ANAグランドスタッフ 金子友香さん

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プロフィールに並ぶ「国際」のキーワード。大学で所属した国際交流サークル、夏休みに参加した二度の国際ボランティアプロジェクト、インターンとして活動した国際教育交換協議会(CIEE)。金子友香さんは、様々な海外体験を重ね、今、羽田空港国際線ターミナルでANAエアポートサービスのグランドスタッフとして働いています。1日の発着回数が国内線・国際線合わせて最大1200回に上る羽田空港は、2010年の国際線ターミナルオープン以降、海外へ飛び立つ日本人や日本を訪れる外国人が多く行き交う日本の玄関口。グランドスタッフとして働いた一年間の奮闘と、自らの海外体験を元に日々の業務に込める思いをうかがいました。

羽田空港出発ゲート

旅の始まりを支えるグランドスタッフ

空港に着き、チェックインのために並ぶ列に加わると、いよいよ海外へ飛びたつ旅の始まりを実感。飛び立つ前の最後の準備を支えるのがグランドスタッフの方々です。

「現在、私が行っているグランドスタッフの仕事は、カウンターでのチェックイン、出発ゲートでのお見送り、到着されたお客様をお出迎えして荷物が全部引き取られるのを見届けることが主な業務です。 特別な食事が必要な方や小さなお子様連れのご家族、車椅子の方などのために準備を行うのもグランドスタッフの仕事です。日によって、時間と担当業務が一人一人割り振られ、決められたスケジュールに沿って動きます。」

 

その中で金子さんが一番緊張し、かつ充実感を感じるのはゲートを担当している時だと言います。

「飛行機が定時に出発するためには出発時間の2分前にドアを閉めなければいけないのですが、その時間が迫ってもまだ搭乗していないお客様がいると、声を出して必死になって探し回ります。買い物をしていたり、乗継で時計を現地の時間に合わせていなかったりして、搭乗時間に現れない方もいらっしゃいます。ゲートの業務は3~4名のスタッフでチームを組んで一便を飛ばすのですが、ゲートに残るスタッフと探しに行くスタッフで分かれ、機内ではそのお客様が本当にまだ乗っていないのか確認するなど無線で連携しながら、チームとなって動いています。お客様を探して定時で飛行機をお見送りできた時は達成感があります。ゲートの業務は自分たちが飛行機を飛ばしているということを一番実感できるので、私は大好きです。」

ある時は、日本語の全くわからないアメリカ人の乗客がかなり迷って到着し、夏休みの大混雑するシーズンで長蛇の列に並んでいたため、搭乗できるかどうかぎりぎりのタイミングでカウンターに来たことがあったそうです。話を聞くと、その方の親戚が亡くなりハワイでの葬儀に出席するためにはその飛行機に乗らなければならい・・・ 短い時間で判断が迫られる中、上司と相談し、間に合わせるためには荷物は預けずに手荷物としてセキュリティチェックを通すことに。
「液体物など機内に持ち込めない物が入っていないか大急ぎで確認し、ゲートまで案内してなんとか乗っていただけました。私一人だけの力ではなかったのですが、乗っていただく方向で動くことを決めて、そのお客様を乗せて出発できたことは達成感がありました。」

後日、その方からお礼のメッセージが届いたそうです。

国際線と共に自分の成長があった

現在は日本語と英語、フランス人のお客様に対しては時にフランス語を使って仕事をしている金子さんですが、意外にも中学校では当初、英語は苦手科目でした。

「中学1年生で英語が始まった時に、あまりにも英語ができなくて英語教室に通いました。そこで学校の教科書の文章を丸暗記するために何度もCDを聞いて口に出して覚える練習をすると、半年ほどで成績がグンと上がりました。それから英語が好きになり、いつか海外に行ってみたい、海外の人と話してみたいという気持ちが中学生の時から漠然とありました。

初めてひとりで海外へ行ったのは、大学1年生の時、国際ボランティアに参加するためフランスへ行った時です。友だちとして出会うのではなく、一緒に仕事をすることで見えてくる人の姿があると思いますし、その時に他の国の人たちの考えに触れられたのが良かったと思います。」

その後も海外旅行やベトナムでのボランティアを経て、再びパリへ。今度は1年間の交換留学。

「フランスでは、自分が日本人だと言うと、『日本の何々を知っている』とか、『日本ってすごいね』と言ってくれて、それが嬉しかったのですが、どうしてそのように言ってくれるのか考えたら、自分の前の世代の人たちが海外で頑張った証だと思ったんです。それに気づいた時、自分も日本の良さを海外の人に伝える仕事がしたいと強く思いました。


フランス留学中の休日。学生寮の仲間たちと  

自分にとってターニングポイントとなった海外での体験には飛行機が欠かせないもので、国際線の飛行機に乗ることと自分の成長が重なります。ANAは “Inspiration of Japan” というキーフレーズを掲げており、日本の企業として『日本の良さを伝えながら世界に展開していこう』という考えを持っています。私自身もより多くの方に日本の良さを知っていただきたい、より多くの方に海外に行っていただきたいという思いがあり、それがこの会社で働きたいと思った理由です。」

 

空港は、ニュースで見ても普段の生活の中でなかなか実感しない現実を目の当たりにする場所です。金子さんが経験したこの一年でも「爆買い」のために増える中国系の旅行者の人々や韓流スターの来日時に押し寄せる出迎えの人々などを見てきました。また、2015年11月には留学生活を送ったパリで衝撃的な同時多発テロが起き、直後のパリ便は渡航者が激減するなど、世の中の動きを肌で感じたそうです。実際に空港の現場を前にしてどんなことに貢献したいと感じているのでしょうか。

「今の私の仕事は接客なので、日本に来た方々に『日本へ来てよかった』と思っていただけるような接客をすることが、『日本の良さを伝えたい』という目的に対して今私ができることだと思っています。自分で旅行した時も感じましたが、海外にいる時は不安になることもあるので、不安を取り除き、日本人は温かいと思っていただけるような接客を心掛けています。また日常生活の中でも、迷っていそうな外国人旅行者がいれば積極的に声をかけるようにしています。」

ワンポイントアドバイス
最近よくある事例から、チェックイン時の注意点について金子さんからひとつアドバイスをいただきました。
「スマートフォンの普及で予備バッテリーや充電用のモバイルバッテリーをお持ちの方が多くなっていますが、リチウムイオン電池は、受託荷物としてお預かりできませんので、スーツケースの中には入れないようにお気をつけください」

 

 

 

「伝えたいと思う心」が大切

日本から海外に渡航する時に言葉の不安を抱える人が多いと思います。金子さんは日々、様々な言語的、文化的に多様な背景を持った方々と接している立場から語学についてどのように考えているのでしょうか。

「国際線を担当している立場では、お客様に対して私自身の語学力によって利便性を損なうことがあってはいけないのですが、どんな場合でも、きれいに話すことよりも『伝えたいと思う心』を持つことが大切だと思っています。もしも自分が海外の空港にいて困っている時、つたない日本語でも一生懸命に説明してもらえたらとても安心しますし、きれいな文法じゃないからといって悪い接客だとは感じないと思います。最近増えている中国や韓国の方々の中には英語も日本語もわからないお客様もいらっしゃいますが、漢字を紙に書いて伝わって、笑顔を返していただければ、それもコミュニケーションとして成り立ったことになると思います。海外の空港は複雑で、言葉ができないと不安な面はあると思いますが、語学の心配で海外に行くのをためらって欲しくはないと思っています。」

コミュニケーションを取るうえで、もう一つ、金子さんが大切にしていることがあると言います。

「相手の方が何かを主張しているとき、まずは理解していることを示すことが大事だと思います。その人の意見を鵜呑みにするのでもなく、頭ごなしに拒むのでもなく、一度受け入れてから相手のことを理解して自分の意見を言えるようになるのが理想ですね。そうすることで周囲の人たちの目も変わり、『あの人なら聞いてくれるから話してみよう』と思ってもらえるのではないでしょうか。どれだけ相手の方について知識や情報を持っていても、接客をしたり、一緒に良い仕事をしたりするにはコミュニケーションが必要になると思います。

国際化がさらに進み、職場でも違う国から来た人たちと働くようになると、頭ごなしに『ここは日本だから』と言って日本の習慣を押し付けるのではなく、話を聞いて説明をするというコミュニケーションを取ることで、真の意味で『国際化』された環境になっていくのではないでしょうか。」

ANAグランドスタッフ 

もっと海外へ行きやすい社会にしたい

自分が初めてひとりで海外へ行った歳と同年代の今の大学生の人たちへ伝えたいことをうかがいました。

「初めてフランスに行った時は少なからずカルチャーショックを受けました。でも、楽しいだけではこれほど印象に残る経験にならなかったと思います。何かを言われて落ち込むことを恐れるのではなく、自信を持って飛び込んでいくと、色々なものが見えてきます。海外には自分とは違った人生観を持った人が多いので、そういった出会いを若い時にしておくと、その後の自分の人生にもより多様な選択肢が広がると思います。」

 

 

金子さん自身はこれからどのように仕事や国際化と向き合っていこうと考えているのでしょうか。

「自分もまだ成長しなければいけない点がありますが、海外へ行ってたくさんのものをもらったので、自分と同じようにこれから海外へ行く人たち、日本へ来て不安な人たちの不安を取り除く手助けができればと思います。ひとりで飛行機へ乗って海外へ行くということは、初めての人にとっては不安なことだと思うので、将来はそのハードルを下げ、もっと海外へ行きやすいサービスや機会を作れるようになりたいと思っています。」

ANAグランドスタッフ

Profile:金子友香/Yuka Kaneko


大学ではフランス文学を専攻し、国際交流サークルに所属。1年次にはフランスでの国際ボランティアプロジェクトに参加。2年次には国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部でのインターンを務めながら、再びベトナムでの国際ボランティアプロジェクトに参加。フランスでは古い教会の修復作業、ベトナムでは小学校に通えない子どもたちの施設で英語指導の活動を行う。大学3年次にはフランス・パリ第三大学へ1年間の交換留学。2015年ANAホールディングス株式会社入社、ANAグループのANAエアポートサービス株式会社でグランドスタッフとして羽田空港国際線ターミナル勤務。
(プロフィールはインタビュー当時)

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金子さんの学生時代の国際ボランティア体験についてはこちら


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