体験レポート インドネシア「日本語クラスサポート」

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入念な準備に支えられたインドネシアでのハート溢れる日本語授業

授業の無い空き時間にも、図書館にいることを子どもたちがかぎつけて集まってくる。それほどの注目と人気を集め、子どもたちに愛された日本語の授業は、入念な準備と現場での高いコミュニケーション能力によって支えられたものでした。

東南アジアが大好きな大学生、飯田葉月さんの思慮と機知に富んだ3週間の活動は、日本語教育が盛んなインドネシアでもなかなか日本人に会う機会のない中部ジャワ地域の街、スマランの子どもたちや地元の教師たちにとって大変貴重な機会となり、飯田さんにとっても日本語教師としての素晴らしい第一歩となりました。文字通り、ハートでいっぱいになった思い出のクラス写真。そこに至るまでの裏側をお話しいただいたインタビューです。

子どもたちの心をぐっと掴んだもの

私の通う大学には、先生も学生も様々な国から集まってきます。海外から来た先生や大学院生のお子さんに日本語を教えるボランティアをしていたのがきっかけで、日本語教師を目指したいと思うようになりました。大学3回生の夏に海外で日本語教師のボランティアをしようと考え、今回の参加につながりました。

出発前はまず自己紹介をインドネシア語でもできるように練習しました。前年にベトナムの児童福祉のボランティアでは、英語で自己紹介した時に、全部は伝わってないように感じたので、視覚でも伝わるように、A4サイズの紙に自分や家族や友だち、ペットや日本のご飯等の写真を貼って、ラミネートをして何枚か持っていきました。子どもたちには英語より絶対わかりやすいと思いますし、会話のネタにもなると思って用意しました。

首から下げられるネームタグに自分の名前を書いて、かわいくデコレーションして持って行ったのですが、子どもたちがネームタグを見て名前と顔を覚えてもらうのに役立って交流を深めることができました。一回では覚えてもらえないと思いますし、子どもたちも何度も名前を聞きにくいと思うので、ネームタグを持って行って良かったです。

子どもたちは、私のことを“Miss Hazu”と呼んでくれました。どこへ行っても子どもたちが“Miss Hazu ! Miss Hazu!”と言いながらついてきて、向こうでは先生への敬意を表す行為なのですが、順番に右手にキスをしてくれるんです。最初に写真を見せたから、私がどんな人間なのかわかってもらえましたし、持って行って正解だったと思います。

持ち物にもひと工夫、ひと手間

私も多くの方と同じように折り紙を持って行ったのですが、柄がついているものや、綺麗な色でデザインされたものを選んで持って行ったところ、とても喜んでもらえました。インドネシアにも折り紙はあるのですが、単色のものばかりみたいなので、柄のついた折り紙などは珍しくて喜んでもらえると思います。

あと、私は絵本を持って行きました。どこの学校にも必ず図書館があると思い、時間はかかるのですが私が子どもの時に読んでいた童話の絵本に、インドネシア語の訳をつけたものを四冊作り、図書室に寄贈しました。日本語と照らし合わせて勉強のちょっとした助けになるかなと思って持って行きましたが、よく読んでくれていました。

カメラも持って行こうと思ったのですが、自分のために残す写真ならスマートフォンでいいかと思って、だったらチェキを持って行って一緒に撮った写真を子どもたちに渡せるようにしようと思いました。

ホストファミリーにはお土産に風鈴を持って行きました。玄関に飾ってくれて、ドアを開けるたびにチリンチリン鳴っていたので、「うるさくない?大丈夫?」と聞いたら、「この音が涼しくさせてくれるわ」と気に入ってくれました。扇子も考えていたのですが、逆にインドネシアの扇子をもらって、家にあります。

大学では日本語教授法の授業を受けていて、受け身や尊敬語について取り扱っていましたが、インドネシアの小中学生には適さないなと思って、自己紹介のやり方を教える授業をプランして行きました。

着いてすぐに感じたインドネシア人の優しさ

スマランの空港に着いてから携帯用のWi-Fiを買おうと思って空港で聞いた結果、ジャカルタでしか売っていないかもしれないと判明し、とりあえずご飯を食べにWi-Fiがつながるダンキンドーナツに入りました。そこに偶然インドネシア人のCAさんもいて、どこから来たとかこれからボランティアするとかお話しをしたんですが、その人がとても良い人で、タクシー乗り場まで連れて行ってくれて、ドライバーに事情を話してくれました。

Dejavatoのオフィスの住所を伝えたんですが、タクシーが着いた場所は結構離れていました。降りてからオフィスを探しながら歩いていると人が集まっていたので道を聞くと、みんなやさしく教えてくれました。たまに「こんにちは」と話かけてくれたり、子どもが「バイバーイ!」と見送ってくれたり、本当にみんな優しかったですね。

初日の深夜に目覚めたワケは・・・

インドネシアについた初日、寝ようと思ったらエアコンの電源の入れ方がわからなくて、ホストファミリーに聞こうとおもったら、とても早く就寝してしまっていました。初日だったので起こすのも気が引けたのでそのままエアコン無しで寝ることにしました。すると深夜3時くらいにぱっと目が覚めて、「何、この水は・・・」と自分でも戸惑うほどのものすごい量の汗をかいていて、いまだかつてない恐怖でした(笑) 次の日からは使い方を教えてもらい快適に眠れました。

毎晩スコールで雷も鳴って、最初は音にびっくりしていましたが、それも次第に「この音が落ち着く」と感じるほど慣れていきました。

無口に見えたお父さんが色々な所へ連れて行ってくれた

ホストファミリーのことも大好きになりました。私がお世話になったお家はお医者さんの一家で、訛りはありましたが比較的英語が話せる家族でした。特に長女の方はペラペラだったので助かりました。お父さんは最初無口な人なのかと思ったのですが、「~に行こう」とか「~食べに行こう」とかよく誘ってくれました。

高校に通う次女の子の迎えと一緒に私のことも迎えにきてくれていたのですが、毎回「バソク食べに行こう」と言って、牛肉のすり身のミートボールをスープに入れたインドネシア料理なんですが、それを食べて帰りました。

家に帰ってからまたすぐに「Hazuki、ご飯だよ」と言われて「さっきのがご飯じゃないの?!」と思いながらお家で夕食も食べました。辛い香辛料を入れて私が「辛い!」と言っているのを笑われたりして、食事を通じても仲良くなりましたね。

日本食、私はカレーを一回とお好み焼きを一回作りました。特にお好み焼きが大好評で、お好み焼きの粉一袋全部使って作った分がすぐ食べきって、「今度インドネシアに来る時にお好み焼きソースを持ってきて」と言ってくれました。今でも「いつ来るの?」としょっちゅう連絡があります(笑)

週末は、お寺や田舎の方にあるマーケット等に連れて行ってくれました。お父さんは仕事で出張の時も多かったので、その時は次女の子が映画に誘ってくれて、彼女の友だちや同時期にホームステイしていたスイスから来た女の子と3、4人で映画を見に行きました。英語のアメリカ映画をインドネシア語の字幕で見たのでかなりの勉強になりました。

滞在中に誕生日を迎えたのですが、Dejavatoのスタッフがサプライズで祝ってくれたりもして、3週間では足りないくらい楽しいことが多かったです。

即興で『桃太郎』を英語で語る

派遣された学校はスマランの中心部に近い学校で、小学校と中学校が併設された学校でした。50分授業で午前中に2~3コマ、午後に1コマが私の活動時間でした。日本語の授業だけでなく、英語の授業もお手伝いをしました。ある時、授業で童話の話をしていたら、先生が「今日はMiss Hazuが日本の童話を英語で教えてくれます」と言い出して、「5分時間をあげるから日本の童話をジェスチャー使いながらでもいいので説明して」とお願いされました。そんなことをやったことがなかったのですが、子どもたちがワクワクしながら待っているので、『桃太郎』の話を思い出しながら、なんとかボディランゲージも使いながら英語で語りました。あの時は結構焦りました(笑)

空き時間は、子どもたちとバドミントンやバスケットボールをして過ごしたり、図書室でお話ししたりしていました。空き時間は図書室で待機するように言われていたので図書室にいたのですが、子どもたちが「Miss Hazuが図書室にいるって!」と誰かから聞いて図書室に集まってくるんです。それで「ドラえもんの歌を歌って!」とか、「Let It Goを英語で歌って!」と頼まれて、頑張ってアカペラで歌いました。子どもたちが家から持ってきた物を発表するプレゼンテーションの採点も頼まれたりもしました。日本語を教えるサポートと言っても、思いもしない難題を振られることもあるので、そういう心構えもしておいた方がいいと思います。

給食は子どもたちと一緒に食べました。インドネシアのサンバルというソースが凄く辛くて、子どもたちはみんなパクパク食べていたのですが、私には辛すぎました。そのうち子どもたちがわかって「これ辛くないからあげる」と言ってくれて辛いのと交換したりもしたのですが、給食の時間も本当に面白かったです。

授業ではまず子どもたちの名前を覚えるのが第一だと思いました。名前付きで「シャンディちゃん、これどう思う?」と質問して答えてもらったりとか、クラスのリーダー的な生徒に質問をしたりして一緒に盛り上げたりしました。考える時間を設けて、BGMとしてスマートフォンからドラえもんの歌を流すと凄く盛り上がりました。

最初苦労したのは、小学生も中学生もなかなか静かにしてくれずに騒がしくてコントロールが難しい点でした。先生たちは手をパンパン叩いていたのですが、一時静かになってもまたすぐに騒がしくなってしまうし、手を叩く音もうるさいので何か違う方法はないかと考え、うるさくなったら話すのを止めて黙って指を立てて静かになるまで待つようにしました。その説明をして実際にやってみると、静かになり、「授業していい?」と聞いて「OK!」となって上手くいきました。

ハートの折り紙

日本を出発する前は、折り紙は鶴を教えればいいかなと思っていたのですが、鶴は今までに習っていることも多くて折れる子もいました。じゃあ何を教えようかと迷っていた頃に、担当のアリ先生と話していて「インドネシア語で“I Love You”って何ていうか知ってる?」とふと聞かれたのですが、それがきっかけとなって、みんなでハートを折ろうと思いつきました。

ハートをどう折るか知らなかったのですが、どうしてもハートが折りたくてインターネットで調べると、シンプルで簡単なものから、立体的に作れる複雑なものまで色々ありました。その中から出来栄えも良くて教えやすいものを選び、まずは家で折る練習をしました。次に説明の仕方をアリ先生相手に練習して、大丈夫だと確かめてから授業に臨みました。

インドネシア語で“I Love You” は“Aku cinta kamu”と言うのですが、最後にクラスのみんなと折ったハートを持って“Aku cinta kamu!”と言って記念撮影をして、大成功でした。

 

インドネシアの団体によるプログラム紹介動画の中で飯田さんの活動の様子が少し紹介されていますので、こちらもご覧ください。(開始1分30秒と最後の20秒ほど)

触れて感じた文化の差

生活の面でなかなか慣れなかったのはトイレですね。インドネシアは水で流すスタイルなので、紙がなく、自分で用意しておいた方がいいと思います。 

ホームステイ先はムスリムの家庭なので、朝お祈りに行くのですが、「11時に映画行くから」と言っていても、「まだお祈りに行ってないから12時半になった」というように、習慣や時間の感覚が違い、時間通りに予定を進めるのが大変でした。日本人の感覚でいると「どうして約束の時間通りに動かないんだ」と思いますが、最後の方は自分も「どうせ遅れるしゆっくりしようか」と思うようになっていました。

お好み焼きを作る時は、豚肉が使えなかったので鶏肉で作りました。あと一つ、びっくりしたことがあったんです。学校で仲が良かった美術の男の先生がいて、日本に帰る前に挨拶して握手しようと手を出したのですが、「ごめん、これからお祈りで、もう手と足を洗っちゃったから誰にも触れられないんだ」と断られて。「どうして?!これで会うのは最後なのに!」とショックで(笑)、食べ物以外で初めて感じた宗教の差でした。

でも、その先生は、こんな素敵な絵を描いてプレゼントしてくれたんです。「首はどうしたの?!」と聞いてしまいましたが、最初は上半身だけを描くつもりが、途中から全身描きたくなったみたいです(笑)。

空港でも別れの時に、今巻いているこのストールとか色々な人がプレゼントをくれて、嬉しくて泣きそうでした。「また戻ってくるね」と言って最後は感動で終わりました。インドネシアを「本当にいい国だ」と思いました。

自分の弱いところ強いところを発見できる

自分一人で言葉の通じない国に行って、学校で教えたり現地の生活をするということは、大変な面もありますが、そのような環境だからこそ、自分の弱いところもわかったり、逆に「自分って意外とこんなこと出来るんだ」という新しい発見もあります。

日常生活ではそのような発見はできませんし、学生のうちにこのような経験ができると、「こういうことが出来たんだから、次はこれをやってみよう」と自分の可能性を広げていけるので、絶対に海外に行くべきだと思います。特に将来子どもと関わる仕事をしたいと考えている方にとっては、自分の出来ることの幅が広がるので、是非体験していただきたいと思います。

飯田さんが参加したプログラム

インドネシア「日本語クラスサポート」プログラム

多くの生徒が日本語を学ぶインドネシアで、日本語授業のアシスタント、日本文化紹介

世界で2番目に日本語学習者数が多いインドネシアですが、地方の都市では日本人のネイティブスピーカーと接する機会がなかなかありませんし、現地人の日本語の先生も日本に行ったことが無い方もいます。日本の文化や日本語にさらなる興味を持ってもらうため、正しい日本語の発音や使い方をサポートするため、日本で暮らす私たちができることがたくさんあります。活動先は言語クラスのサポートが中心となる高校/大学と、日本の文化を紹介する活動が中心となる幼稚園/小学校の2種類が設定されています。滞在はどちらもホームステイです。言葉と文化を通じた交流を楽しんでください。

インドネシア「日本語クラスサポート」プログラムの詳細はこちらをご覧ください