TOEFL Mail Magazine Vol.38
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e-Language in Action
第2回:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスとメルボルン大学のLanguage&Culture Exchange(1)
 
鈴木佑治先生
鈴木 佑治
慶應義塾大学環境情報学部教授
兼 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科委員
 報告
長谷部 葉子先生
関口 幸代先生
長谷部 葉子
関口 幸代
慶應義塾大学環境情報学部訪問講師
メルボルン大学文学部
アジア言語社会研究科専任講師
同大学文学部大学院
言語教育工学(CALL)科博士課程在籍
 

 前回に引き続き今回もe-Language in ActionにおけるLanguage & Culture Exchangeについてお話します。
前回は岐阜市立梅林中学校の上手留美子先生と鈴木研究室の山中司君によるLittle Lever Schoolとの言語・文化交換プロジェクトを紹介しました。上手先生にはまた後日改めて現在どのような活動をされているのか伺いたいと思います。今回は、大学レベルの言語・文化交換プロジェクトを紹介します。わけても、正規のカリキュラムとして制度化され今後も多岐にわたって広がる可能性を持つプロジェクトを取り上げます。その内の一つが慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)とメルボルン大学とのLanguage & Culture Exchangeプロジェクトです。前回でも述べたとおり、このようなプログラムが成熟するには多くの方々の暖かい協力と支援がなければできません。関係者の方々への感謝の意を込めて、まず、メルボルン大学との交流がどのようなきっかけで始まったのかそのいきさつを簡単に述べます。

 2002年のある日、神戸大学国際文化部の加藤雅之先生が私の研究室を訪ねてきてくださいました。加藤先生は英語CALL教材の開発をされており、私の活動を知り遠路はるばるSFCまでお出でくださいました。当時私は、インターネットを使い国内外の人々といつでもどこでも話せる「場」作りを模索していたので、米国のウイリアム&メアリー大学での研修で行っていたジョイント・プロジェクトの実践などを交えてSFCのプロジェクト発信型の英語プログラムの説明を致しました。それを聞いた加藤先生は神戸大学の英語の授業でも同じようなことをしたいと考え、話はトントンと進み加藤先生のクラスと私のクラスとジョイント授業の実験をすることになりました。その後、私も関西に行き加藤先生の研究室に立ち寄り、神戸大学の先生方と一緒に英語教育について歓談いたしました。2003年には神戸大学で開かれた関西英語教育学会の大会に講師としてご招待いただき、関西で活動されている先生方のCALL開発の成果を見せていただき意見を交換いたしました。
  2003年のある日、加藤先生よりメルボルン大学でCALL開発をしている関口幸代先生を紹介していただきました。同年、日本に帰国した折に私の研究室を訪ねてこられましたので、私たちのプロジェクトを紹介したところ、メルボルン大学の日本語クラスとSFCの英語のクラスとでLanguage & Culture Exchangeのジョイント授業をしようということになり、これもトントン拍子に事が運び2004年に発足し現在に至っております。SFC側の担当者は訪問講師の長谷部葉子さんです。関口、長谷部の両氏が担当するジョイント授業は2005年度より正規のカリキュラムとして導入され本格的に動き始めました。これは教員としての能力はさることながらお二人のきめ細かい献身的なコミュニケーションと機知機転の産物です。

 2005年3月、私、長谷部さん、山中司君はメルボルン大学を訪問し、関口先生の博士論文の指導教員であるRobert Debski教授や関口先生およびメルボルン大学とその近郊の多くの先生方とLanguage & Culture Exchangeの今後の展開に関しとても有意義なワーク・ショップを開きました。SFCにおけるプロジェクト発信型の英語授業はメルボルン大学でも理解していただき、これからは私の学部や大学院専門課程の授業から共同研究にまで発展しつつあります。それもこれもまず学部1、2年生の外国語の授業の充実がなければ感動を得られず実現しません。今回から数回にわたり、メルボルン大学の関口先生の日本語とSFCの長谷部さんのスキル英語の授業がどのような形態でLanguage & Culture Exchangeのジョイント授業・プロジェクトを展開しているのか現場から報告いたします。今回は長谷部さん、次回は関口先生が学生の声を交えてそれぞれの立場から生の声を直接伝えます。

 
 長谷部葉子さんの報告
Language and Culture Exchange between Keio University (SFC) and Melbourne Institute of Asian Languages and Societies, Sydney Myer Asian Center at Melbourne University

(A group of students enrolled in Yoko Hasebe's English courses offered at SFC and a group of students enrolled in Sachiyo Sekiguchi's Japanese courses offered at Melbourne Institute of Asian Languages and Societies, Sydney Myer Asian Center, Melbourne University, have been exchanging ideas and findings on their languages and cultures. Through a series of internet video conferences, the students on both campuses discuss various related issues. This has been proved to be very effective to build up foreign language skills (productive skills in particular) and foster a profound sense of respect toward the culture of a target language.)

長谷部葉子さんの報告長谷部葉子さんの報告
【Melbourne students (on screen) talking with SFC students :May 18, 2004】
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 今回から数回にわたり、メルボルン大学のMelbourne Institute of Asian Languages and Societies, Sidney Myer Asia Center の関口幸代先生の日本語クラスと慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の長谷部担当のスキル英語クラスとの、2004年5月から現在に至るまでのLanguage Exchange Projectについて報告いたします。今回は日本側の鈴木佑治研究室に所属している私の立場から、この交流projectの始まりのきっかけとなった2004年度春学期の活動に焦点を絞ります。次回から今までの交流活動について、交流の段階別にメルボルン大学の関口先生を交えて説明します。これらの報告を通して大学教育におけるLanguage Exchange Projectの一例を紹介し、これからLanguage Exchange Projectの実践を考えている先生方の参考にしていただけたらと思いつつ、同時にご意見ご感想ご質問をお寄せいただければ幸いに存じます。

 先に鈴木佑治先生より、鈴木佑治研究室と関口先生とのご縁については紹介がありましたが、関口先生と私のご縁は、鈴木佑治研究室に送信された2004年4月下旬の1通のe-mailからでした。それは、メルボルン大学とSFCとの接続実験実施に関する内容で、私自身が2004年4月からSFCの教員となり、新学期の英語の履修業務も一段落して、鈴木佑治研究室の研究打ち合わせに始めて出席した日でした。しばらく以前から鈴木先生と関口先生との間でLanguage Exchange Project案が進行中で、ちょうど5月の連休明けから数回にわたってポリコムで接続実験をしてみようという段階にきていました。私は2004年度4月より訪問講師として採用されましたが、それ以前は鈴木佑治研究室の訪問研究員として、英国のマンチェスター大学と当時非常勤として英語を教えておりました千葉商科大学政策情報学部とのLanguage & Culture Exchange Projectを担当しました。その関係で、2004年5月18日の初回接続実験の対象クラスの一つにSFCで私が担当するスキル英語プログラムのAレベル(TOEFLテスト<TOEFL-PBT>スコア 426〜450)の授業が選ばれ、メルボルン大学とのLanguage Exchange Projectの実験授業をすることになりました。上記の写真はその様子を示す一コマです。実践実験は成功し2005年4月より正規の授業として継続されるに至っております。以下、その接続実験をSFC側より報告いたします。

 この接続実験のお話をいただいた当時、長谷部担当のprojectクラスの履修生約10名は、自分達の視点から、「日本文化・日本の生活」を海外の大学生にWEB上で紹介・発信していくprojectの主旨に興味を抱きつつ、新学期に入ってやっと授業にも慣れてきた段階で、まだTOPICが絞りきれていませんでした。自分達からWEB上で紹介・発信する「日本」を海外の大学生に知ってもらい、興味を抱いてもらい、そこから「交流の糸口」を探そうというコンセプトのもと、project授業は一見順調に進行しているようでした。しかし、実際は自分達が発信する対象者が明確になっていない、「姿の見えない未知の存在」であるというのは、学生自らのmotivationを高めていくにはなかなか厳しい状況でした。それでも「日本の大学生の日常生活」・「体育会の活動」・「自分の育ってきた精神史」・「折り紙にこめられた日本人の心」等とテーマは多様性があり、彼らなりにかなり頑張っていたようです。
 一方この接続実験に参加するメルボルン大学の学生は中級日本語を履修していて、授業を通して日本社会・日本文化の様々なトピックから自分の興味分野を絞り込み、リサーチし、発表も終わり、学期末に差し掛かる直前で、内容的には完成度が高くなっている時期でした。学期の時期が微妙にずれているため、当然ですが、授業の進行状況・学生のプロジェクト内容の完成度にもメルボルン大学とSFCとで大きなズレが生じています。簡単にいえば、メルボルン大学側は、いまやプロジェクトの完成目前、日本語にも慣れてきて、今まさに絶好調で、SFC側はやっとエンジンをふかし終わって一般道路に乗り入れてきた、ウォームアップ終了直後という感じです。

 この時期のズレからくる学生の温度差を解決するために、メルボルン大学側は、自分のリサーチについて色々と日本語で質問したい、つまりトピックの焦点が定まっている段階で、SFC側は、英語もまだ慣れておらず、TOPICも絞りきれていない段階であることをふまえ、この「差」を活かした交流内容を関口先生とe-mailで何度も相談しあいました。その結果、接続実験の1時間の中で、メルボルン大学側はトピック別3〜5人ずつの4チーム、SFC側は10名1チームとして、今回の交流実験では使用言語は日本語で、お互いに自己紹介をし合い、少しでも打ち解けあった後でメルボルン大学側からの質問タイム、次にSFC側から今後のproject内容の簡単な説明、そしてその完成品はSFCの学期末にWEB上で発表し見てもらう、ということに落ち着きました。 事前の数回の教員間での接続実験の末、2004年5月18日9:00a.m.〜10:00a.m.の接続実験は無事に終了しました。このときの接続実験の1時間がどのようなものであったかは、この報告の最後に添付しました、参加したSFC側の学生のコメントから直接皆様にご想像いただきたいと思います。

 結論から先に申し上げると、この春学期の一度だけの接続実験における1時間の交流を突破口として、SFC側の履修生の自分のprojectへの取り組みが、「楽しみながら」かつ「真剣」なものへと一気に山を頂上めがけて登り詰めていきました。一度それも1時間だけ交流した相手に「自分の中のproject」を伝えることの喜び、それがその唯一の動機付けだったといっても過言ではないでしょう。接続実験が行われたのは、今回は日本語であったにもかかわらず、SFC生のその後の英語への意欲が高まったのです。同世代の仲間と交流することの大切さを実感した接続実験でした。
 このとき参加した学生たちのコメントがきっかけとなって、春学期1回の接続実験から、秋学期には3回の交流、そして2005年度春学期には全13回の授業のうちの7回まで交流セッションを行うまでになりました。この背景には、鈴木佑治先生、関口先生、システムサポートをご担当下さった皆様、協力してくれた大学院生、学生の皆さんの多大な労力とご助力があります。次回からは、これらの皆様に感謝をしつつ、各方面から皆さんをご紹介しつつ、報告を進めさせていただきたいと思います。次回は関口先生がメルボルン大学側の視点でこの一連の流れを報告してくださいます。以下、SFCの学生からのフィードバックをそのまま紹介いたします。

 
長谷部さんは学生のこのようなコメントを受けて2005年4月から始まる活動を練り上げていったようです。関口先生と長谷部さんはメール交信やビデオ・カンファランスを定期的に行い、お互いの間で相当密度の濃いコミュニケーション・ネットワークを築き上げてきました。このようなジョイント授業は、こうした教員間での教材・教授法を巡った研究の場ともなります。お二人は近い将来、これらの活動をまとめて共著で論文を書くことを計画しているようです。また、上述したとおり、私自身も関口先生の指導教員のDebski教授との言語学のジョイント授業および共同研究をすることになり、大学院の学生のジョイント指導も現実的な話になりつつあります。
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