・。
Nさん いずれにしても会場のリクエストは、申込用紙に書いてある会場が満席の場合は同じエリア内の空きのある会場になるため、個々のリクエストには応えられません。会場のことについて問い合わせやクレームを受けている時に、受験者の数だけクレームの数があるな、と実感しましたね。(笑)
Sさん 大都市、地方に関わらず、ETSと契約している既存の会場は、そこの学校(団体)に監督者、教室の手配などを行っていただくため、一度にたくさんの受験者を受け入れていただくことは難しいです。ましてや、TOEFLテストの実施は試験時間が長いですし、試験のルールも徹底しているため、会場になってくださっていた学校(団体)は、私たち以上にご苦労がたくさんあったことと思います。そういうご苦労を厭わずに、会場になってくださった方々のおかげで、日本全国に受験の場所、機会を作ることができ、受験者の数が伸びていったのだと思っています。
〜次号に続く
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