今回は、日本人英語話者が適切に対応できるようで対応できない、"Help
yourself"という表現に焦点をあてて考えてみる。この表現、一見なんの誤解も招かないようであるがそれに対する対応の不適切さにより、ちょっとした誤解を招いてしまうこともあるようだ。
ある高校生は留学していたとき、朝食はいつも、"Help
yourself"といわれて「ご飯もつくってくれないのか。なんて冷たい、手抜きの多い家族なのだろう。食費はお支払いしているのに、アメリカとはこんなところなのか。」と思ったという。ホスト・ファミリーにしてみれば、そんなつもりではなかったに違いない。それが、その家族の習慣なのかもしれないし、好きなものを食べてほしいなどとも思ったのかもしれない。
またある大学生は留学先で一人で留守番をすることになった時、ホスト・ファミリーに「お昼は冷蔵庫にあるものをなんでも"Help
yourself."」といわれたが、他人の冷蔵庫を勝手に開けてものを食べるということができず、結局なにも食べなかったという。帰宅後、「何も食べなかった」というのを聞いたホスト・ファミリーは、なぜ留学生がお昼を食べなかったのかわからなかったようだ。そこで思わずホスト・ファザーは、"She
is weird."などと言ったらしい。留学生にしてみれば、遠慮するという行為は善意であったのだが、ホスト・ファザーにはどうやらそれは理解してもらえず、「変な日本人、どうなっているんだろう?」などと思ったのかもしれない。どうやら、"Help
yourself"といわれたら、それに適切に対応しなくてはならないようだ。つまりこの場合、冷蔵庫を開けてお昼を食べても、「勝手に他人のものを食べた」などとは思われないということである。
さてそれでは、冷蔵庫にあるものを何でも食べていいのだろうか。
母語話者によれば、やはり遠慮はつきものであるという。高そうなステーキが一枚だけしかなかったらそれを食べてしまう人はいないようだ。また飲み物にしても、ビールが1缶だけしか入っていなかったら、遠慮してそれには手をつけないでおく、とかいうように。それから、こんなことはないと思うが、"Help
yourself"と言われる前に、許可なく他人の冷蔵庫を勝手に開けて何か飲んでしまったりすると、大変失礼に値する。
以上、一見なんの変哲もないこの表現でも、意図するところがうまく理解できないこともあるようなので、状況に応じて適切に対処できるようになりたいものだ。