TOEFL Mail Magazine Vol.40

ユーザー・レポート「教室からの声」TOEFL ITP利用校
第3回:立命館アジア太平洋大学(APU)
同大学教授および言語インスティテュート事務局長 西川 孝次 先生
 

 このコーナーでは、TOEFLテストの実施運営団体であるETSのプロダクツをご利用いただいている高等学校・大学での導入事例を、現場の教室からお伝えします。
 ETSプロダクツとは、TOEFL-PBT(Paper-Based Testing)テストの過去問題を使った「団体向けTOEFLテストプログラム:TOEFLテストITP」や、インターネットに接続できる環境があればどこからでもアクセスができ、短時間で採点とフィードバックを自動で行う、ライティングの授業には欠かせない「オンライン・ライティング自動評価ツール:Criterion」など、現在日本国内のみならず世界の教育現場の皆様に多くご利用 ・ご活用いただいているETS開発のテスト・教材です。
 今回はTOEFLテストITPを導入されている立命館アジア太平洋大学(APU)西川孝次先生からのレポートです。

 
 立命館アジア太平洋大学(APU)について-------------
開学当初よりアジア太平洋地域と日本の状況に立脚し、国際的に通用する大学作りを目指して、日英二言語による大学教育を実施しています。この教育システムのもとで現在73カ国・地域からの国際学生1,707名と、2,355名の国内学生がAPUキャンパスで学び、文字どおり多文化・多言語環境を実現しています。
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 APUにおける英語教育とTOEFLテスト
 立命館アジア太平洋大学(APU)では2005年度入学生(日本人学生)より年4回のTOEFL-ITPの受験を義務付け、学生がTOEFLテストで高得点を取得することを重視するだけでなく、正課の英語授業の評価を行う際にもTOEFLスコアをその一部に組み入れています。
 APU二言語教育のコンセプトとTOEFLテスト
 APUは、1.日英二言語による専門教育、2.学生の約半数は海外からの留学生で構成するという他に例を見ないコンセプトを持つ大学として2000年4月に開学しました。
したがってAPUでは、学生は母語が何であれ、日英どちらの言語でも専門科目を受講できる言語運用能力を持つことが要求されます。では、この専門科目を受講できる言語運用能力を何によって測るかが問題になるわけですが、APUでは開学以来、その最低ライン基準を日本語については日本語能力試験1級、英語についてはTOEFL500点相当と定めてきました。
APU独自でその力を測るテストを開発することが理想ですが、開学から日が浅いため、まだ独自テストを実施するにはデータが蓄積されていないこと、むしろ社会的に認知されたテストを利用して測定するほうが、学生にとってはみずからの到達度を社会的客観的に認識でき、また目的が明確になるという観点からTOEFLテストの導入を行いました。
 TOEFL500点というのは北米の大学への留学基準からすると若干低いラインですが、専門科目を履修しながら同時に引き続き英語力の向上をはかるという考えから、やや低めに設定されています。したがって、通常は入学後1年半以内で、またいくら遅くとも専門科目の履修を開始する大学3年になる段階では日英両言語で前に述べた最低ラインに到達していることが必要になります。また入学段階では、どちらかの言語で最低レベルに到達していることが入学要件となっています。APUでは、入学段階でこの最低レベルに到達している言語が日本語であれば日本語基準学生、英語であれば英語基準学生とよび、区別をしています。
最近日本国内の大学では、英語力の到達レベルを測る指標としてTOEICテストを用いる例が増えているようですが、APUでは、あくまで専門科目を受講できる英語力、いいかえれば「アカデミック・イングリッシュ」を身につけるという観点からTOEFLテストでの高得点取得を奨励しており、それはTOEICテストでの高得点取得にも連動していくと考えています。
 日本人学生にとってTOEFLテストの意味するもの
 日本人学生のほとんどは日本語基準学生ですから、大学3年になる段階ではTOEFLテストで500点のスコアに到達することが求められることは、先に述べたとおりです。したがって、言語教育科目としての英語科目では、「聞く、話す、読む、書く」の四技能をバランスよく身につけるだけでなく、TOEFLテストにおいても最低500点のスコアがとれる力をつけることが到達目標ということになります。
 APUでは言語教育科目としての必修英語科目として英語入門(4単位)、英語T(4単位)、英語U(4単位)、英語V(4単位)を設置しています。入学した学生は英語入門、英語T、英語Uの12単位(1年半)を履修することによって先に述べたTOEFL500点レベルに到達しなければならないわけですが、ほとんどの学生は入学段階でTOEFLスコア換算で400点以上に達していますので、英語T及びUの8単位(1年間)でTOEFL500点に到達することになります。しかし、大学に入ってから初めてTOEFLテストを受験する学生が多く、テスト形式にとまどい、力が発揮できないことも多々あることから、試験に慣れるという意味も含め、APUでは年8回TOEFL-ITPを実施し、そのうちの年4回については受験を義務付け、正課の英語授業の評価とリンクするようにしています。したがって学生は、正課の英語授業に能動的に参加し自己学習に励むことによって、TOEFL-ITPでのスコアも上がり、みずからの英語力を客観的に把握し、さらに上を目指して努力するということが期待されています。その意味では、TOEFL-ITPはまさに学生の英語学習のモチベーションを高める「道具」になっているといえます。
 TOEFL-ITPを受験する際の受験料については、1年生は年4回の義務受験分の費用が低く抑えられるよう、また上回生についても年1回は500円の学生負担で受験できるよう、「APU国内学生父母の会」から支援を受けています。
 今後の課題と展望
 一般的に外国語習得の過程は、なだらかな坂を上るというのではなく、平地を歩いていて、ある瞬間段差の大きな階段を一段あがり、また平地を進んでまた段差の大きな階段をあがるというように形容されますが、APU学生(下級生)にとってはTOEFL500点というのがひとつの大きな段差になっているようです。
正課の授業をまじめに受け、英語で積極的にプレゼンテーションを行い、レポートも一定英語で書くことができるにもかかわらずTOEFLテストではスコアがとれない、という学生も存在します。学生の中には正課の授業内容をTOEFLテスト対策的なものにしてほしいといった要求が生まれたり、あるいは教員の側からは限られた授業時間の中で四技能を伸ばしかつTOEFLテストでスコアを取るというのは非現実的であるという意見も当然出されます。しかし、授業で四技能をバランスよく伸ばしていけばTOEFLテストは「恐れるに足りず」であり、矛盾するものではないという考えのもとで、TOEFLテストを視野に入れつつ英語教育をすすめています。
 また、500点の壁があと数歩で超えられないといった学生を対象に、エクステンション・TOEFL対策講座も開き(2005年度春セメスターでは約140人が受講)、リスニングを中心としたトレーニングも行っています。
いずれにしても、「仕事で使える」レベルまで英語力を学生につけることが大学に求められた社会的願いであり、APUではアカデミック・ニーズと社会的ニーズの双方に応えるべく英語教育の充実・改善に取り組んでいます。
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